最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
金魚電話ボックス事件(控訴審)
大阪高裁令和3.1.14令和1(ネ)1735著作権に基づく差止等請求控訴事件PDF
大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官 倉地康弘
裁判官 三井教匡
*裁判所サイト公表 2021.-.-
*キーワード:著作物性、現代アート、レディメイド
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■事案
電話ボックスを金魚水槽にした作品の著作物性が争点となった事案の控訴審
控訴人(1審原告) :美術作家
被控訴人(1審被告):商店街協同組合、地域振興団体代表者
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■結論
一部変更
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、27条、19条、20条
1 原告作品の著作物性
2 著作権、著作者人格権侵害の有無
3 損害論
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■事案の概要
『本件は,控訴人が,被控訴人らが制作して展示した原判決別紙被告作品目録記載の美術作品(以下「被告作品」という。)は,控訴人の著作物である同別紙原告作品目録記載の美術作品(以下「原告作品」という。)を複製したものであり,被控訴人らは控訴人の著作権(複製権)及び著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)を侵害したとして,(1) 被控訴人らに対し,著作権法112条1項に基づき,被告作品の制作の差止めを求め,(2) 被控訴人郡山柳町商店街協同組合(以下「被控訴組合」という。)に対し,同条2項に基づき,被告作品を構成する公衆電話ボックス様の造作水槽及び公衆電話機の廃棄を求め,(3) 被控訴人らに対し,不法行為に基づき,損害賠償金330万円及びこれに対する被告作品の制作,展示日である平成26年2月22日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めて訴えを提起した事案である。
原審は控訴人の請求をいずれも棄却した。
これに対し,控訴人が控訴し,当審において,著作権につき,仮に複製権侵害が成立しないとしても翻案権侵害が成立すると主張している。』
(2頁)
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■判決内容
<争点>
1 原告作品の著作物性
「原告作品のうち本物の公衆電話ボックスと異なる外観に着目すると,次のとおりである。
第1に,電話ボックスの多くの部分に水が満たされている。
第2に,電話ボックスの側面の4面とも,全面がアクリルガラスである。
第3に,その水中には赤色の金魚が泳いでおり,その数は,展示をするごとに変動するが,少なくて50匹,多くて150匹程度である。
第4に,公衆電話機の受話器が,受話器を掛けておくハンガー部から外されて水中に浮いた状態で固定され,その受話部から気泡が発生している。」
「第4の点は,人が使用していない公衆電話機の受話器はハンガー部に掛かっているものであり,それが水中に浮いた状態で固定されていること自体,非日常的な情景を表現しているといえるし,受話器の受話部から気泡が発生することも本来あり得ないことである。そして,受話器がハンガー部から外れ,水中に浮いた状態で,受話部から気泡が発生していることから,電話を掛け,電話先との間で,通話をしている状態がイメージされており,鑑賞者に強い印象を与える表現である。したがって,この表現には,控訴人の個性が発揮されているというべきである。」
(23頁以下)
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2 著作権、著作者人格権侵害の有無
「原告作品と被告作品の共通点は次のとおり(以下「共通点(1)」などという。)である。
(1) 公衆電話ボックス様の造作水槽(側面は4面とも全面がアクリルガラス)に水が入れられ(ただし,後記イ(6)を参照),水中に主に赤色の金魚が50匹から150匹程度,泳いでいる。
(2) 公衆電話機の受話器がハンガー部から外されて水中に浮いた状態で固定され,その受話部から気泡が発生している。」(26頁以下)
「共通点(1)及び(2)は,原告作品のうち表現上の創作性のある部分と重なる。」
「そうすると,被告作品は,原告作品のうち表現上の創作性のある部分の全てを有形的に再製しているといえる一方で,それ以外の部位や細部の具体的な表現において相違があるものの,被告作品が新たに思想又は感情を創作的に表現した作品であるとはいえない。」
依拠性、過失も肯定。
また、氏名表示権、同一性保持権の侵害も肯定。さらに廃棄請求を肯定(32頁以下)。
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3 損害論
(1)著作権侵害による損害 25万円
(2)著作者人格権侵害による損害 25万円
(3)弁護士費用相当額損害 5万円
小計 55万円
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■コメント
原審から一転、著作権侵害性や著作者人格権侵害性が認められ、損害賠償や廃棄請求が肯定されています。
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■過去のブログ記事
