最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

パンダイラストクッキー事件

東京地裁平成31.3.13平成30(ワ)27253著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 山田真紀
裁判官 棚橋知子
裁判官 西山芳樹

*裁判所サイト公表 2019.4.3
*キーワード:イラスト、複製、翻案、氏名表示、委託、注意義務

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■事案

焼き菓子やそのパッケージに無断でパンダのイラストが利用された事案

原告:イラストレーター
被告:加工食品製造販売会社ら
補助参加人:パッケージ制作会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法21条、26条の2、19条、20条

1 侵害論
2 故意過失
3 損害論
4 謝罪広告等の必要性

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告らにおいて製造し,又は販売する別紙3被告商品目録記載の商品(以下「被告商品」という。)に記載された別紙2被告イラスト目録記載1及び2の各イラスト(以下,番号順に「被告イラスト1」などといい,これらを一括して「被告イラスト」という。)は,原告の著作した別紙7原告イラスト目録記載のイラスト(以下「本件イラスト」という。)を複製したものであり,被告らによる被告商品の製造又は販売は,本件イラストについての原告の著作権(複製権,譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を共同して侵害する不法行為であり,被告らには被告イラストの複製及び頒布のおそれがある旨を主張して,被告らに対し,(1)著作権法112条1項に基づき,被告イラストの複製及び頒布の差止め,(2)同条2項に基づき,被告イラストが記載された被告商品の廃棄,(3)民法709条及び719条1項前段に基づき,平成29年9月1日から平成31年2月1日までの著作権等侵害の不法行為による損害賠償金470万円及びこれに対する平成30年9月6日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,(4)著作権法115条に基づき,著作者であることを確保し,名誉,声望を回復するための適当な措置として,別紙6謝罪広告目録記載の謝罪広告の掲載を求める事案である。』
(2頁)

<経緯>

H25.04 原告が本件イラストを制作
H29.11 被告らが被告製品を販売

被告商品:「上野のアイドル 上野あかちゃんパンダ」

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■判決内容

<争点>

1 侵害論

(1)著作権侵害及びそのおそれの有無

本件イラストと被告イラストは、いずれも互いの額を接して向き合う大小2頭のパンダを描いたものであり、2頭のパンダの姿勢、表情、大きさの比などを含めた構成が類似しており、表現上の本質的な特徴が同一であると裁判所は判断。
そして、依拠性についても、その同一性の程度は非常に高いものであることから、被告イラストは本件イラストに依拠して有形的に再製されたものであると推認することができると判断。

結論として、被告商品を製造して本件イラストを複製する被告スマイル―リンクの行為は、原告の複製権(著作権法21条)を侵害し、被告商品を販売して本件イラストを譲渡する被告行為は、原告の譲渡権(26条の2)を侵害すると判断しています(6頁以下)。

また、被告行為が平成29年11月頃から平成30年9月頃まで継続していたことを考慮すれば、被告イルドリシェスには被告商品の販売により原告の本件イラストについての譲渡権を侵害するおそれがあり、被告スマイル―リンクには被告商品の製造及び販売により原告の本件イラストについての複製権及び譲渡権を侵害するおそれがあると裁判所は判断しています。

(2)著作者人格権侵害の有無

被告商品には原告の氏名又はペンネームが表示されていないことから、被告行為は原告の氏名表示権(19条1項)を侵害するものであると裁判所は判断しています(7頁)。

また、被告イラストはパンダの黒く示されている足及び耳について灰色の線で縁取られている部分があり、パンダの目の部分が黒一色で表され、白い部分がないほか、大きい方のパンダの耳の形が半円に近い形であり、2頭の鼻と口を示す線がより太く表されており、本件イラストと相違している部分があるが、これらは原告に無断で変更されていて、原告の意に反して変更されたと認められるとして、被告行為は原告の同一性保持権(20条1項)を侵害するものであると裁判所は判断しています。

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2 故意過失

被告らは加工食品製造販売会社であり、第三者に製造委託していたとしても、受託した補助参加人等に対して被告イラストの作成経過を確認するなどして他人のイラストに依拠していないかを確認すべき注意義務を負っていたと裁判所は説示。確認を怠った点に注意義務違反があるとして、被告らの過失を認定しています(7頁以下)。

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3 損害論

(1)著作権(複製権、譲渡権)侵害による損害(114条3項)

販売価格550円×販売個数6664個×使用料率5%=183260円

(2)著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)侵害による慰謝料

10万円

(3)弁護士費用相当額損害

4万円

合計42万3260円(8頁以下)

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4 謝罪広告等の必要性

名誉声望回復措置としての謝罪広告の掲載の主張は認められていません(10頁)。

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■コメント

パンダのデザインのデッドコピーの案件で被告側も有効な反論を出せていません。
デザインに加工を加えていることから、同一性保持権侵害にもなっています。
(上:原告イラスト 下:被告商品パッケージ 判決文別紙より)

原告0403パンダイラスト


0403パンダイラスト被告.jpg