最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

自撮り写真「ホストラブ」無断投稿事件

東京地裁令和2.9.24令和2(ワ)7411発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    棚井 啓
裁判官    佐藤雅浩

*裁判所サイト公表 2020.9.29
*キーワード:無断投稿、写真の著作物性、発信者情報開示請求

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■事案

ネット掲示板サービス「ホストラブ」に無断で画像が掲載された事案

原告:個人
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 権利侵害の明白性
2 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無

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■事案の概要

『本件は,原告が,経由プロバイダである被告に対し,氏名不詳者が,インターネット上のウェブサイトに原告が著作権を有する別紙写真目録の写真(以下「本件写真」という。)を掲載し原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害したことが明らかであるなどと主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき,上記著作権の侵害に係る発信者情報である別紙発信者情報目録記載の各情報の開示を求める事案である。』
(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 権利侵害の明白性

本件写真は原告が左手にスマートフォンを持って自撮りしたものでしたが、裁判所は写真の著作物性(著作権法10条1項8号)を肯定。また、原告は本件写真の著作権者であり、本件投稿者は本件投稿によって本件写真についての原告の複製権及び公衆送信権を侵害したと判断。本件投稿による原告の著作権侵害の明白性を肯定しています(3頁以下)。

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2 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無

原告は本件投稿者に対して著作権(複製権、公衆送信権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求をする意思を有しており、原告が損害賠償請求権を行使するためには発信者を特定する別紙発信者情報目録記載の各情報について、開示を受ける必要があるとして、その開示を受けるべき正当な理由があると裁判所は認めています(4頁以下)。

結論として、原告の主張が認められています。

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■コメント

写真の具体的な内容が分かりませんが、YDCの「ホストラブ」掲示板サービスだとしますと、仮に原告がホストやホステスだとしますと、その営業用自撮り写真だとすれば、その画像のだいたいのイメージは思い浮かぶところです。
スマホによる自撮り写真の著作物性については、最近ですと、自撮り素足写真事件(東京地裁平成31.2.28平成30(ワ)19731発信者情報開示請求事件)がありますが、発信者情報開示請求事件においてスマホによるスナップショットの類いの、さほど創作性が高くないと思われる写真の著作物性の判断が集積されていく印象です。

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■過去のブログ記事

自撮り素足写真事件 記事

「ホストラブ」発信者情報開示請求事件(対NTTぷらら)
東京地裁平成29.6.2平成29(ワ)9325信者情報開示請求事件 記事

スナップ動画無断投稿事件
東京地裁令和2.9.24令和1(ワ)31972発信者情報開示請求事件 記事