最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

徳冨蘆花記念文学館展示物事件

知財高裁令和3.6.29令和3(ネ)10027使用差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 森 義之
裁判官    中島朋宏
裁判官    勝又来未子

原審 前橋地方裁判所平成31年(ワ)第215号

*裁判所サイト公表 2021.7.1
*キーワード:職務著作、著作者の推定

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■事案

文学館の展示物の著作者、著作権が市に帰属するかどうかが争点となった事案

控訴人(1審原告) :文学館元職員
被控訴人(1審被告):渋川市(文学館運営主体)

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法15条1項、14条

1 中間確認の訴えについて
2 本件各展示物の著作者について
3 不当利得返還請求について

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■事案の概要

『本件は,被控訴人の職員として本件文学館に勤務していた控訴人が,本件文学館に常設展示又は上映されている本件各展示物について,控訴人が著作権及び著作者人格権を有するところ,被控訴人が,控訴人の著作権及び著作者人格権を争い,控訴人に無断で展示,上映をして,控訴人の著作権及び著作者人格権を侵害していると主張して,被控訴人に対し,控訴人が本件各展示物の著作権及び著作者人格権を有することの確認を求めるとともに,本件各展示物の展示等の差止め並びに本件パネル,本件ケース内展示物及び上映装置の撤去・廃棄を求め,さらに,不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求の一部請求として200万円及びこれに対する最初の不法行為日又は利得日である平成元年11月1日(本件文学館の開館日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金又は法定利息の支払を求める事案である。
 これに対し,被控訴人は,本件各展示物に著作物性がない,著作物性が認められるとしても職務著作に当たるから著作権及び著作者人格権は被控訴人に帰属する,控訴人が著作者であるとしても控訴人の許諾があったなどと主張して争っている。』

『原審は,本件各展示物は,控訴人が,被控訴人の業務に従事する者としてその職務上作成した職務著作に当たり,その著作権は被控訴人に帰属すると判断し,本件各展示物について控訴人が著作権及び著作者人格権を有する著作物であることの確認を求める中間確認の訴えについては二重起訴に当たるとして却下し,その余の控訴人の請求を全部棄却したところ,控訴人が控訴を提起した。なお,控訴人は,原審では,不法行為又は不当利得に基づき,一部請求として2600万円及びこれに対する平成元年11月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金又は利息金を請求していたところ,200万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金又は利息金の支払を求める限度で控訴を提起した。また,控訴人は,当審において,同じく一部請求として200万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による利息金の支払を求め,後記2(控訴人の主張)(2)の不当利得返還請求を選択的に追加した。中間確認の訴えは,前記第1の2に含まれるものと解される。』
(2頁以下)

<経緯>

H01   徳冨蘆花記念館を改築、整備(伊香保町町制100年記念事業)
H01.03 原告が伊香保町に雇用
H01.11 文学館開館
H09   本件図録出版
H18.02 伊香保町と渋川市が合併
H18.02 渋川市徳冨蘆花記念文学館条例制定
H30.09 開館30周年記念特別企画展開催

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■判決内容

<争点>

1 中間確認の訴えについて

原審同様、控訴人の中間確認の訴えが不適法と判断されています(6頁)。

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2 本件各展示物の著作者について

控訴審も、本件各展示物は編集著作物に当たるが、職務著作(著作権法15条1項)として被控訴人がその著作者となると判断しています(7頁以下)。

控訴人は、本件図録の著作者が自分であることから、本件パネルについて控訴人が著作者と推定されると主張しましたが、控訴審は、本件図録と本件パネルは同一の著作物であるということはできないこと、また、著作の名義も異なるとして、控訴人の主張を認めていません。

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3 不当利得返還請求について

控訴人は、被控訴人が法律上の原因なく他人である控訴人の労務によって利益を受け、そのために控訴人に損失を及ぼした旨主張しましたが、控訴審は、控訴人は雇用契約に基づいて本件文学館において展示・上映するために本件各展示物を製作したのであり、被控訴人が本件各展示物を本件文学館において展示・上映していることについて法律上の原因があると判断。控訴人の主張を認めていません(10頁以下)。

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■コメント

原審の判断を読んでいないので、紛争の詳しい背景がわかりませんが、図録(平成9年刊行ですと、「蘆花の生涯 : 徳冨蘆花記念文学館図録」でしょうか)については別訴で職員のかたの著作者性が認められていたということで、図録の執筆、監修をされたかたは学芸員、研究者として、研究成果の著作者性、著作権のありように拘られたのかもしれません。
(追記)
なお、この点について、小笠原正仁先生は、大学での研究成果との違い、研究に基づく博物館資料への貢献度などを勘案したうえでの配慮の視点をツイートで指摘されておいでです(https://twitter.com/ogacci)。