最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

FX取引自動売買ソフト無断複製事件

東京地裁平成30.4.26平成28(ワ)44243等損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    矢口俊哉
裁判官    広瀬達人

*裁判所サイト公表 2018.−.−.
*キーワード:プログラム著作物、著作者性、名誉毀損

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■事案

外国為替証拠金取引(FX取引)自動売買ソフトウェアの無断複製の有無が争点となった事案

原告(反訴被告):個人
被告(反訴原告):個人

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■結論

本訴請求棄却、反訴一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項2号

1 本件プログラムの著作者は原告か
2 本案前の争点(反訴要件の有無)
3 被告に対する名誉棄損の不法行為の成否
4 被告の損害

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■事案の概要

『本件は,(1)原告が,自らの作成に係る別紙1(甲12の1。以下「本件本体部分」という。)及び別紙2(甲12の2。以下「本件ライブラリ部分」という。)の各ソースコードから成るプログラム(以下「本件プログラム」という。)の著作権を有しているところ,被告において原告の許諾なく本件プログラムを複製して販売していることが,原告の上記著作権(複製権又は譲渡権)を侵害すると主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償金209万3600円及びこれに対する不法行為日以後である平成28年8月16日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(本訴)のに対し,(2)被告が,原告において被告と交わした電話での通話内容(原告が被告による上記著作権侵害を主張する内容である。)を録音してインターネット上で配信等した行為が被告の名誉権及びプライバシー権を侵害すると主張して,原告に対し,不法行為に基づく損害賠償金55万円及びこれに対する不法行為後である平成29年3月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(反訴)事案である。』
(2頁)

<経緯>

H28.10 原告が被告に電話
    原告がニコニコ生放送、YouTubeにやりとりの動画を投稿

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■判決内容

<争点>

1 本件プログラムの著作者は原告か

裁判所は、本件プログラムに著作物性が認められるとしても、具体的なソースコードの作成の大部分をCが担当しているなどとして、原告が創作性を主張する「本件手法メモ部分をプログラムとして記述した部分」の著作者が原告であると認めることはできないと判断。結論として原告の著作者性を否定し、原告の本訴請求を認めていません(8頁以下)。

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2 本案前の争点(反訴要件の有無)

原告は、本件反訴が「本訴の目的である請求又は防御の方法と関連する請求を目的とする場合」に当たらないと主張しましたが、裁判所は、本件反訴は本訴の目的である著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求に係る請求権の行使又は催告等が、その態様に照らして原告の名誉権又はプライバシー権を侵害する不法行為に当たると主張して損害賠償を求めるものであるとして、本件本訴の目的である請求と関連する請求を目的とするものであると認めています(10頁)。

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3 被告に対する名誉棄損の不法行為の成否

原告は動画配信サイトに被告との電話での通話内容を投稿していましたが、本件配信及び本件投稿に係る動画中における原告の発言は、被告が原告の著作権を侵害したとの印象を与えるなど、被告の社会的評価を低下させるに足るものと認められるとして、裁判所は被告に対する名誉棄損の不法行為を構成するものと認めています(10頁以下)。

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4 被告の損害

被告に対する名誉棄損の不法行為に関する損害額として、慰謝料10万円と弁護士費用相当額損害2万円の合計12万円が被告の損害として認定されています(11頁)。

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■コメント

原告は本人訴訟ということもあって、プログラムの創作性やソースコードを作成したCと原告との権利関係といった点について主張立証が尽くされていない印象です。