最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

トレーディング補助ツールソフト無断配布事件

東京地裁令和2.12.17令和2(ワ)3594損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    佐伯良子
裁判官    棚井 啓

*裁判所サイト公表 2020.12.26
*キーワード:独占的利用許諾契約、サブライセンス、ソフトウェア、損害論

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■事案

FXなどの投資取引補助ツールであるソフトウェアを無断で複製、公衆送信した事案

原告:コンサルティング会社
被告:個人

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■結論

一部認容

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■争点

条文 著作権法21条、23条、民法709条

1 被告が本件各参加者に対して本件ソフトを配布し、原告の本件独占的利用権を侵害したか
2 被告の不法行為によって原告が被った損害及び額

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,原告は著作物であるソフトウェアについて独占的利用の許諾を受けていたところ,被告が上記ソフトウェアを無断で複製し,第三者に公衆送信したことにより,原告は上記独占的利用権を侵害され損害を被ったと主張して,不法行為による損害賠償請求権(民法709条)に基づき,384万8460円及びこれに対する不法行為より後の日である令和元年9月16日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)

本件ソフト
名称 トレーダーファムインジケーター
種別 裁量取引補助ツール

<経緯>

H31.04 原告が著作権者BANANAとの間で独占的利用許諾契約締結
R1.07  被告が原告コミュニティに入会。本件ソフトの交付を受ける
R1.08  被告が2名に本件ソフトをメールで送信。計7名が取得
R1.09  被告が原告コミュニティの会員資格喪失

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■判決内容

<争点>

1 被告が本件各参加者に対して本件ソフトを配布し、原告の本件独占的利用権を侵害したか

裁判所は、被告は問題があると認識しながら、本件ソフトを複製し、公衆送信することによって原告が本件ソフトを独占的に利用する地位にあることを通じて得る利益を侵害したと判断。
被告の不法行為(民法709条)の成立を認めています(6頁以下)。

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2 被告の不法行為によって原告が被った損害及び額

原告は、被告の不法行為により得べかりし利益である7人分の再利用許諾代金174万9300円(入会費用24万9900円×7名分)相当額の損害などを受けたと主張しました。
裁判所は、被告の本件各行為によって原告は少なくとも本件ソフトが入会特典である原告コミュニティに参加した者を1名失ったと認定。残りの6名分の損害は認めていません(7頁以下)。
結論として、入会費用相当額24万9900円及び弁護士費用相当額損害3万円の合計27万9900円が損害として認定されています。

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■コメント

投資サポートサービスの一環として、補助ツールであるソフトを会員に配布していましたが、サブライセンサーであるため仕方がないのかもしれませんが、損害論としては原告にとって厳しい判断になった印象です。