最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
バニーガール衣装事件
東京地裁令和3.10.29令和3(ワ)1852等損害賠償請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官 小田誉太郎
裁判官 斉藤 敦
*裁判所サイト公表 2022.1.13
*キーワード:コスチューム、コスプレ、著作物性、美術工芸品、形態模倣、商品等表示
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■事案
バニーガール衣装の著作物性などが争点となった事案
本訴原告(反訴被告):バニーガール衣装製造販売事業者
本訴被告(反訴原告):バニーガール衣装製造販売事業者
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■結論
本訴棄却、反訴一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、不正競争防止法2条1項1号、3号、20号、21号
1 不競法2条1項1号の不正競争行為該当性
2 不競法2条1項3号の不正競争行為該当性
3 不競法2条1項20号の不正競争行為該当性
4 著作権侵害の成否
5 本件各記事の掲載の不競法2条1項21号及び不法行為(名誉毀損及び名誉感情侵害)該当性
6 本訴提起の不法行為該当性
7 被告の損害額
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■事案の概要
『本件本訴は,バニーガール衣装を製造・販売する原告が,被告に対し,(1)被告の製造・販売する別紙被告商品目録記載のバニーガール衣装(以下,総称して「被告商品」という。)の形態は,原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されている原告製のバニーガール衣装の形態と同一であるから,その販売は不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号の不正競争行為に当たる,(2)被告商品は原告商品の形態を模倣しているので,その販売は同項3号の不正競争行為に当たる,(3)被告の行った表示は被告商品の原産地を誤認させるものであるので,同項20号の不正競争行為に当たる,(4)被告商品は原告商品に係る著作権(複製権又は翻案権)を侵害すると主張して,不競法3条1項,2項又は著作権法112条1項,2項に基づき,被告商品の販売の差止め及び廃棄を求めるとともに,不競法4条又は民法709条に基づき,損害賠償金193万円及びこれに対する訴えの変更申立書送達の日の翌日である令和3年4月8日から支払済5 みまで民法(平成29年法律第44号による改正前)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
『本件反訴は,被告が,原告に対し,(1)原告によるツイッター等における別紙投稿記事目録記載の各記事(以下,符号に従い「本件記事1」などといい,総称して「本件各記事」という。)の投稿は,被告商品が原告商品のコピー商品であることなどを内容とするものであり,不競法2条1項21号の虚偽の事実の告知又は流布に当たるとともに,被告の名誉を毀損し,被告の名誉感情を侵害するものである,(2)原告による本訴提起は濫訴であって不法行為に当たると主張して,不競法3条1項に基づき,被告商品がコピー商品である旨などを告知,流布することの差止めを求めるほか,不競法4条又は民法709条に基づき,損害賠償金の一部である160万円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である令和3年3月11日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求め,併せて,不競法14条に基づく信用回復措置として,別紙訂正広告目録記載の訂正広告の掲載を求める事案である。』
(2頁以下)
<経緯>
H25.08 原告商品販売
H27.06 被告商品原型制作
H29.09 被告商品販売
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■判決内容
<争点>
1 不競法2条1項1号の不正競争行為該当性
原告は、原告商品の形態が不競法2条1項1号(商品等主体誤認混同惹起行為)の「商品等表示」に当たると主張しましたが、裁判所は認めていません(21頁以下)。
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2 不競法2条1項3号の不正競争行為該当性
不競法2条1項3号(商品形態模倣行為)の不正競争行為該当性について、原告商品と被告商品の形態が原告商品と実質的に同一であるということはできないこと、また、原告商品の日本国内での販売開始日は平成25年8月25日で、被告商品の販売開始時点である平成29年9月時点では既に3年が経過していること(不競法19条1項5号イ)から、裁判所は不競法2条1項3号の成立を否定しています(22頁以下)。
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3 不競法2条1項20号の不正競争行為該当性
原告は、被告がそのブログに、東京タワーのイラストと「バニーガールの衣装を下町で真剣に作っています」との記載を掲載したことを根拠として、被告は被告商品の原産地が日本であると誤認させるような表示をしたと主張しました(24頁)。
この点について、裁判所は、原告が根拠とするブログの記載は被告商品の原産地ではなく、その製造元である被告の本拠地を示すものであること、また、東京タワーのイラストを掲載したことが原産地を示すということもできないと判断。また、被告は被告商品の販売サイトにおいて被告商品の原産国を中国と表示していることから、被告の行為が不競法2条1項20号の品質等誤認惹起行為に該当するということはできないと判断しています。
