最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

任天堂マリカー事件(控訴審 中間判決)

知財高裁令和1.5.30平成30(ネ)10081等不正競争行為差止等請求控訴事件等PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 森 義之
裁判官    佐野 信
裁判官    熊谷大輔

*裁判所サイト公表 2019.6.17
*キーワード:マリオ、キャラクター、ドメイン、不正競争行為、著名性、著名表示冒用行為、権利の濫用

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■事案

公道カート営業で「マリオカート」標章の使用やコスチューム提供などの不正競争行為性が争点となった事案の控訴審の中間判決

控訴人・被控訴人・反訴被告(1審原告):任天堂
控訴人・被控訴人・反訴原告(1審被告):自動車レンタル会社
被控訴人(1審被告):1審被告会社代表取締役

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■結論

本訴請求認容、反訴請求却下

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項2号、13号、5条

1 STREET KART店舗において本件レンタル事業が実施され被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームの使用がされているか
2 富士河口湖店及び六本木店において現在被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームが使用されているか
3 一審被告会社が平成27年6月4日の設立時から現在まで自ら又は関係団体と共同して本件各店舗において本件レンタル事業を実施し、自ら又は関係団体と共同して被告標章第1の使用行為、本件制作行為、本件宣伝行為、本件各ドメイン名の使用行為並びに本件貸与行為を行ったのか
4 被告標章第1の営業上の使用行為及び商号としての使用行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか
5 登録商標の抗弁の成否
6 本件宣伝行為及び本件貸与行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか
7 本件各ドメイン名の使用行為が不競法2条1項13号の不正競争行為に該当するか
8 一審被告Yに対する損害賠償請求の可否
9 一審原告の損害額
10 反訴請求の可否

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■事案の概要

『本件は,一審原告が,一審被告会社による(1)一審原告の周知又は著名な商品等表示である原告文字表示(原告文字表示マリオカート及び原告文字表示マリカー)と類似する被告標章第1の営業上の使用行為及び商号としての使用行為が,不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に,(2)一審原告が著作権を有する原告表現物と類似する部分を含む本件各写真及び本件各動画を作成してインターネット上のウェブサイトへアップロードする本件掲載行為が,一審原告の著作権(複製権又は翻案権,自動公衆送信権及び送信可能化権)侵害に,(3)一審原告の周知又は著名な商品等表示である原告表現物又は原告立体像と類似する商品等表示である被告標章第2を使用する行為である本件宣伝行為(本件掲載行為,従業員のコスチューム着用行為及び店舗における人形の設置行為からなる行為)が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に,(4)一審原告の特定商品等表示である原告文字表示と類似する本件各ドメイン名の使用が,不競法2条1項13号の不正競争行為に,(5)原告表現物の複製物又は翻案物である本件各コスチュームを利用者に貸与する本件貸与行為が,一審原告の著作権(貸与権)侵害に,それぞれ該当すると主張し,一審被告らに対して以下の各請求をした事案である。(以下略)』

『原判決は,要旨,以下のアーキのとおり判断し,前記(1)の各請求について,被告標章第1の使用差止め及び同抹消(外国語のみで表記されたウェブサイト及びチラシについてのものを除く。),被告標章第2の使用差止め,本件各動画のデータ廃棄,本件各ドメイン名の使用差止め(外国語のみで記載されたウェブサイトのために使用する場合を除く。)並びに一審被告会社に対する損害金1000万円及びこれに対する不正競争行為の最終日である平成30年3月31日から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余の請求をいずれも棄却した。
(以下略)』

『一審原告は,原判決のうち,(1)外国語のみで表記されたウェブサイト及びチラシにおける被告標章第1の使用の差止請求並びに外国語のみで表記されたウェブサイト及びチラシからの被告標章第1の抹消請求を棄却した部分,(2)本件各ドメイン名を外国語のみで記載されたウェブサイトのために使用する行為の差止請求及び本件ドメイン名2の登録抹消請求を棄却した部分,(3)一審被告Yに対する損害賠償請求を棄却した部分を不服として控訴を提起するとともに,損害賠償請求の金額を1000万円から5000万円に増額し,併せて遅延損害金の起算日を平成30年3月31日に繰り下げた。』

