最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

書籍デザイン出版契約事件

東京地裁令和3.5.27令和2(ワ)7469損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 田中孝一
裁判官    小口五大
裁判官    鈴木美智子

*裁判所サイト公表 2021.6.28
*キーワード:共同著作物性、出版契約、カバーデザイン、書籍デザイン、出版社

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■事案

書籍のデザインに関する出版契約を巡る事案

原告:出版社
被告:出版社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項2号、14条

1 本件書籍は原告とAの共同著作物か
2 原告によるAの著作権持分の取得の成否

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告が出版している被告書籍の別紙2「被告書籍カバーデザイン」記載のカバーデザイン(以下「被告カバーデザイン」という。)は,原告が出版する別紙3「本件書籍目録」記載の書籍(以下「本件書籍」という。)の共有著作権及び著作者人格権を侵害すると主張して,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,被告書籍の複製及び頒布の差止めを,同条2項に基づき,被告書籍の廃棄を求めるとともに,民法709条及び著作権法114条3項に基づき,損害賠償金126万9900円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(令和2年6月24日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』

<経緯>

H27.11 原告が本件書籍刊行
H27.12 原告とデザイナーAが出版契約
R01.06 被告がAに表紙デザイン制作を依頼
R01.09 被告が被告書籍刊行

本件書籍:100枚レターブック 西洋の美しい装飾
被告書籍:願いを叶える手帳2020

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■判決内容

<争点>

1 本件書籍は原告とAの共同著作物か

原告が原告書籍(本件カバーデザインを含む)の共同著作者といえるかについて、裁判所は、原告とAとの間の出版契約の内容や著作権者表示などから、原告の従業員等が本件書籍の制作にあたり、Aとともに共同著作者として認められる程度の創作的関与をしたことを根拠付ける具体的な事実の主張や立証がされていないとして、原告とAとの共同著作物性を否定しています。

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2 原告によるAの著作権持分の取得の成否

原告は、仮にAが本件書籍について単独で著作者となるとしても、原告はAから本件書籍の著作権の持分の譲渡を受けているとして、原告は本件書籍の共同著作権者であると主張しましたが、裁判所は原告の主張を認めていません。

結論として、原告は共同著作者として共有著作権及び著作者人格権を有するものではなく、原告の主張は理由がないと判断されています。

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■コメント

判決文の別紙には、書籍カバーデザインが掲載されていないので、正確にはわかりませんが、原被告双方の書籍をAmazonで見てみると、書影や内容の一部がわかります。原告書籍は、1枚ずつ切り離して使える便箋を収録したレターブックの体裁です。これに対して被告書籍は、メンタルコーチングの記述がある日記手帳風の体裁のものです。
紛争の原因は、デザイナーAが類似のデザインを他社に提供したから(事後対応も含めて)ということになるかと思いますが、そうはいっても、出版社とAとの契約関係として、どこまで第三者に出版社が権利行使できるかといえば、現実問題としては出版権設定契約をしたとしても、登録もしないでしょうし、難しいかもしれません。
出版社としてA(とそのデザイン)を囲い込むとなれば、それなりの契約や対応(商標なども含め)が必要だとは思われます。