最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ClariS「ヒトリゴト」無断配信発信者情報開示請求事件

東京地裁平成30.6.15平成30(ワ)5939発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    三井大有
裁判官    今野智紀

*裁判所サイト公表 2018.6.29
*キーワード:プロバイダ責任制限法、送信可能化権、レコード製作者

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■事案

レコード製作会社6社が音源の無断配信者の情報開示をプロバイダに請求した事案

原告:レコード製作会社
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 権利侵害の明白性
2 発信者情報開示を受けるべき正当理由の有無

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■事案の概要

『本件は,別紙対象目録に係る各レコードの送信可能化権を有すると主張する原告らが,氏名不詳者が上記各レコードを圧縮して複製したファイルをコンピュータ内の記録媒体に記録して蔵置し,被告の提供するインターネット接続サービスを経由して自動公衆送信し得る状態にした行為により上記送信可能化権を侵害されたことが明らかであり,権利の侵害に係る発信者情報の開示を受ける正当な理由があると主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,経由プロバイダである被告に対し,上記発信者情報の開示を求める事案である。』
(1頁)

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■判決内容

<争点>

1 権利侵害の明白性

本件各発信者は、本件各レコードを圧縮して複製したファイルをコンピュータ内の記録媒体に記録して蔵置した上で被告の提供するインターネット接続サービスを利用し、同ファイルを自動的に送信し得る状態に置いたとの事実が認められると裁判所は判断。
裁判所は、同行為によって原告らが有する本件各レコードの送信可能化権が侵害されたことが明らかであると判断しています(3頁)。

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2 発信者情報開示を受けるべき正当理由の有無

原告らは、本件各発信者に対して著作権(送信可能化権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有するところ、原告らが本件各発信者に対してその権利を行使するためには本件各発信者情報の開示が必要である。
そして、本件発信者に対してインターネット接続サービスを提供していた被告は、プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たり、本件各発信者情報を保有しているものと認められると裁判所は判断。
裁判所は、原告らの被告に対する本件各発信者情報開示を認めています。

なお、開示すべき発信者情報について、被告は電子メールアドレスの開示を受ける必要はないと主張しましたが、プロバイダ責任制限法4条1項に係る総務省令においては、電子メールアドレスも侵害情報の発信者の特定に資する情報として規定されている上、転居などの事情によって本件発信者の実際の住所が被告が本件発信者の住所として保有しているものと異なる可能性もあることに照らすと、電子メールアドレスの開示が不要ということはできないと判断。
結論として、原告らには被告から本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると判断しています(3頁以下)。

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■コメント

レコード会社6社のClariS「ヒトリゴト」や水樹奈々「TESTAMENT」といった音源をファイル交換共有ソフトウェアであるShare互換ソフトウェアで送信可能化した事案となります。