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4 著作権侵害の成否
原告は、原告商品が「美術工芸品」(著作権法2条2項)に当たると主張しました。
この点について、裁判所は、バニーガール衣装は接客などの際に着用する衣装であり、実用品にほかならず、また、原告が主張する原告商品の特徴は、その差違を外観上識別することは困難なものやありふれた工夫というべきものであるとして、美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているということはできないと判断。
原告商品は、著作権法2条1項1号の美術の著作物には該当しないと判断しています(24頁)。
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5 本件各記事の掲載の不競法2条1項21号及び不法行為(名誉毀損及び名誉感情侵害)該当性
原告がTwitterやウェブサイトに掲載した記事は、被告商品が原告商品の「コピー商品」や「パクリ」であることや被告が被告商品の原産地を誤認させる表示をしていることなどを摘示するものであるとして、本件各記事の掲載は、被告の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布するものであり、不競法2条1項21号の信用毀損行為に当たると裁判所は判断しています(24頁以下)。
また、被告は、原告による本件各記事の掲載は被告の名誉を毀損し、名誉感情を侵害するものであると主張しました。
この点について、裁判所は、本件各記事には被告個人の氏名は挙げられておらず、被告個人の社会的評価を低下させる記載もないとして、これらの記事が被告の名誉を毀損し又は名誉感情を侵害するものであるということはできないと判断しています(26頁)。
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6 本訴提起の不法行為該当性
被告は、原告による本訴提起が被告に対する不法行為を構成すると主張しましたが、裁判所は認めていません(26頁以下)。
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7 被告の損害額
原告による虚偽事実流布による信用毀損行為に基づく無形損害として50万円、弁護士費用相当額損害として5万円、合計55万円を損害額として認定しています(27頁以下)。
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■コメント
判決文PDFの末尾にバニーガール衣装の画像が掲載されているので、どのようなコスチュームであるのかが分かります(35頁以下)。
よくあるコスチュームかと思われまして、不正競争防止法での争点はともかく、著作物性を認めるのは困難なデザインかと考えられます。
バニーガール衣装事件
東京地裁令和3.10.29令和3(ワ)1852等損害賠償請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官 小田誉太郎
裁判官 斉藤 敦
*裁判所サイト公表 2022.1.13
*キーワード:コスチューム、コスプレ、著作物性、美術工芸品、形態模倣、商品等表示
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■事案
バニーガール衣装の著作物性などが争点となった事案
本訴原告(反訴被告):バニーガール衣装製造販売事業者
本訴被告(反訴原告):バニーガール衣装製造販売事業者
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■結論
本訴棄却、反訴一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、不正競争防止法2条1項1号、3号、20号、21号
1 不競法2条1項1号の不正競争行為該当性
2 不競法2条1項3号の不正競争行為該当性
3 不競法2条1項20号の不正競争行為該当性
4 著作権侵害の成否
5 本件各記事の掲載の不競法2条1項21号及び不法行為(名誉毀損及び名誉感情侵害)該当性
6 本訴提起の不法行為該当性
7 被告の損害額
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■事案の概要
『本件本訴は,バニーガール衣装を製造・販売する原告が,被告に対し,(1)被告の製造・販売する別紙被告商品目録記載のバニーガール衣装(以下,総称して「被告商品」という。)の形態は,原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されている原告製のバニーガール衣装の形態と同一であるから,その販売は不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号の不正競争行為に当たる,(2)被告商品は原告商品の形態を模倣しているので,その販売は同項3号の不正競争行為に当たる,(3)被告の行った表示は被告商品の原産地を誤認させるものであるので,同項20号の不正競争行為に当たる,(4)被告商品は原告商品に係る著作権(複製権又は翻案権)を侵害すると主張して,不競法3条1項,2項又は著作権法112条1項,2項に基づき,被告商品の販売の差止め及び廃棄を求めるとともに,不競法4条又は民法709条に基づき,損害賠償金193万円及びこれに対する訴えの変更申立書送達の日の翌日である令和3年4月8日から支払済5 みまで民法(平成29年法律第44号による改正前)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
