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2019年07月19日

「BAO BAO ISSEY MIYAKE」ブランド鞄形態模倣事件−著作権 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「BAO BAO ISSEY MIYAKE」ブランド鞄形態模倣事件

東京地裁令和1.6.18平成29(ワ)31572不正競争行為差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    安岡美香子
裁判官    古川善敬

*裁判所サイト公表 2019.7.16
*キーワード:バッグ、商品等表示、美術の著作物、応用美術論、一般不法行為論

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■事案

バッグなどのデザインの著作物性が争点となった事案

原告:デザイン事務所、ファッションブランド会社
被告:装飾雑貨製造販売会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、同2項、10条1項4号、不正競争防止法2条1項1号、3条、4条、5条

1 原告商品の形態は商品等表示に該当するか
2 原告商品の形態は周知ないし著名か
3 被告商品の形態は原告商品の形態と類似して混同のおそれがあるか
4 原告商品1ないし6に著作物性が認められるか
5 本件ブランドに係る価値の毀損による損害賠償請求権の存否
6 損害論

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■事案の概要

『本件は,原告らが,三角形のピースを敷き詰めるように配置することなどからなる鞄の形態は,原告イッセイミヤケの著名又は周知の商品等表示であり,被告による上記形態と同一又は類似の商品の販売は不正競争防止法2条1項1号又は2号所定の不正競争行為に該当するとともに,同形態には著作物性が認められるから,被告による上記販売行為は原告らの著作権(複製権又は翻案権)を侵害するなどと主張して,被告に対し,(1)原告イッセイミヤケが,不正競争防止法3条1項,2項又は著作権法112条1項,2項に基づき,原告デザイン事務所が著作権法112条1項,2項に基づき,それぞれ上記商品の製造・販売等の差止め及び商品の廃棄を,(2)原告イッセイミヤケが,不正競争防止法4条,5条1項又は民法709条,著作権法114条1項に基づき損害の一部である1億1000万円及びこれに対する不法行為後の日である平成29年10月4日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,(3)原告デザイン事務所が,主位的に不正競争防止法4条又は民法709条(著作権侵害)に基づき,予備的に民法709条(一般不法行為)に基づき損害の一部である7199万5000円及びこれに対する上記(2)と同一の遅延損害金の支払を,(4)原告らが不正競争防止法14条又は著作権法115条に基づき謝罪広告の掲載を,それぞれ求める事案である。』
(2頁以下)

<経緯>

H22.09 原告イッセイミヤケが「BAO BAO ISSEY MIYAKE」ブランド(本件ブランド)展開
H28.09 被告が被告商品を販売

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■判決内容

<争点>

1 原告商品の形態は商品等表示に該当するか

裁判所は、原告商品の形態が商品等表示(不正競争防止法2条1項1号)に該当するかどうかについて、特別顕著性と周知性を検討(29頁以下)。
結論として、原告商品の本件形態1は、特別顕著性と周知性を具備し、商品等表示に該当すると判断しています。

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2 原告商品の形態は周知ないし著名か

裁判所は、原告商品の本件形態1は、遅くとも平成27年の時点で原告イッセイミヤケの出所を示すものとして全国の需要者に広く認識されていたと認めることができると判断しています(40頁)。

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3 被告商品の形態は原告商品の形態と類似して混同のおそれがあるか

8点の被告商品の形態が原告商品の形態と類似して混同のおそれがあるかについて、裁判所は、原告商品の形態と被告商品の形態は全体として類似すると判断。また、被告商品の形態は原告商品と出所の混同を生じさせると認定しています(40頁以下)。

結論として、被告による被告商品の販売行為は、不正競争法2条1項1号の不正競争行為に該当すると裁判所は判断しています。

そして、被告に対して同法3条1項に基づいて本件形態1を備えた被告商品の各形態のトートバッグ、ショルダーバッグ、リュックサック等の鞄及び袋物並びに携帯用化粧道具入れの譲渡、引き渡し、譲渡又は引き渡しのために展示し、輸入の差止め請求をすることができ、同条2項に基づいて侵害行為を組成した被告商品の廃棄請求が認められています。

また、被告には過失があることから、被告は原告イッセイミヤケに対して同法4条に基づいて侵害行為によって原告イッセイミヤケが受けた損害を賠償する責任を負うことが認められています。

なお、信用回復措置としての謝罪文の掲載の必要性は認められていません。

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4 原告商品1ないし6に著作物性が認められるか

原告商品1ないし6は、ショルダーバッグ、携帯用化粧道具入れ、リュックサック及びトートバッグであり、いずれも物品を持ち運ぶという実用に供される目的で同一の製品が多数製作されたものでしたが、原告らは、原告商品1ないし6の個々の商品のデザインは創作性の程度が高いものであるとして著作物性が認められ、被告商品は原告商品1ないし6を複製ないし翻案したものであるとして、原告らの著作権(複製権又は翻案権)を侵害する旨主張しました(47頁以下)。
裁判所は、この点について応用美術論に言及した上で、原告商品の特徴は著作物性を判断するに当たっては実用目的で使用するためのものといえる特徴の範囲内というべきものであり、原告商品において実用目的で使用するための特徴から離れて、その特徴とは別に美的鑑賞の対象となり得る美的構成を備えた部分を把握することはできないとするのが相当であると判断。
結論として、原告商品1ないし6に著作物性は認められていません。

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5 本件ブランドに係る価値の毀損による損害賠償請求権の存否

原告デザイン事務所は、被告の被告商品販売に係る不正競争行為によって原告デザイン事務所が本件商標を有する本件ブランドの持つ社会的信用やブランドイメージが毀損されたと主張して被告に対して不正競争防止法4条に基づいて損害賠償を請求しましたが、裁判所は認めていません(49頁以下)。
また、原告デザイン事務所は、被告が被告商品の販売により本件ブランドの価値を毀損する行為は一般不法行為に該当すると主張して民法709条に基づく損害賠償を請求しましたが、本件ブランドの価値の棄損により原告デザイン事務所に対する法的利益が棄損されたとは認められないとして、この点についても裁判所は認めていません。

なお、原告デザイン事務所の請求はいずれも棄却されています。

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6 損害論

(1)不正競争防止法5条1項に基づく損害
6506万8000円

(2)弁護士費用相当額損害
 600万円

合計 7106万8000円(50頁以下)。

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■コメント

商標権侵害は認められないものの、バッグなどの形態が類似しており、消費者に誤解を生じさせる商品の販売にあたるとして、不正競争行為性が肯定された事案です。
バッグなどのデザインについて応用美術論として著作権による保護の可能性も有り得ますが、本事案ではデザインの著作物性が認められず、著作権による保護は否定されています。

被告商品については、判決文に画像が掲載されていますが、原告商品はニュース記事掲載の画像からどのようなものであったかが窺うことができます。
画像

(判決文より 被告商品1)

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■参考記事

「バオ バオ」が模倣品裁判に勝訴 損害賠償額は7000万円以上 | WWD JAPAN.com(2019/06/20)

対バルコス社事案
イッセイ ミヤケが「バオ バオ」に類似したバッグの販売等を差し止める仮処分を申し立て(2019/06/14)
written by ootsukahoumu at 01:05│知財判決速報2019