最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

手形交換システム無断譲渡事件

東京地裁令和2.3.24平成31(ワ)10821コンピュータプログラムの著作権にかかる損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    佐藤雅浩
裁判官    古川善敬

*裁判所サイト公表 2020.4.7
*キーワード:プログラム、パワハラ、セクハラ、安全配慮義務違反

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■事案

プログラムを原告に無断で複製して第三者に売却したとして著作権侵害性などが争点となった事案

原告:元従業員
被告:IT企業

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 民法709条、415条

1 原告はプログラムの著作物である本件プログラムを作成したか
2 安全配慮義務違反の有無

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■事案の概要

『本件は,別紙プログラム目録記載のコンピュータプログラム(以下「本件プログラム」という。)を作成してその著作権を有すると主張する原告が,かつての就労先であった中央情報システム株式会社(以下「中央情報システム」という。)を令和元年8月1日に吸収合併した被告に対し,(1)中央情報システムが本件プログラムを原告に無断で複製して第三者に売却した行為が原告の著作権(複製権,頒布権)を侵害する不法行為に該当すると主張して,民法709条に基づき,損害賠償金1800万円の支払を求めるとともに,本件プログラムの著作権が原告に帰属することについての確認を求めるほか,(2)被告が,原告に対するパワーハラスメント(以下「パワハラ」という。)やセクシャルハラスメント(以下「セクハラ」という。)に対して適切な措置を講じることなくこれを放置したことは安全配慮義務違反に違反するなどして違法であり,それにより原告は統合失調症に罹患して入院治療や通院治療を余儀なくされたと主張して,民法415条又は709条に基づき,損害賠償金1850万円(慰謝料1800万円及び医療費・交通費50万円)の支払を求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H26.02 原告が中央情報システムで就労
R01.08 被告が中央情報システムを吸収合併

本件プログラム:コンピュータプログラム「Visual Basic」

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■判決内容

<争点>

1 原告はプログラムの著作物である本件プログラムを作成したか

原告は、原告自身が職務の空き時間にプログラム著作物である本件プログラムを作成したとして、被告が本件プログラムを複製して訴外日本ユニシスに売却した行為が著作権侵害にあたると主張しました。
この点について、裁判所は、原告は本件プログラムを創作するに至ったアイディアや本件プログラムの機能について主張するものの、それらについてのプログラム著作物としての具体的な表現(ソースコード等)の主張がなく、具体的な表現としてのプログラムを認めるに足りる的確な証拠がないと判断。
また、被告が本件プログラムを複製して第三者に売却したことを認めるに足りる的確な証拠もないとして、原告の著作権侵害性に関する主張を認めていません(6頁以下)。

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2 安全配慮義務違反の有無

原告は、原告に対するパワハラ行為やセクハラ行為があったとして、被告には原告に対する安全配慮義務違反があったと主張しましたが、裁判所は認めていません(7頁以下)。

結論として、原告の主張はいずれも認められていません。

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■コメント

原告側の立証が充分に尽くされておらず棄却の結果となっています。
原告のプログラムは「音楽プログラム」の名称が付されていたようですが、手形交換システムにも利用することができる汎用性の高いもの、ということで、いったいどういうソフトウェアだったのか興味深いところではあります。