『本件反訴は,被告が,原告に対し,(1)原告によるツイッター等における別紙投稿記事目録記載の各記事(以下,符号に従い「本件記事1」などといい,総称して「本件各記事」という。)の投稿は,被告商品が原告商品のコピー商品であることなどを内容とするものであり,不競法2条1項21号の虚偽の事実の告知又は流布に当たるとともに,被告の名誉を毀損し,被告の名誉感情を侵害するものである,(2)原告による本訴提起は濫訴であって不法行為に当たると主張して,不競法3条1項に基づき,被告商品がコピー商品である旨などを告知,流布することの差止めを求めるほか,不競法4条又は民法709条に基づき,損害賠償金の一部である160万円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である令和3年3月11日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求め,併せて,不競法14条に基づく信用回復措置として,別紙訂正広告目録記載の訂正広告の掲載を求める事案である。』
(2頁以下)
<経緯>
H25.08 原告商品販売
H27.06 被告商品原型制作
H29.09 被告商品販売
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■判決内容
<争点>
1 不競法2条1項1号の不正競争行為該当性
原告は、原告商品の形態が不競法2条1項1号(商品等主体誤認混同惹起行為)の「商品等表示」に当たると主張しましたが、裁判所は認めていません(21頁以下)。
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2 不競法2条1項3号の不正競争行為該当性
不競法2条1項3号(商品形態模倣行為)の不正競争行為該当性について、原告商品と被告商品の形態が原告商品と実質的に同一であるということはできないこと、また、原告商品の日本国内での販売開始日は平成25年8月25日で、被告商品の販売開始時点である平成29年9月時点では既に3年が経過していること(不競法19条1項5号イ)から、裁判所は不競法2条1項3号の成立を否定しています(22頁以下)。
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3 不競法2条1項20号の不正競争行為該当性
原告は、被告がそのブログに、東京タワーのイラストと「バニーガールの衣装を下町で真剣に作っています」との記載を掲載したことを根拠として、被告は被告商品の原産地が日本であると誤認させるような表示をしたと主張しました(24頁)。
この点について、裁判所は、原告が根拠とするブログの記載は被告商品の原産地ではなく、その製造元である被告の本拠地を示すものであること、また、東京タワーのイラストを掲載したことが原産地を示すということもできないと判断。また、被告は被告商品の販売サイトにおいて被告商品の原産国を中国と表示していることから、被告の行為が不競法2条1項20号の品質等誤認惹起行為に該当するということはできないと判断しています。
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4 著作権侵害の成否
原告は、原告商品が「美術工芸品」(著作権法2条2項)に当たると主張しました。
この点について、裁判所は、バニーガール衣装は接客などの際に着用する衣装であり、実用品にほかならず、また、原告が主張する原告商品の特徴は、その差違を外観上識別することは困難なものやありふれた工夫というべきものであるとして、美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているということはできないと判断。
原告商品は、著作権法2条1項1号の美術の著作物には該当しないと判断しています(24頁)。
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5 本件各記事の掲載の不競法2条1項21号及び不法行為(名誉毀損及び名誉感情侵害)該当性
原告がTwitterやウェブサイトに掲載した記事は、被告商品が原告商品の「コピー商品」や「パクリ」であることや被告が被告商品の原産地を誤認させる表示をしていることなどを摘示するものであるとして、本件各記事の掲載は、被告の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布するものであり、不競法2条1項21号の信用毀損行為に当たると裁判所は判断しています(24頁以下)。
また、被告は、原告による本件各記事の掲載は被告の名誉を毀損し、名誉感情を侵害するものであると主張しました。
この点について、裁判所は、本件各記事には被告個人の氏名は挙げられておらず、被告個人の社会的評価を低下させる記載もないとして、これらの記事が被告の名誉を毀損し又は名誉感情を侵害するものであるということはできないと判断しています(26頁)。
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6 本訴提起の不法行為該当性
被告は、原告による本訴提起が被告に対する不法行為を構成すると主張しましたが、裁判所は認めていません(26頁以下)。
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7 被告の損害額
原告による虚偽事実流布による信用毀損行為に基づく無形損害として50万円、弁護士費用相当額損害として5万円、合計55万円を損害額として認定しています(27頁以下)。
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■コメント
判決文PDFの末尾にバニーガール衣装の画像が掲載されているので、どのようなコスチュームであるのかが分かります(35頁以下)。
よくあるコスチュームかと思われまして、不正競争防止法での争点はともかく、著作物性を認めるのは困難なデザインかと考えられます。