最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

徳島有線放送使用料事件(控訴審)

知財高裁令和1.10.23平成31(ネ)10018損害賠償請求本訴、使用料規程無効確認請求反訴控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    上田卓哉
裁判官    山門 優

*裁判所サイト公表 2019.10.29
*キーワード:有線放送、著作隣接権、使用料規程、損害額

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■事案

有線テレビジョン放送事業者に対して有線放送権使用料の支払いを求めた事案の控訴審

控訴人 (1審本訴被告):有線テレビジョン放送事業者
被控訴人(1審本訴原告):テレビ番組著作権等管理事業者

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■結論

原判決一部変更、反訴却下

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■争点

条文 著作権法99条1項

1 請求及び請求原因の特定の十分性
2 本件信託契約の適法性又は有効性
3 本件有線放送権の使用許諾の有無
4 権利の濫用、信義則違反又は公序良俗違反等の有無
5 損害額
6 確認の利益の有無(反訴)

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■事案の概要

『本訴は,著作権等管理事業法に基づき登録を受けた著作権等管理事業者であり,放送法で定めるテレビジョン放送による地上基幹放送を行う放送事業者から信託により著作権及び著作隣接権の有線放送権等の管理委託を受けた被控訴人が,有線テレビジョン放送事業を行っている控訴人に対し,控訴人は被控訴人の許諾を受けることなく平成26年4月1日以降継続して上記放送事業者の地上テレビジョン放送を受信して有線放送し,被控訴人の著作権及び著作隣接権の有線放送権を侵害したと主張して,有線放送権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として,民法709条,著作権法114条3項及び4項により,3億5913万0024円(被控訴人が平成25年9月4日に文化庁長官に届け出た使用料規程(甲5。本件使用料規程)に基づく使用料相当損害金3億2648万1840円及び弁護士費用3264万8184円の合計額)及びうち1億7812万6438円(平成26年4月1日から平成28年3月31日までの分)に対する平成28年9月10日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで,うち1億8100万3586円(平成28年4月1日から平成30年3月31日までの分)に対する平成30年4月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 反訴は,控訴人が,本件使用料規程第3条⑴及び⑵がいずれも無効であることの確認を求める事案である。』

『原判決は,被控訴人の請求のうち,1億7956万5012円及びうち8906万3219円に対する平成28年9月10日から支払済みまで,うち9050万1793円に対する平成30年4月1日から支払済みまで,それぞれ年5分の割合による金員の支払を求める限度で認容し,その余の被控訴人の請求を棄却し,控訴人の反訴請求を却下した。
 控訴人は,原判決を不服として,本件控訴を提起した。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 請求及び請求原因の特定の十分性
2 本件信託契約の適法性又は有効性
3 本件有線放送権の使用許諾の有無
4 権利の濫用、信義則違反又は公序良俗違反等の有無
5 損害額
6 確認の利益の有無(反訴)

控訴審は、結論として各争点について原審の判断を維持し、ただ、争点5の損害額については4722万1238円と減額して認定しています。

「本件での利用に対し受けるべき金銭の額は,被控訴人とケーブルテレビ事業者との間における再放送使用料を現実に規律していると認められる本件基本合意及び本件使用料一覧(2者契約)をベースとし,そこに定められた額を約1.5倍した額である,区域内再放送につき1世帯1ch当たり年額36円及び区域外再放送につき1世帯1ch当たり年額180円とし,平成26年度についてはその半額を下らないものと認めるのが相当である。」(32頁)

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■コメント

徳島県板野郡北島町、松茂町、上板町において有線テレビジョン放送事業を運営している事業者との利用許諾契約がまとまらなかった事案の控訴審となります。
原審での損害額は1億7千万余でしたが、控訴審では、4千万余となっています。

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■過去のブログ記事

東京地裁平成31.2.1平成28(ワ)28925等損害賠償請求事件(本訴)、
使用料規程無効確認請求事件(反訴)
原審記事