『他方,一審被告会社は,一審被告会社の敗訴部分を不服として控訴を提起するとともに,反訴を提起し,一審被告会社が別紙コスチューム目録記載のコスチュームを着用した人物の写真又は映像を公衆送信する行為について,一審原告が,別紙反訴被告表現物目録1ー4記載の表現物に関する複製権及び公衆送信権に基づき,これを差し止める権利を有しないことの確認を求めたが,一審原告は,同反訴の提起については同意しない旨述べた。』

『原判決のうち,本件写真1の作成・アップロードが不正競争行為又は著作権(複製権,翻案権,自動公衆送信権,送信可能化権)侵害に該当しないとした部分,カート車両以外の自動車,自転車及び軽車両からの被告標章第1の抹消請求を棄却した部分,一審被告会社の商号登記の抹消登記手続請求を棄却した部分,本件各写真及び本件各動画の削除並びに本件各写真のデータの廃棄請求を棄却した部分,本件ドメイン名4の登録抹消請求を棄却した部分並びに原告表現物の複製又は翻案及び複製物又は翻案物の自動公衆送信,送信可能化の差止請求を棄却した部分は,当審における審理判断の対象となっていない。』
(3頁以下)

〈原審目録より〉
被告標章目録第1
1 マリカー
2 MariCar
3 MARICAR
4 maricar

被告標章目録第2
「マリオ」「ルイージ」「ヨッシー」「クッパ」のコスチューム等

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■判決内容

<争点>

1 STREET KART店舗において本件レンタル事業が実施され被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームの使用がされているか

控訴審は、被告標章第1の2乃至4のいずれかがSTREET KART店舗のうち、品川第2号店と横浜店を除く各店舗において使用されていたものと認められ、STREET KART店舗とMariCAR店舗の一体性から、品川第2号店及び横浜店においても使用されていたものと推認することができると判断しています(71頁以下)。

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2 富士河口湖店及び六本木店において現在被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームが使用されているか

富士河口湖店では、被告標章第1の3、4を使用しており、六本木店は被告標章第1の4を使用していると認定されています(77頁以下)。

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3 一審被告会社が平成27年6月4日の設立時から現在まで自ら又は関係団体と共同して本件各店舗において本件レンタル事業を実施し、自ら又は関係団体と共同して被告標章第1の使用行為、本件制作行為、本件宣伝行為、本件各ドメイン名の使用行為並びに本件貸与行為を行ったのか

設立時から現在までの一審被告会社による本件レンタル事業の実施やそれに伴う被告標章第1及び被告標章第2の使用について、控訴審は、一審被告会社は平成28年6月24日以降も自ら又は少なくとも関係団体と共同して本件レンタル事業を実施しており、自ら又は関係団体と共同して後記認定の不正競争行為を行っていると判断しています(79頁以下)。

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4 被告標章第1の営業上の使用行為及び商号としての使用行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか

(1)本件需要者

本件需要者は、日本において観光の体験等として公道カートを運転してみたい一般人、とりわけ比較的若年の成年層であり、原判決の口頭弁論終結前の時点において、一審被告らのいうところの訪日外国人(外国人旅行者、在日米軍関係者、在日大使館員など)に限られることはなく、日本人も需要者であったと控訴審は判断しています(86頁以下)。

(2)原告文字表示及び「MARIO KART」表示の周知性・著名性

控訴審は、「MARIO KART」表示は日本の国内外の本件需要者の間で、また、原告文字表示マリオカートは日本国内の本件需要者の間でそれぞれ著名であったと判断。
原告文字表示マリオカート及び「MARIO KART」表示と被告標章第1との類否に関し、まず、原告文字表示マリオカートについて、外観、称呼に関しては一定程度似ており、観念の点でも同一の観念が生じると判断。日本国内の本件需要者との関係で原告文字表示マリオカートと被告文字表示第1の1(マリカー)は類似していると判断しています(89頁以下)。
次に、「MARIO KART」表示と被告標章第1との類否に関し、外観、称呼に関しては一定程度似ており、観念の点でも同一の観念が生じると判断。日本国内外の本件需要者全てとの関係で「MARIO KART」表示と被告標章第1の2乃至4は類似していると判断しています。

