最高裁判所HP 下級裁裁判例集より

リーチサイト「はるか夢の址」刑事事件

大阪地裁平成31.1.17平成29(わ)4356著作権法違反、不正指令電磁的記録作成等PDF

大阪地方裁判所 第14刑事部
裁判官  飯島健太郎

*裁判所サイト公表 2019.ーー
*キーワード:リーチサイト、刑事事件、併合罪

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■事案

漫画などの書籍データの無断閲覧などを助長させたサイト運営に関する刑事事件

被告人:A、B、C

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■結論

有罪

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■罰条

条文 刑法60条、168条の2第1項1号、45条前段、47条本文、10条、著作権法119条1項、23条1項

1 著作権法違反(著作権法119条1項、23条)
2 不正指令電磁的記録作成等(刑法168条の2第1項1号)

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■罪となるべき事実

『第1 被告人3名は,「D」の名称で,インターネットサイト「E」を運営・管理していたものであるが,別表(省略)記載のとおり,Fら15名と共謀の上,法定の除外事由がなく,かつ,著作権者の許諾を受けないで,別表番号5ないし9においては被告人Cが,その余においてはG以外の前記Fら14名が,平成28年3月2日から平成29年7月18日までの間,48回にわたり,埼玉県草加市内前記F方等15か所において,同所に設置されたパーソナルコンピュータを使用してインターネットを介し,H等44名が著作権を有する著作物である漫画「I第J巻」等68点の各書籍データを,インターネットに接続された自動公衆送信装置であるサーバコンピュータの記録媒体に記録・蔵置した上,平成28年3月2日から平成29年7月18日までの間,48回にわたり,前記F方等15か所において,前記パーソナルコンピュータを使用してインターネットを介し,前記各書籍データを記録・蔵置した場所を示すURLを,「K」等2事業者が管理する前記「E」のサーバコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置し,インターネットを利用する不特定多数の者に前記著作物68点の各書籍データを自動公衆送信可能な状態にし,もってそれぞれ前記著作権者の著作権を侵害した。』

『第2 被告人A及び被告人Bは,正当な理由がないのに,人の電子計算機における実行の用に供する目的で,L及びMと共謀の上,
1 平成29年1月18日午後6時58分頃,堺市内N方において,同所に設置された電子計算機を使用して,人が電子計算機から電気通信回線を介してインターネット上の当該プログラムが蔵置されたウェブページに接続すれば,接続者の意思に反して,指定されたウェブサイトに指定の間隔で連続してアクセスするプログラムを作成し,
2 同日午後9時31分頃,和歌山県紀の川市内所在のO大学PキャンパスQ号館R館S号において,同所に設置された電子計算機を使用して,前同様のプログラムを作成し,もって人が電子計算機を使用するに際してその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録を作成した。』

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■判決内容

<量刑の理由>

1 各犯行の評価

『被告人3名が,他の共犯者らと共謀して行った判示第1の各犯行は,インターネットサイト(以下「本件サイト」という。)のサーバコンピュータ内に,違法にアップロードされた漫画等の書籍データのリンクを掲載するなどして,不特定多数の者に対して書籍データを自動送信可能な状態にしたものである。本件サイトには,利用者による違法なアップロードと投稿を助長するための様々な仕組みがあり,犯行は常習的なものである。著作権を侵害された者は44名,書籍は68点に上り,被告人3名において本件サイトを利用者の多いものに成長させていたこともあって,書籍の販売価格とダウンロード回数を掛け合わせた額は約3931万円に及んでいる。その全額が著作権者が得られるはずであった利益ではないにせよ,多くの財産的な損害が発生していると認められるし,著作権には人格的な利益も含まれており,多数の著作権者らに総体として大きな損害が発生していると認められる。なお,検察官は,本件サイトによる推定損害額を具体的に主張し,著作権協会の関係者の心情等も主張しているところ,この犯行は親告罪であり,告訴されていない被害に係る損害や著作権者以外の者の心情を量刑上考慮することはできないが,判示第1の各犯行が,同種事案の中でも際立って大規模で社会に大きな影響を及ぼす行為の一環としてされたものであり,その結果として,起訴に係る多くの損害を発生させていることは考慮に値する。このように,判示第1の各犯行は同種事案の中でも相当悪質で結果も重大なものであるといえる。
 次に,被告人A及び被告人Bによる判示第2の犯行は,同犯行の共犯者らから,同人らが運営するサイトの競合サイトを潰すことを依頼されて,本件サイトを介して攻撃対象のサイトに連続して多数アクセスさせ,当該サイトのサーバに負荷をかける機能を有する攻撃用スクリプトを作成したというものであり,判示第2の2のものは,リンク元のページの情報が分からないようにされた巧妙で悪質なものである。』
(以下、略)

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■コメント

いわゆる海賊版リーチサイト「はるか夢の址」における出版物の無許諾アップロード刑事事件となります。
求刑は、被告人Aにつき懲役4年6月、被告人Bにつき懲役4年、被告人Cにつき懲役3年でしたが、被告人Aは懲役3年6月、被告人Bは懲役3年、被告人Cは懲役2年4月という執行猶予が付かない結果となっています。
犯行としては、違法アップロード行為と、不特定多数者への違法助長行為、さらに、競合サイトを潰す目的での攻撃用スクリプト作成ということで、量刑も重くなっています。

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■参考サイト

講談社プレスリリース(2019年1月17日)「「はるか夢の址」大阪地裁の判決についてのコメント」