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2018年04月05日

自主制作映画「すたあ」事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

自主制作映画「すたあ」事件

東京地裁平成30.3.19平成29(ワ)20452著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官    伊藤清隆
裁判官    天野研司

*裁判所サイト公表 2018.3.26
*キーワード:映画、映画著作者、映画の全体的形成に創作的に寄与した者、映画製作者、発意と責任

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■事案

映画製作に関わる関係者間での紛争事案

原告:俳優
被告:自主映画制作者

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法16条、29条、2条1項10号

1 原告は本件映画の共同著作者か
2 原告は本件映画の映画製作者であり被告及びCは原告に対し本件映画の製作に参加することを約束したか
3 原告は本件マスターテープの所有権を有していたか

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■事案の概要

『本件は,別紙著作物目録記載の映画(以下「本件映画」という。)の共同著作者であり,同映画の著作権者であると主張する原告が,本件映画の監督である被告が本件映画のマスターテープ(以下「本件マスターテープ」という。)を引き渡さずに行方をくらませた行為は,原告が有していた同マスターテープの所有権を侵害する不法行為である,被告が本件映画をインターネット上の動画共有サイト「YouTube」(以下「本件サイト」という。)にアップロードした行為(以下「本件アップロード行為」という,)は,本件映画につき原告が有する著作権(公衆送信権)を侵害するとともに,原告をプロデューサーとして表示しない点及び劇場用映画として制作された本件映画をインターネットで公表する点において,本件映画につき原告が有する著作者人格権(氏名表示権及び公表権)を侵害する行為であり,被告が今後本件映画を上映,複製,公衆送信若しくは送信可能化し又はその複製物を頒布する(以下,これらの行為を総称して「上映等」という。)おそれがあると主張して,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,本件映画の上映等の差止めを求めると共に,本件マスターテープの所有権侵害の不法行為による損害賠償請求権,著作権(公衆送信権)侵害の不法行為による損害賠償請求権及び著作者人格権(氏名表示権,公表権)侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金577万5000円(所有権侵害の不法行為による損害賠償金188万5000円,著作権侵害の不法行為による損害賠償金64万円,著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償金325万円)及びこれに対する不法行為後の日である平成29年1月3日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H17.08 本件映画:サイコ&コメディ映画「すたあ」制作
H18.10 本件映画上映
H29.01 youtubeにアップロード

製作:劇団トリプルエー・スペースN
エグゼクティブ・プロデューサー:A(原告)
監督・脚本・美術:B(被告)
撮影・製作進行ほか:C

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■判決内容

<争点>

1 原告は本件映画の共同著作者か

原告は、原告が被告及びCとともに本件映画の共同著作者であると主張しました。
この点について、裁判所は、映画著作物の著作者の意義(著作権法16条)について言及した上で、
『本件映画については,脚本及び監督を被告が,撮影をCが担当し,撮影後の編集作業も被告及びCが行っているから,被告及びCは,本件映画の全体的形成に創作的に寄与した者といえるが,原告は,自らがプロデューサーを担当することが決まったなどと主張するにとどまり,本件映画の全体的形成に創作的に寄与したことを基礎付ける具体的な事実関係を主張しているとはいえないし,そのような事実関係を認めるに足りる的確な証拠もない。』
として、原告が本件映画の共同著作者であるとは認められていません(10頁以下)。

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2 原告は本件映画の映画製作者であり被告及びCは原告に対し本件映画の製作に参加することを約束したか

原告は、原告が本件映画の映画製作者であり、かつ、被告及びCは原告に対して本件映画の製作に参加することを約束したのであるから、著作権法29条1項の規定により原告が本件映画の著作権者となると主張しました。
この点について、裁判所は、映画製作者の意義について、
『著作権法29条1項の「映画製作者」とは,映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいい(同法2条1項10号),より具体的には,映画の著作物を製作する意思を有し,当該著作物の製作に関する法律上の権利義務が帰属する主体であって,そのことの反映として当該著作物の製作に関する経済的な収入支出の主体ともなる者と解される。』と説示した上で、本件については、原告は本件映画を製作する意思を有していたということができるものの、原告が本件映画の製作全体について法律上の権利義務が帰属する主体であるとか、製作に関する経済的な収入支出の主体であるとの状況にあったと認めることは困難であると判断。
結論として、原告は本件映画の製作に発意と責任を有するものであったと認められず、本件映画の「映画製作者」ということはできないことから、原告が29条1項により本件映画の著作権を取得したということはできず、原告の主張は認められていません(11頁以下)。

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3 原告は本件マスターテープの所有権を有していたか

原告は、本件映画の映画製作者は原告であり、本件マスターテープの所有権は本件映画の完成時に当然に原告に帰属すると主張しましたが、裁判所は原告の主張を認めていません(12頁以下)。
結論として、被告が原告の有する本件マスターテープの所有権を侵害したことを原因とする原告の損害賠償請求も否定されています。

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■コメント

映画製作に関わる関係者間での紛争事案です。最低限、どのような取り決めを事前にしておくべきかがわかる事例として参考になります。

written by ootsukahoumu at 08:45│知財判決速報2018