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2017年12月25日

消防支援車警告シール事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

消防支援車警告シール事件

東京地裁平成29.11.16平成28(ワ)19080損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    萩原孝基
裁判官    林 雅子

*裁判所サイト公表 2017.12.19
*キーワード:プログラム、説明書、ステッカー、シール、著作物性、一般不法行為論

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■事案

消防支援車のプログラムやタッチパネル画面、説明書、警告シールなどの著作物性が争点となった事案

原告:自動車部品製造会社
被告:自動車部品製造会社、電子機器製造会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、民法709条

1 不当な価格での入札による原告の利益の侵害の有無
2 資料流用による原告の利益の侵害の有無
3 原告車両の形態等の模倣による原告の利益の侵害
4 原告タッチパネル画面、原告説明書又は原告警告シールの利用による原告の利益の侵害
5 原告プログラム(1)についての著作権侵害の有無
6 原告プログラム(2)についての著作権侵害の有無
7 原告タッチパネル画面についての著作権侵害の有無
8 原告説明書についての著作権侵害の有無
9 原告警告シールについての著作権侵害の有無
10 被告らの故意過失及び関連共同の有無
11 原告の損害額

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■事案の概要

『本件は,消防支援車1型(以下「支援車1型」という。)の製造等を行っている原告が,一般競争入札で支援車1型17台を落札して製造した被告トノックス及びその製造に関与した被告マルチデバイスに対し,被告トノックスは不当に安い金額で支援車1型を落札したほか,支援車1型の製造に当たり原告が提供した資料を流用するなどし,また,被告らは原告が著作権を有する支援車1型の制御プログラム,タッチパネル画面,取扱説明書及び警告用のシールの複製権又は翻案権を侵害したと主張して,主位的には上記一連の行為による不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条,719条1項前段)として,予備的には上記各著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条,719条1項前段,著作権法114条1項又は3項)として,損害金4億6750万円及びこれに対する不法行為の日又はその後の日である平成25年2月13日(被告トノックスによる支援車儀燭稜室崙)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。』
(2頁以下)

<経緯>

H19.03 原告が拡幅機能を備える支援車1型を製造し神奈川県相模原市消防局等に納品
H22.02 一般競争入札で第一実業が47台製造落札。原告が受託
    原告が被告マルチデバイスに電機部分を委託
H24.02 一般競争入札で被告トノックスが17台製造落札
H24.07  被告トノックスが被告マルチデバイスに電気部分を委託
    第一実業が被告トノックスに17台製造について営業、見積書提出
    原告が被告トノックスへ部品購入見積書提出
H25.01 原告が被告トノックスに提供資料の返却を要求
H25.02  被告トノックスが消防庁に納品

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■判決内容

<争点>

1 不当な価格での入札による原告の利益の侵害の有無

原告は、被告トノックスは支援車1型17台を製造する能力がないことを認識していたにもかかわらず、平成24年入札において不当に安い価格で入札をして原告の営業上の利益を侵害したと主張しましたが、原告の主張を裁判所は認めていません。(34頁以下)。

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2 資料流用による原告の利益の侵害の有無

原告は、被告トノックスは原告に支援車1型17台の製造を発注する旨原告を誤信させた上で、平成24年4月17日にシャシ関係図等の提供を依頼し、原告は当該誤信に基づいて最大安定傾斜角度計算書等を提供したところ、被告トノックスが当該資料を流用して被告車両を製造したと主張しました。
この点について、裁判所は、原告の主張を認めていません(35頁以下)。

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3 原告車両の形態等の模倣による原告の利益の侵害

原告は、被告トノックスが原告車両の形態等を模倣して被告車両を製造したと主張しましたが、裁判所は原告の主張を認めていません(37頁以下)。

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4 原告タッチパネル画面、原告説明書又は原告警告シールの利用による原告の利益の侵


原告は、被告トノックスによる被告タッチパネル、被告説明書及び被告警告シールの作成行為は、原告タッチパネル、原告説明書及び原告警告シールに関する一般不法行為(民法709条)を構成すると主張しましたが、裁判所は原告の主張を認めていません(39頁以下)。

