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2019年03月07日

「なびシリーズ」業務提携契約事件−著作権 損害賠償等請求事件等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「なびシリーズ」業務提携契約事件

東京地裁平成31.2.15平成29(ワ)10909損害賠償等請求事件(本訴)、平成29(ワ)35131損害賠償請求反訴事件(反訴)PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    三井大有
裁判官    遠山敦士

*裁判所サイト公表 2019.3.6
*キーワード:業務提携契約、レベニューシェア、債務不履行、プログラム、複製

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■事案

ウェブサービスの業務提携契約上の収益分配金未払いなどが争点となった事案

本訴原告・反訴被告:IT個人事業者
本訴被告・反訴原告:IT事業社

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■結論

本訴請求一部認容、反訴請求棄却

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■争点

条文 著作権法21条、民法415条

1 未払収益分配金の有無及びその額
2 プログラム著作権の複製権侵害の成否
3 債務不履行及びプログラム著作権侵害による損害の有無及びその額
4 プログラム消去による不法行為の成否(反訴)

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■事案の概要

『本訴は,原告が,ポータルサイトの開発,運営の事業を共同で営んでいた被告に対し,(1)被告が経費を過大に計上するなどして原被告間の契約に基づく収益の分配をしなかったことから,平成29年3月31日をもって同契約を解除したとして,未払収益分配金1183万6621円(平成28年4月分から平成29年3月分まで)及び同契約の解除に伴う損害賠償金(逸失利益)の一部である4000万円の支払を求めるとともに,上記未払収益分配金のうち1033万2313円(平成28年4月分から平成29年2月分まで)及び逸失利益4000万円の合計5033万2313円に対する訴状送達の日の翌日である平成29年4月23日から支払済みまで,上記未払収益分配金のうち150万4308円(平成29年3月分)に対する平成29年5月1日(その支払期限の翌日)から支払済みまでいずれも商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求め,(2)被告が,同事業の運営に必要なプログラムであり,原告がプログラム著作権を有するプログラムを無断で複製したとして,著作権侵害に対する損害賠償金(使用料相当損害金)として96万1697円(以上合計5279万8318円)の支払を求めるとともに,同損害賠償金に対する不法行為日(継続的不法行為の最終日)である平成29年4月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』

『反訴は,被告が,原告に対し,原告が上記プログラムを被告に無断で消去したと主張して不法行為に基づく損害賠償金871万7812円及びこれに対する不法行為日である平成29年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁以下)

<経緯>

H18,03 原告とBが共同で「なびシリーズ」運営開始
H19.11 Bが被告会社設立
H21.01 原被告間で本件業務契約作成
H28.11 原告が被告に未払収益分配金の支払催告
H29.03 原告が契約解除の意思表示
H29.04 原告が本件プログラムの稼働停止、被告が再稼働

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■判決内容

<争点>

1 未払収益分配金の有無及びその額

裁判所は、まず、収益分配に関する合意の内容について検討。本件業務契約にいう「経費」は本件事業に必要な経費を意味し、原告と被告との間には少なくとも同事業の経費として計上することに疑義があるものについては、同契約当事者間の協議により相手方の同意を得なければならない旨の合意が存在したと認めるのが相当であると判断。
その上で、収益から差し引く個別経費(役員報酬、業務委託費、車両の減価償却費、企業保険、地代家賃、修繕費、事務消耗品費、通信交通費、租税公課、接待交際費など)について検討。
被告が本件業務契約に基づかずに各経費(マネタイズパートナーのコンサルティング費用以外)を算入したことにより、本来分配すべき金員を理由もなく減額し、その分、本来原告が分配を受けるべき金員を支払わなかったとして、原告は被告に対して未払収益分配金の支払を求めることができると判断。
結論として、原告は、被告に対して平成28年4月分から平成29年3月分までの未払収益分配金として1148万2957円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めることができるとしています(18頁以下)。

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2 プログラム著作権の複製権侵害の成否

裁判所は、「なびシリーズ」の運営に必要なシステムの開発を行ったのは原告であり、また、本件業務契約書第3項にはプログラムの所有権は原告に帰属する旨の規定が置かれていることから、本件プログラムのプログラム著作権は原告に帰属すると判断。
その上で、原告が本件業務契約を解除後、「なびシリーズ」プログラムを停止した後に、被告が「なびシリーズ」プログラムのバックアップから原告が著作権を有するプログラムを原告に無断で「なびシリーズ」サーバに複製し、平成29年4月1日から同月23日までの間、これを認識しつつプログラムを再稼働させていたとして、被告の同行為は本件プログラムのプログラム著作権の侵害となると判断しています(25頁)。

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3 債務不履行及びプログラム著作権侵害による損害の有無及びその額

(1)債務不履行に基づく損害賠償(逸失利益)

被告は原告に対して本件業務契約に基づく収益分配金の支払義務を履行しなかったため、原告による債務不履行を理由とする同契約の解除は有効であると裁判所は判断。
本件解除の直前である平成28年4月から平成29年3月までの収益分配金を基礎に2年間分3039万7348円を損害額として認定しています(26頁以下)。

(2)プログラム著作権の複製権侵害による損害賠償金

年間の使用料相当損害金としては、本件事業から生じる年間収益金4024万1514円の1%として、当該年間使用料相当額のうち23日分の相当額2万5357円を損害額として認定しています。

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4 プログラム消去による不法行為の成否(反訴)

本件プログラムのプログラム著作権は原告にあることから、被告に対する同プログラムの使用許諾が本件業務契約の解除により平成29年3月31日をもって終了しており、原告が同年4月1日に自らが管理する本件プログラムを停止したとしても、それは正当な権利行使にすぎず、同行為が不法行為を構成するということはできないと裁判所は判断。被告の主張を認めていません(27頁以下)。

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■コメント

電話帳的な情報、事業者情報を取り扱うウェブサービスの運営に関して、業務提携関係のなかで広告収入などの分配金の未精算部分の収益から差し引く経費の解釈などが争点となった事案です。
レベニューシェア契約書や収益分配規定のある契約書の中には、収益から差し引く経費が具体的に記載されておらず、協議事項になっていることがよくあることなので、事例として参考になります。
written by ootsukahoumu at 07:05│知財判決速報2019