最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
段ボール製造業者向け生産総合管理システム開発契約事件
大阪地裁令和3.7.29平成31(ワ)3368等損害賠償請求事件PDF
別紙
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 杉浦正樹
裁判官 杉浦一輝
裁判官 布目真利子
*裁判所サイト公表 2021.8.13
*キーワード:ソフトウェア、開発契約、著作権の帰属、販売契約、ライセンス契約、利益相反行為
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■事案
段ボール製造業者向け生産総合管理システムの開発、利用を巡り著作権の帰属などが争点となった事案
本訴原告(反訴被告):ソフト開発会社
本訴被告(反訴原告):ソフト開発会社
本訴被告 :原告元代表者P1
--------------------
■結論
本訴認容、反訴棄却
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■争点
条文 会社法356条1項2号
1 本件ソフトウェアの著作権の帰属
2 本件販売契約による本件著作権の移転の成否
3 共同不法行為の成否
4 本件ライセンス料の支払いについて(反訴)
--------------------
■事案の概要
『本件本訴は,別紙物件目録記載のソフトウェア(以下「本件ソフトウェア」という。)の著作権(以下「本件著作権」という。)が原告に帰属しているにもかかわらず,当時原告代表者であった被告P1が,その任務に違反し,被告会社と共謀して被告会社にライセンス料名目で合計1490万8300円を支払い,原告に同額の損害を負わせたとして,原告が,被告らに対し,共同不法行為(民法719条1項,709条)に基づき,上記額の損害賠償請求及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告P1につき令和元年5月10日,被告会社につき同月22日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前の民法」という。)所定の年5%の割合による遅延損害金の連帯支払を求めるとともに,原告が,被告らに対し,原告が本件著作権を有することの確認を求める事案である。
本件反訴は,被告会社が,原告に対し,被告会社と原告との間の本件ソフトウェアに係るライセンス契約に基づき,未払ライセンス料合計596万4187円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日(令和元年10月10日)から支払済みまで商事法定利率年6%(平成29年法律第45号による改正前の商法514条)の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H04 UniCAISを住金プラントとP3が開発
H16.09 被告P1、P2、P3が本件ソフトウェアを開発開始
H17.06 原告会社を被告P1らが設立(被告P1、P2が代表取締役)
H19.12 被告会社を被告P1らが設立(被告P1が代表取締役)
H19.12 原告と被告会社間の販売契約書
H29.08 被告P1が原告代表取締役辞任
本件ソフトウェア:段ボール製造業者向け生産総合管理システム「SeePlan」
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■判決内容
<争点>
1 本件ソフトウェアの著作権の帰属
原告設立時における本件著作権の帰属について、裁判所は、開発の経緯を検討した上で、被告P1らは本件ソフトウェア開発における実際の作業分担に関わりなく、事業主体として後に設立予定の原告法人に本件著作権を帰属させる意思の下に、本件ソフトウェアの開発作業を行ったものと見るのが相当であると判断。
本件ソフトウェアは、その著作物としての成立時である平成17年5月頃の時点において、新規作成部分につき被告P1らの著作権が発生したものの、原告設立に伴って三者間の合意に基づいて原告にこれが譲渡されたと認定しています(25頁以下)。
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2 本件販売契約による本件著作権の移転の成否
(1)本件販売契約の成否等
裁判所は、本件販売契約書1について、被告会社及び原告との間でいずれも被告P1をそれぞれの代表者として本件販売契約が締結されたと認定しています(27頁以下)。
(2)利益相反取引該当性
裁判所は、本件販売契約は、本件著作権の原告から被告会社への譲渡及び原告の被告会社に対する本件ライセンス料支払義務をその内容とするものであるところ、被告P1が原告及び被告会社の代表者として双方を代表して行ったものであり、利益相反取引(会社法356条1項2号)に該当すると判断。
被告P1が原告の株主総会において重要な事実を開示し、その承認を受けたことを認めるに足りる的確な証拠はないとして、本件販売契約は無効であると認定しています。
(3)原告の株主全員による事後的な同意の有無
裁判所は、株主P2の事後的な同意があったとは認められないと判断しています。
結論として、本件著作権は原告の設立当初に原告が譲渡を受けたことで原告に帰属しており、その後も被告会社に移転したことはないと判断されています。
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3 共同不法行為の成否
被告P1が原告の代表取締役として行った原告から被告会社への本件支払(2)について、裁判所は、被告P1が原告及び被告会社の双方を代表して締結した本件販売契約に基づくものである以上、被告らの通謀により故意又は重大な過失に基づき行われたものといえると判断。
被告P1が原告の代表取締役としての忠実義務及び善管注意義務に反する行為となることから、原告は被告らに対して共同不法行為に基づいて、本件支払(2)の合計額相当額1490万8300円の損害賠償請求権を有すると判断しています(30頁以下)。
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4 本件ライセンス料の支払いについて(反訴)
本件反訴について、裁判所は、本件ライセンス料支払義務を定める本件販売契約が無効である以上、被告会社は原告に対して、これに基づく本件ライセンス料支払請求権を有しないと判断しています(31頁)。
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■コメント
ソフトウェアの開発関係者間での紛争で、開発の経緯を詳しく検討して著作権の帰属を認定した事案となります。