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5 原告プログラム(1)についての著作権侵害の有無

原告は、被告マルチデバイスは原告が著作権を有する著作物である原告プログラム(1)の拡幅操作部分を複製又は翻案したと主張しました。これに対して、被告らは、原告プログラム(1)は著作物ではないなどと反論しました(40頁以下)。
この点について、裁判所は、被告プログラムには原告プログラム(1)と回路構成が一致するブロックがあるものの、その各ブロックの表現については創作性を認めることができず、それらを著作物と認めることはできないと判断。結論として、被告プログラムが原告プログラム(1)を複製又は翻案していると認められず、著作権侵害性は否定されています。

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6 原告プログラム(2)についての著作権侵害の有無

裁判所は、原告プログラム(2)が原告プログラム(1)を翻案したものであると認めることはできず、原告プログラム(2)について、原告が原著作者として著作権を有するとは認められないなどとして、原告の主張を認めていません(46頁以下)。

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7 原告タッチパネル画面についての著作権侵害の有無

相模原市消防局車両向けタッチパネルの各画面は、支援車1型を操作するためのボタンや表示画面、ボタンにより行われる動作の説明の表示を組み合わせたものでした。
その各ボタンのデザインは、楕円や長方形を基礎とするありふれたものであり、各ボタンの配置も上下、左右に同種のボタンを並べるなど単純なもので、ボタンにおける説明の表示も通常の表示であると裁判所は認定。
各画面には作成者の個性が発揮されておらず、これらの画面に創作性を認めることはできないと判断。裁判所は原告の主張を認めていません(48頁以下)。

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8 原告説明書についての著作権侵害の有無

原告説明書は、配電盤や発電機、キャブチルトの取扱方法等、支援車1型の装備や機器の機能、操作方法等の客観的な事項を簡潔な表現で説明しているものであり、いずれも個別の表現に作成者の個性が発揮されているものとはいえないと裁判所は判断。結論として、原告の主張は認められていません(51頁以下)。

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9 原告警告シールについての著作権侵害の有無

車両のキャブルーフ部に立ち入ってはならない旨を示すためのシールについて、原告警告シールは、図柄と「NO STEP」との文字を組み合わせた縦長の長方形状のもので、上記図柄は黒色で縁取られた黄色の略正方形状の四角の中に、白い足形のマークと対角線状の×印を描いたものでした。
裁判所は、必ずしもありふれた表現であるとはいえないとして、原告警告シールの著作物性を肯定。原告警告シールの著作権は原告に帰属するとした上で、被告警告シールは原告警告シールを複製したものであるとして、原告警告シールの複製権を侵害すると判断しています(52頁以下)。

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10 被告らの故意過失及び関連共同の有無

過失が認定されて被告トノックスによる被告警告シールの作成は原告警告シールの複製権を侵害すると判断されていますが、被告マルチデバイスとの共同不法行為性は否定されています(55頁以下)。

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11 原告の損害額

被告トノックスは、原告警告シールの複製権を侵害し、これにより被った原告の損害を賠償する義務を負うところ、被告車両17台分計17枚×販売価格相当額1万円×利益率60%で10万2000円が損害額として認定されています。
そのほか、弁護士等費用相当損害額として2万5000円が認定されて、損害額合計12万7000円となっています(56頁以下)。

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■コメント

消防車両向け操作タッチパネルなどの著作物性が争点となった事案です。争点は多岐に亘りますが、警告シールについてだけ著作権侵害性が肯定されています。
著作権や営業秘密の取扱いが原被告間の契約で明確にされていなかった事案で、原告は不正競争防止法上の争点を正面から争っていません。

警告シールのデザインについて、別紙の添付がないためよく分かりませんが、比較的単純なシールのデザインでも著作物性が肯定された点は参考になります。

なお、原告サイトには、消防支援1型の車両画像があるので、どのような車両かよく分かりますが(支援車1型:右拡幅仕様)、シールの図柄までは分かりませんでした。
47台出荷途中で311大震災があり、この消防支援車が大活躍したことは想像に難くありません。

written by ootsukahoumu at 06:07│知財判決速報2017