奈良地裁令和元年7月11日平成30(ワ)466著作権に基づく差止等請求事件
原審記事
金魚電話ボックス事件(控訴審)
大阪高裁令和3.1.14令和1(ネ)1735著作権に基づく差止等請求控訴事件PDF
大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官 倉地康弘
裁判官 三井教匡
*裁判所サイト公表 2021.-.-
*キーワード:著作物性、現代アート、レディメイド
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■事案
電話ボックスを金魚水槽にした作品の著作物性が争点となった事案の控訴審
控訴人(1審原告) :美術作家
被控訴人(1審被告):商店街協同組合、地域振興団体代表者
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■結論
一部変更
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、27条、19条、20条
1 原告作品の著作物性
2 著作権、著作者人格権侵害の有無
3 損害論
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■事案の概要
『本件は,控訴人が,被控訴人らが制作して展示した原判決別紙被告作品目録記載の美術作品(以下「被告作品」という。)は,控訴人の著作物である同別紙原告作品目録記載の美術作品(以下「原告作品」という。)を複製したものであり,被控訴人らは控訴人の著作権(複製権)及び著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)を侵害したとして,(1) 被控訴人らに対し,著作権法112条1項に基づき,被告作品の制作の差止めを求め,(2) 被控訴人郡山柳町商店街協同組合(以下「被控訴組合」という。)に対し,同条2項に基づき,被告作品を構成する公衆電話ボックス様の造作水槽及び公衆電話機の廃棄を求め,(3) 被控訴人らに対し,不法行為に基づき,損害賠償金330万円及びこれに対する被告作品の制作,展示日である平成26年2月22日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めて訴えを提起した事案である。
原審は控訴人の請求をいずれも棄却した。
これに対し,控訴人が控訴し,当審において,著作権につき,仮に複製権侵害が成立しないとしても翻案権侵害が成立すると主張している。』
(2頁)
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■判決内容
<争点>
1 原告作品の著作物性
「原告作品のうち本物の公衆電話ボックスと異なる外観に着目すると,次のとおりである。
第1に,電話ボックスの多くの部分に水が満たされている。
第2に,電話ボックスの側面の4面とも,全面がアクリルガラスである。
第3に,その水中には赤色の金魚が泳いでおり,その数は,展示をするごとに変動するが,少なくて50匹,多くて150匹程度である。
第4に,公衆電話機の受話器が,受話器を掛けておくハンガー部から外されて水中に浮いた状態で固定され,その受話部から気泡が発生している。」
「第4の点は,人が使用していない公衆電話機の受話器はハンガー部に掛かっているものであり,それが水中に浮いた状態で固定されていること自体,非日常的な情景を表現しているといえるし,受話器の受話部から気泡が発生することも本来あり得ないことである。そして,受話器がハンガー部から外れ,水中に浮いた状態で,受話部から気泡が発生していることから,電話を掛け,電話先との間で,通話をしている状態がイメージされており,鑑賞者に強い印象を与える表現である。したがって,この表現には,控訴人の個性が発揮されているというべきである。」
(23頁以下)
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2 著作権、著作者人格権侵害の有無
「原告作品と被告作品の共通点は次のとおり(以下「共通点(1)」などという。)である。
(1) 公衆電話ボックス様の造作水槽(側面は4面とも全面がアクリルガラス)に水が入れられ(ただし,後記イ(6)を参照),水中に主に赤色の金魚が50匹から150匹程度,泳いでいる。
(2) 公衆電話機の受話器がハンガー部から外されて水中に浮いた状態で固定され,その受話部から気泡が発生している。」(26頁以下)
「共通点(1)及び(2)は,原告作品のうち表現上の創作性のある部分と重なる。」
「そうすると,被告作品は,原告作品のうち表現上の創作性のある部分の全てを有形的に再製しているといえる一方で,それ以外の部位や細部の具体的な表現において相違があるものの,被告作品が新たに思想又は感情を創作的に表現した作品であるとはいえない。」
依拠性、過失も肯定。
また、氏名表示権、同一性保持権の侵害も肯定。さらに廃棄請求を肯定(32頁以下)。
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3 損害論
(1)著作権侵害による損害 25万円
(2)著作者人格権侵害による損害 25万円
(3)弁護士費用相当額損害 5万円
小計 55万円
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■コメント
原審から一転、著作権侵害性や著作者人格権侵害性が認められ、損害賠償や廃棄請求が肯定されています。
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■過去のブログ記事
奈良地裁令和元年7月11日平成30(ワ)466著作権に基づく差止等請求事件
原審記事