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2019年03月18日

自撮り素足写真事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

自撮り素足写真事件

東京地裁平成31.2.28平成30(ワ)19731発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    奥 俊彦
裁判官    高桜慎平

*裁判所サイト公表 2019.3.14
*キーワード:発信者情報開示、写真、著作物性

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■事案

自撮り画像がインターネット掲示板に無断転載されたことから発信者情報開示請求された事案

原告:個人
被告:電気通信事業者

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 本件写真2の著作物性の有無
2 公衆送信権侵害の成否

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■事案の概要

『本件は,原告が,自身の両脚を撮影した2枚の写真について著作権及び著作者人格権を有するところ,氏名不詳者により,インターネット上の電子掲示板に,当該2枚の写真を複製した画像のアップロード先であるURLが無断で投稿されたことにより,原告の著作権(複製権及び公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)が侵害されたことが明らかであると主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項の開示関係役務提供者である被告に対し,同項に基づき,その保有する発信者情報の開示を求める事案である。』
(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件写真2の著作物性の有無

裁判所は、まず、写真の著作物性(著作権法2条1項1号)の判断基準に言及した上で、本件の写真の著作物性を検討しています(9頁以下)。

本件写真2について、裁判所は、
『フローリング上にスリッパを履いて真っすぐに伸ばした状態の両脚とテーブルの一部を主たる被写体とし,大腿部の上方から足先に向けたアングルで,右斜め前方からの光を取り入れることで陰影を作り出すとともに脚の一部を白っぽく見せ,また,当該光線の白色と,テーブル,スリッパ及びショートパンツの白色とが組み合わさることで,脚全体が白っぽくきれいに映るように撮影されたカラー写真であり,被写体の選択・組合せ,被写体と光線との関係,陰影の付け方,色彩の配合等の総合的な表現において,撮影者の個性が表れているものといえる。』
として、写真の著作物性を肯定しています。

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2 公衆送信権侵害の成否

(1)本質的特徴を感得できるかについて

被告は、本件画像は本件写真を他の写真と合わせて一つの小さい画像として掲載しているにすぎず、本件写真を利用していると思われる部分の大きさはかなり小さく、画像も不鮮明となっているなどとして、本件画像は本件写真2の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないと反論しました。
この点について、裁判所は、結論として、本件画像はこれに接する者が本件写真2の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものであると判断しています。

(2)本件画像アップロードと本件投稿の関係について

問題となった掲示板サービス「たぬピク」は、指定されたメールアドレス宛てに画像を添付したメールを送信すると当該画像がインターネット上にアップロードされたURLが、送信元のメールアドレス宛てに返信され、送信者は当該URLを第三者に送るなどして当該画像を第三者と共有することができるサービスでした。

被告は、氏名不詳者による本件投稿はアップロードされた本件画像ファイルのURLを転記したにすぎず、当該画像ファイルそのものを投稿したものではないから、そもそも本件投稿によって著作権侵害は成立し得ないと反論しました。

この点について、裁判所は、氏名不詳者による本件投稿自体は、URLを書き込む行為にすぎないとしても、本件投稿をした者は本件画像をアップロードし、そのURLを本件掲示板に書き込むことで本件画像のデータが公衆によって受信され得る状態にしたものであるとして、これを全体としてみれば、本件投稿によって原告の本件写真2に係る公衆送信権が侵害されたものということができると判断。公衆送信権侵害性を肯定しています(10頁以下)。

結論として、本件投稿によって原告の本件写真2に係る著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかであり、また、原告がかかる著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権を行使するためには、被告が保有する別紙発信者情報目録記載の情報(氏名又は名称、住所)が必要であるとして、裁判所は原告の主張を認めています。

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■コメント

画像が直接掲示板に掲載されるのではなくて、画像表示用URLが掲載されるようなシステムの掲示板での画像無断使用の事例です。

判決文別紙に原告の自撮り写真が掲載されていますが、スマホでの自分の素足を撮影しただけのスナップ写真でも、著作物性が認められている点が参考になります。

家族写真といったスナップ写真の著作物性については、東京アウトサイダーズ事件(知財高裁平成19.5.31平成19(ネ)10003等出版差止等請求控訴事件)があり、現在、ほぼこうした創作性のレベルがさほど高くない部類の写真であっても著作物性が否定されることはないところで裁判所の判断が確定されている感がありましたが、最近の著作権判例のなかでは、美術館の外観や館内の写真の著作物性が否定された事例として、一竹辻が花美術館グッズ事件(東京地裁平成30.6.19平成28(ワ)32742著作権侵害差止等請求事件)があり、写真の著作物性判断について、なお留意が必要と思われます。

written by ootsukahoumu at 22:34│知財判決速報2019