最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

建築CADソフト海賊版販売事件

東京地裁平成30.1.30平成29(ワ)31837損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    矢口俊哉
裁判官    高櫻慎平

*裁判所サイト公表 2018.2.20
*キーワード:ヤフオク、海賊版販売、損害論

   --------------------

■事案

ヤフオクでの建築CADソフトの海賊版販売に関する損害賠償請求の事案

原告:プログラム開発会社
被告:個人

   --------------------

■結論

請求一部認容

   --------------------

■争点

条文 著作権法21条、20条、不正競争防止法2条1項12号

1 被告による著作権侵害及び著作者人格権侵害の有無
2 被告による旧11号所定の不正競争行為の有無
3 原告の損害額

   --------------------

■事案の概要

『本件は,原告が,「建築 CAD ソフトウェア「DRA-CAD11」(以下「本件ソフトウェア」という。)について著作権及び著作者人格権を有し,また「DRA-CAD」との文字からなる商標に係る商標権を有しているところ,被告において,原告の許諾なしに本件ソフトウェアをダウンロード販売等すると共に,本件ソフトウェアのアクティベーション機能(正規品のシリアルナンバー等を入力しないとプログラムが起動・実行されないようにする機能をいう。)を回避するプログラムを顧客に提供して同機能の効果を妨げたものであり,かかる被告の行為は,原告の上記著作権(複製権,翻案権,譲渡権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するとともに,原告の上記商標権を侵害し,さらに平成27年法律第54号による改正前の不正競争防止法2条1項11号(同号は,同改正後の同法2条1項12号に相当する。以下,単に「旧11号」という。)所定の不正競争行為に該当する」と主張して,被告に対し,上記各不法行為に基づき,損害賠償金2812万9500円の一部である1000万円及びこれに対する平成28年7月2日(被告が上記商標権侵害に関する刑事事件において有罪判決を受けた日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
これに対し,被告は,商標権侵害の事実を認めるが,著作権侵害及び不正競争防止法違反の各事実及び原告の損害額を争う。』
(1頁以下)

<経緯>

H27.02 被告がヤフオクで本件商品を販売
H28.02 被告が商標法違反(37条1号)等を被疑事実として逮捕、起訴、有罪判決確定

本件ソフトウェア:建築CADソフトウェア(DRA-CAD11)
本件商標:登録番号 第5165277号

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 被告による著作権侵害及び著作者人格権侵害の有無

被告は、本件ソフトウェアの一部に原告の許諾なく改変(アクティベーション機能の回避)を加え(本件ソフトウェアの表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、変更等を加えて新たな創作的表現を付加した)、同改変後のものをダウンロード販売したものと評価できると裁判所は判断。
被告は、原告の著作権(翻案権及び公衆送信権)並びに著作者人格権(同一性保持権)を侵害したものと認定されています(9頁以下)。

   --------------------

2 被告による旧11号所定の不正競争行為の有無

被告は、原告が営業上用いている技術的制限手段(アクティベーション)により制限されているプログラム(本件ソフトウェア)の実行を、当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有するプログラム(Bのクラック版)を電気通信回線(インターネット回線)を通じて提供したものと裁判所は認定。
被告は、旧11号(2条1項12号)所定の不正競争行為を行ったものと判断しています(11頁以下)。

   --------------------

3 原告の損害額

著作権侵害に基づく損害額(著作権法114条3項)として以下の金額が認定されています(12頁以下)。

正規販売価格17万9550円(税込)×落札本数54本=969万5700円

なお、著作者人格権侵害や商標権侵害、不正競争防止法違反に基づく損害は認定されていません。

   --------------------

■コメント

ヤフオクでの建築CADソフトの海賊版販売に関する損害賠償請求の事案となります。