最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

店舗デザイン設計監理業務委託契約事件(控訴審)

知財高裁令和1.10.23令和1(ネ)10045標章使用差止反訴請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    高橋 彩
裁判官    菅 洋輝

*裁判所サイト公表 2019.10.29
*キーワード:店舗デザイン設計監理業務、ロゴ、ピクトグラム、包括的使用許諾、複製、翻案

   --------------------

■事案

店舗デザイン設計監理業務に関して制作したロゴやピクトグラムの使用料の取扱いが争点となった事案の控訴審

控訴人 (原審反訴原告):デザイン事務所
被控訴人(原審反訴被告):古物販売会社

   --------------------

■結論

控訴棄却

   --------------------

■争点

条文 著作権法21条、27条、商標法29条

1 被控訴人控訴人間において、被控訴人が控訴人に対する店舗デザイン設計監理業務の委託を止めた場合には控訴人の被控訴人に対する反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムの無償使用許諾が終了し、被控訴人が控訴人に上記各標章や各ピクトグラムの制作料及び使用料を支払うという合意があったか
2 控訴人被控訴人間において、控訴人が作成したロゴ及びピクトグラムの制作料及び使用料等は「店舗デザイン設計一式」などの名目の料金に含まれており、その支払いがされた後は被控訴人が当該ロゴ及びピクトグラムを使用し続けることを認める旨の合意(包括的使用許諾)があったか
3 控訴人は被控訴人との間における反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムについての使用許諾契約を被控訴人の債務不履行を理由として解除することができるか
4 反訴被告標章の作成、使用等が反訴原告標章の著作権(複製権又は翻案権)を侵害するか

   --------------------

■事案の概要

『本件は,控訴人(原審反訴原告)が,原判決別紙反訴原告標章目録,同反訴原告関連標章目録及び同反訴原告関連標章追加目録記載の各標章(ただし,反訴原告標章目録0記載の標章を除く。以下,本項において同じ。)並びに原判決別紙反訴原告ピクトグラム目録及び同反訴原告ピクトグラム追加目録記載の各ピクトグラムの著作権者であると主張して,控訴人が作成した上記各標章及び各ピクトグラム並びにそれらに類似等する被控訴人(原審反訴被告)が作成等した原判決別紙反訴被告標章目録記載の各標章(ただし,原判決別紙反訴被告標章目録0記載の標章を除く。以下,本項において同じ。)を使用する被控訴人に対し,(1)控訴人及び被控訴人間の合意,(2)著作権法112条又は商標法29条に基づき,原判決別紙反訴原告標章目録,同反訴原告関連標章目録,同反訴原告関連標章追加目録及び同反訴被告標章目録記載の各標章並びに同反訴原告ピクトグラム目録,同反訴原告ピクトグラム追加目録記載の各ピクトグラムについて,展示その他の使用行為の差止め及び店舗における表示の抹消等を求める事案である。』

『原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したところ,控訴人がこれを不服として控訴した。なお,控訴人は,当審において,原判決別紙反訴被告ピクトグラム追加目録記載の各ピクトグラムについての差止め及び表示の抹消等を求める請求(原判決「事実及び理由」の第1の4に係る請求)を取り下げ,被控訴人はこれに同意した。』
(2頁以下)

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 被控訴人控訴人間において、被控訴人が控訴人に対する店舗デザイン設計監理業務の委託を止めた場合には控訴人の被控訴人に対する反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムの無償使用許諾が終了し、被控訴人が控訴人に上記各標章や各ピクトグラムの制作料及び使用料を支払うという合意があったか

控訴人が主張する反訴原告主張合意について、控訴審は、これを記載した契約書等の書面が作成されていないことや控訴人が主張する平成14年頃の反訴原告主張合意の成立にかかる事実経過についても、これを裏付ける客観的な証拠は見当たらないなどとして、控訴人が主張する反訴原告主張合意の成立を認めていません(12頁以下)。
結論として、争点1の合意の成立が否定されています。

   --------------------

2 控訴人被控訴人間において、控訴人が作成したロゴ及びピクトグラムの制作料及び使用料等は「店舗デザイン設計一式」などの名目の料金に含まれており、その支払いがされた後は被控訴人が当該ロゴ及びピクトグラムを使用し続けることを認める旨の合意(包括的使用許諾)があったか

控訴審は、控訴人と被控訴人の間には控訴人が作成・納品した反訴原告標章であるロゴや反訴原告ピクトグラムについては、店舗デザイン設計料とは別に制作料や使用料として支払うことなく、当該ロゴやピクトグラムを使用し続けることができる合意が黙示的に成立したものと認められると判断。

結論として、被控訴人は控訴人が作成した反訴原告標章であるロゴ及び反訴原告ピクトグラムについて、控訴人との取引が終了した平成29年5月31日以降も使用し続けることができると判断されています(18頁以下)。

   --------------------

3 控訴人は被控訴人との間における反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムについての使用許諾契約を被控訴人の債務不履行を理由として解除することができるか

債務不履行の前提となる被控訴人の義務を裏付ける証拠はなく、控訴人主張の債務の存在自体、認めることができないと控訴審は判断。控訴人の主張は認められていません(19頁)。

以上の点から、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラム並びに反訴被告標章3及び4について、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムの著作物性に関して判断するまでもなく控訴人の著作権法112条に基づく差止め及び抹消等を求める請求には理由がないと判断されています。
また、商標法29条は著作権法に基づく権利行使が可能であることを前提とする規定であるとして、同様に同条に基づく控訴人の請求には理由がないと判断されています。

   --------------------

4 反訴被告標章の作成、使用等が反訴原告標章の著作権(複製権又は翻案権)を侵害するか

非侵害との原審の判断を維持しています(19頁以下)。

   --------------------

■コメント

店舗デザイン設計監理業務契約の内容が争点となった事案の控訴審となります。
店舗デザイン設計監理業務契約として、店舗デザイン設計(監理)料とロゴやピクトグラムのデザイン制作料をどう位置づけるか、継続的な監理取引を期待する受注者側と機動的な対応をしたい発注側の思惑が交錯する場面での紛争です。

   --------------------

■過去のブログ記事

東京地裁令和1.5.21平成29(ワ)37350標章使用差止請求反訴事件
原審記事