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2017年12月11日

生長の家「万物調和六章経」書籍事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

生長の家「万物調和六章経」書籍事件

東京地裁平成29.11.29平成27(ワ)29705著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    遠山敦士
裁判官    勝又来未子

*裁判所サイト公表 2017.12.06
*キーワード:著作権譲渡、黙示の承諾、解除の有効性

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■事案

生長の家創始者谷口雅春氏(故人)の著作「大調和の神示」の使用許諾の成否などが争点となった事案

原告:公益財団法人、出版社
被告:宗教法人、宗教法人代表者

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法21条

1 本件著作物の著作権の帰属
2 黙示の許諾の有無
3 解約の有効性

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■事案の概要

『本件は,(1)原告事業団が,別紙著作物目録記載の言語の著作物である「大調和の神示」(「『七つの燈薹の點燈者』の神示」あるいは「『七つの灯台の点灯者』の神示」という題号のときもある。以下「本件著作物」という。)の著作権を有するところ,別紙書籍目録記載1及び2記載の各書籍(以下,各書籍を「本件書籍1」などといい,両者を併せて「本件各書籍」という。)の出版は,本件著作物に係る原告事業団の著作権(複製権)を侵害する旨主張して,被告らに対し,本件著作物の著作権に基づき,本件各書籍の複製,頒布又は販売の申出の差止め及び廃棄(世界聖典普及協会,日本教文社及び教化部の保管するものを含む。)を求め,不法行為による損害賠償請求権に基づき,160万円及びこれに対する不法行為の後の日である訴状送達日の翌日(被告生長の家につき平成27年11月19日,被告Aにつき平成27年11月15日)から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払,(2)原告光明思想社が,本件著作物につき,出版権を有するところ,被告らによる本件各書籍の出版は,本件著作物に係る原告光明思想社の出版権を侵害する旨主張して,被告らに対し,本件著作物の出版権に基づき,本件各書籍の複製の差止めを求め,不法行為による損害賠償請求権に基づき,100万円及びこれに対する不法行為の後の日である訴状送達日の翌日(被告生長の家につき平成27年11月19日,被告Aにつき平成27年11月15日)から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁以下)

<経緯>

S06 創始者Bが機関誌に本件著作物を発表
S07 「生命の實相」出版
S11 「甘露の法雨」出版
S21 Bが原告事業団を設立
H21 原告事業団が日本教文社を提訴(東京地裁平成21(ワ)6368)
   被告生長の家が原告事業団及び原告光明思想社を提訴(東京地裁平成21(ワ)17073)
   日本教文社が原告事業団を提訴(東京地裁平成21(ワ)41398)
H25 原告事業団及び原告光明思想社が日本教文社を提訴(東京地裁平成25(ワ)28342)
H27 本件各書籍発行

本件著作物:「大調和の神示」
本件各書籍:「万物調和六章経」(発行所 生長の家)

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■判決内容

<争点>

1 本件著作物の著作権の帰属

(1)本件著作物の単独著作物性

原告らは、本件著作物は独立したものではなく、原告事業団が著作権を有する「生命の實相」及び「甘露の法雨」の一部を構成するものであると主張しました。
この点について、裁判所は、本件著作物は「生命の實相」や「甘露の法雨」の発行に先立って単独の著作物として発表されたものであり、また、「生命の實相」に掲載される際は、目次やはしがきの前の巻頭に掲載されており、本編の一部を構成していなかったこと、さらに、「生命の實相」や「甘露の法雨」以外の複数の著作物にも本件著作物が掲載されている点などから、本件著作物は単独の著作物であると判断しています(21頁以下)。

(2)寄付行為の対象

原告事業団の設立に際して、Bがその著作物を寄附行為として出捐していましたが、裁判所は、Bはその著作物の著作権を全て原告事業団に寄附行為として譲渡したものであって、その中には本件著作物も含まれていたと認めるのが相当であると判断しています(22頁以下)。

結論として、本件著作物の著作権は、原告事業団に帰属すると認定されています。

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2 黙示の許諾の有無

原被告両法人の設立の趣旨、経緯に照らせば、生長の家の布教・伝道に必要なBの著作物については、寄附行為として原告事業団に譲渡された後も被告生長の家に無償で使用させることが当初から想定されていたと認めるのが相当であると裁判所は判断。
そして、原告事業団は、遅くとも本件著作物の著作権の譲渡後に初めて本件著作物を掲載した著作物が発行された日である昭和28年1月1日には、被告生長の家に対して本件著作物を無償で個別の承諾なく利用することについて、黙示に許諾したというべきであると認定しています(23頁以下)。

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3 解約の有効性

原告らは、本件使用許諾の合意が認められるとしても、無償であることから正当な理由の有無にかかわらず、同合意を解約することができると主張しました(25頁以下)。
この点について、裁判所は、生長の家の布教・伝道に支障が生じる可能性や原告事業団の設立の趣旨や経緯、また、被告生長の家が60年以上に亘って無償で本件著作物を利用して布教・伝道に利用してきた事実などを踏まえ、本件使用許諾の合意を解約するためには、これを是認するに足りる正当な理由が必要であると説示。
そして、両者の信頼関係の破壊といった対立状況や関係修復の可能性、また、本件使用許諾の期間、本件著作物の使用目的・態様、本件著作物が利用できなくなった場合に被告生長の家が受ける不利益の程度等を総合考慮し、解約の正当理由の有無を判断。
結論として、本件では同合意の解約を是認するに足りる正当な理由があるということはできないと判断しています。

最終的に、原告事業団と被告生長の家との間には本件著作物の使用に関する許諾が存在することから、被告生長の家の本件各書籍における本件著作物の掲載は、原告事業団の複製権及び原告光明思想社の出版権を侵害するものとはいえず、また、被告Aの行為が違法であるということもできないと判断されています。

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■コメント

生長の家創始者である谷口雅春氏の著作「大調和の神示」(本件著作物)の著作権は原告事業団にあるものの、宗教法人生長の家との間で黙示の使用許諾が成立しており、解約の合理的理由もないとして、本件著作物の使用許諾関係が是認されました。
生長の家関係の訴訟はいくつもありますが、疑義についてはこうして訴訟をすることで判決内容が公開されて経緯が明らかにされることから、信者さんにとっても、また、社会にとってもかえって良いことなのかもしれません。

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■過去のブログ記事

「生命の實相」収録論文事件
2015年04月06日記事

「生命の實相」著作物利用権確認請求事件(控訴審)
2014年11月04日記事

「生命の實相」書籍著作権事件(控訴審)
2012年02月17日記事

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■参考サイト

2017年12月2日宗教法人「生長の家」プレスリリース

『万物調和六章経』に係る訴訟に全面勝訴!
サイト
プレスリリースPDF
written by ootsukahoumu at 07:17│知財判決速報2017