段ボール製造業者向け生産総合管理システム開発契約事件
大阪地裁令和3.7.29平成31(ワ)3368等損害賠償請求事件PDF
別紙
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 杉浦正樹
裁判官 杉浦一輝
裁判官 布目真利子
*裁判所サイト公表 2021.8.13
*キーワード:ソフトウェア、開発契約、著作権の帰属、販売契約、ライセンス契約、利益相反行為
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■事案
段ボール製造業者向け生産総合管理システムの開発、利用を巡り著作権の帰属などが争点となった事案
本訴原告(反訴被告):ソフト開発会社
本訴被告(反訴原告):ソフト開発会社
本訴被告 :原告元代表者P1
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■結論
本訴認容、反訴棄却
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■争点
条文 会社法356条1項2号
1 本件ソフトウェアの著作権の帰属
2 本件販売契約による本件著作権の移転の成否
3 共同不法行為の成否
4 本件ライセンス料の支払いについて(反訴)
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■事案の概要
『本件本訴は,別紙物件目録記載のソフトウェア(以下「本件ソフトウェア」という。)の著作権(以下「本件著作権」という。)が原告に帰属しているにもかかわらず,当時原告代表者であった被告P1が,その任務に違反し,被告会社と共謀して被告会社にライセンス料名目で合計1490万8300円を支払い,原告に同額の損害を負わせたとして,原告が,被告らに対し,共同不法行為(民法719条1項,709条)に基づき,上記額の損害賠償請求及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告P1につき令和元年5月10日,被告会社につき同月22日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前の民法」という。)所定の年5%の割合による遅延損害金の連帯支払を求めるとともに,原告が,被告らに対し,原告が本件著作権を有することの確認を求める事案である。
本件反訴は,被告会社が,原告に対し,被告会社と原告との間の本件ソフトウェアに係るライセンス契約に基づき,未払ライセンス料合計596万4187円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日(令和元年10月10日)から支払済みまで商事法定利率年6%(平成29年法律第45号による改正前の商法514条)の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H04 UniCAISを住金プラントとP3が開発
H16.09 被告P1、P2、P3が本件ソフトウェアを開発開始
H17.06 原告会社を被告P1らが設立(被告P1、P2が代表取締役)
H19.12 被告会社を被告P1らが設立(被告P1が代表取締役)
H19.12 原告と被告会社間の販売契約書
H29.08 被告P1が原告代表取締役辞任
本件ソフトウェア:段ボール製造業者向け生産総合管理システム「SeePlan」
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■判決内容
<争点>
1 本件ソフトウェアの著作権の帰属
原告設立時における本件著作権の帰属について、裁判所は、開発の経緯を検討した上で、被告P1らは本件ソフトウェア開発における実際の作業分担に関わりなく、事業主体として後に設立予定の原告法人に本件著作権を帰属させる意思の下に、本件ソフトウェアの開発作業を行ったものと見るのが相当であると判断。
本件ソフトウェアは、その著作物としての成立時である平成17年5月頃の時点において、新規作成部分につき被告P1らの著作権が発生したものの、原告設立に伴って三者間の合意に基づいて原告にこれが譲渡されたと認定しています(25頁以下)。
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2 本件販売契約による本件著作権の移転の成否
(1)本件販売契約の成否等
裁判所は、本件販売契約書1について、被告会社及び原告との間でいずれも被告P1をそれぞれの代表者として本件販売契約が締結されたと認定しています(27頁以下)。
(2)利益相反取引該当性
裁判所は、本件販売契約は、本件著作権の原告から被告会社への譲渡及び原告の被告会社に対する本件ライセンス料支払義務をその内容とするものであるところ、被告P1が原告及び被告会社の代表者として双方を代表して行ったものであり、利益相反取引(会社法356条1項2号)に該当すると判断。
被告P1が原告の株主総会において重要な事実を開示し、その承認を受けたことを認めるに足りる的確な証拠はないとして、本件販売契約は無効であると認定しています。
(3)原告の株主全員による事後的な同意の有無
裁判所は、株主P2の事後的な同意があったとは認められないと判断しています。
結論として、本件著作権は原告の設立当初に原告が譲渡を受けたことで原告に帰属しており、その後も被告会社に移転したことはないと判断されています。
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3 共同不法行為の成否
被告P1が原告の代表取締役として行った原告から被告会社への本件支払(2)について、裁判所は、被告P1が原告及び被告会社の双方を代表して締結した本件販売契約に基づくものである以上、被告らの通謀により故意又は重大な過失に基づき行われたものといえると判断。
被告P1が原告の代表取締役としての忠実義務及び善管注意義務に反する行為となることから、原告は被告らに対して共同不法行為に基づいて、本件支払(2)の合計額相当額1490万8300円の損害賠償請求権を有すると判断しています(30頁以下)。
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4 本件ライセンス料の支払いについて(反訴)
本件反訴について、裁判所は、本件ライセンス料支払義務を定める本件販売契約が無効である以上、被告会社は原告に対して、これに基づく本件ライセンス料支払請求権を有しないと判断しています(31頁)。
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■コメント
ソフトウェアの開発関係者間での紛争で、開発の経緯を詳しく検討して著作権の帰属を認定した事案となります。