結論として、2条1項2号の成立を肯定しています。

『原告文字表示マリオカートは著名であって,被告標章第1の1の需要者である日本国内の本件需要者との関係で被告標章第1の1と類似しており,「MARIO KART」表示は著名であって,被告標章第1の2〜4の需要者である日本国内外の本件需要者との関係で被告標章第1の2〜4と類似するものである。
 また,前記第2の2(4),第3の1〜3で認定した一審被告会社が単独又は関連団体と共同で行っている被告標章第1の使用行為は,いずれも被告標章第1を,自己がしている本件レンタル事業という役務を表示するものとして使用するものといえる。
 そして,不競法2条1項2号は,著名表示をフリーライドやダイリューションから保護するために設けられた規定であって,混同のおそれが不要とされているものであるから,一審被告らが主張するような打ち消し表示の存在や本件各コスチュームの使用割合が低いこと(ただし,この点についての一審被告らの主張を採用できないことは,後記6(2)エのとおりである。)といった事情は,何ら不正競争行為の成立を妨げるものではない。
 したがって,その余の点について判断するまでもなく,自ら又は関係団体と共同して被告標章第1を前記第2の2(4),第3の1〜3で認定したとおり使用する一審被告会社の行為は,外国語のみで記載されたウェブサイト等で用いることも含めて不正競争行為に該当するものである。』(99頁)

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5 登録商標の抗弁の成否

一審被告らは、一審被告会社は「マリカー」の標準文字からなる本件商標を有しており、「マリカー」という標章を使用する正当な権限を有するから、仮に被告標章第1の使用行為が不正競争行為に該当するとしても差止請求や損害賠償請求は認められない旨主張しましたが、控訴審は権利の濫用として一審被告らのこれらの主張を認めていません(100頁以下)。

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6 本件宣伝行為及び本件貸与行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか

控訴審は、原告表現物(原告表現物マリオ、原告表現物ルイージ、原告表現物ヨッシー及び原告表現物クッパ)の著名性を認定した上で、本件写真2及び3のサイト掲載、各動画のYouTubeへのアップロード、本件貸与行為、本件マリオ人形の使用行為、従業員によるコスチュームの着用行為といった各行為の2条1項2号該当性を肯定しています(101頁以下)。

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7 本件各ドメイン名の使用行為が不競法2条1項13号の不正競争行為に該当するか

控訴審は、一審被告会社は不正の利益を得る目的をもって、一審原告の特定商品等表示である原告文字表示及び「MARIO KART」表示と類似する本件各ドメイン名を使用したと認められることから、同行為は不競法2条1項13号所定の不正競争行為に該当し、一審原告の営業上の利益を害するものであると判断しています(119頁以下)。

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8 一審被告Yに対する損害賠償請求の可否

一審被告Yは、取締役として会社が不正競争行為を行わないようにする義務があり、一審被告Yにはそのような義務に違反した点について悪意又は少なくとも重過失があることから、一審被告Yは会社法429条1項に基づく責任を負うと控訴審は判断しています(121頁以下)。

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9 一審原告の損害額

一審被告会社は、一審原告に対して不競法4条に基づいて一審原告の請求に係る一審被告会社が設立された平成27年6月4日から平成30年10月31日までの間に一審原告に生じた損害を賠償する責任を負い、一審被告Yは、悪意又は重過失による任務懈怠が認められ、一審被告会社と連帯して上記損害を賠償する責任を負うと控訴審は判断しています(123頁以下)。

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10 反訴請求の可否

一審原告の反訴の同意がなく、結論として、一審被告会社の反訴の提起は不適法であると控訴審は判断しています(民訴法300条1項 124頁)。

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■コメント

不正競争防止法上の侵害論についての中間判決となります。原審と大きく異なる点として、不正競争防止法2条1項1号(商品等主体混同惹起行為)ではなく、2号(著名表示冒用行為)の成立が認められています。
なお、損害論(数額の点)はこれからとなります。

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■過去のブログ記事

東京地裁平成30.9.27平成29(ワ)6293不正競争行為差止等請求事件
原審記事