最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
会員情報管理システム開発事件(控訴審)
知財高裁平成29.5.23平成28(ネ)10113損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官 山門 優
裁判官 片瀬 亮
*裁判所サイト公表 2017.5.24
*キーワード:職務著作
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■事案
ソフトウェアの著作者性が争点となった事案の控訴審
控訴人 (1審原告):被告元従業員
被控訴人(1審被告):コンピュータ関連機器販売会社
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権15条2項
1 本件システム開発に関する不当利得返還請求の可否
2 被控訴人の安全配慮義務違反に基づく請求の可否
3 「会員情報管理システム」の著作者は控訴人か被控訴人か
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■事案の概要
『本件は,平成19年9月3日から平成22年5月31日までの間,被控訴人に雇用されていた控訴人が,被控訴人に対し,(1)控訴人が被控訴人の従業員として開発に従事したプログラムである「会員情報管理システム」及び「知らせますケン」並びにこれらに係るシステム(以下,これらのシステム及びプログラムを総称して「本件システム」という。)について,被控訴人が納入先から得た請負代金及び保守費用を控訴人に分配していないことが不当利得に当たると主張して,不当利得返還請求権に基づき,(1)主位的に,被控訴人が得た請負代金及び保守費用のうちの控訴人の寄与分相当額から控訴人が受領済みの賃金額を控除した額合計1938万6607円及びうち558万3703円に対する平成21年4月1日(被控訴人が「知らせますケン」の報酬金の支払を受けた日の翌日)から,うち1380万2904円に対する平成22年4月2日(被控訴人が「会員情報管理システム」の報酬金の支払を受けた日の翌日)から各支払済みまで民法704条前段所定の年5分の割合による利息(以下「法定利息」という。)の支払を,(2)予備的に,上記合計額から「会員情報管理システム」の保守費用相当額を控除した合計1318万6607円及びこれに対する法定利息の支払を求め,(2)控訴人が,被控訴人の安全配慮義務違反のために過重労働を原因とするうつ病を発症して後遺障害を生じたことから,退職及び退職後2年間の休業を余儀なくされたと主張して,債務不履行に基づく損害賠償金として,休業損害,後遺障害逸失利益及び慰謝料相当額(主位的に合計6286万2435円,予備的に合計4912万0445円)並びにこれに対する催告の後の日である平成27年8月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(3)被控訴人の業務として控訴人が制作したプログラムである「会員情報管理システム」について,その制作時,被控訴人が安全配慮義務を怠っていたために控訴人に重大な労働災害(過労死)が発生する蓋然性が高い状況にあったこと等に照らすと,著作権法15条2項の適用は権利濫用ないし公序良俗違反に当たるから,職務著作とは認められないと主張して,(1)控訴人が著作者であり,被控訴人が著作者ではないことの確認を求めるとともに,(2)著作者人格権に基づき,原判決別紙技術目録記載の文言の使用禁止を求め,(4)控訴人が受領すべき保険金(平成21年2月20日発生の通勤時の事故に関するもの)を被控訴人が取得していると主張して,不当利得返還請求権に基づき,被控訴人が得た保険金のうち少なくとも8万1000円及びこれに対する平成21年5月28日(被控訴人が保険金を受領した日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息の支払を求め,(5)控訴人の訴え提起前の照会に対して被控訴人が契約書等の書面の開示を拒否したことが不法行為に当たると主張して,不法行為に基づく損害賠償金として,被控訴人及び第三者らに対する照会書等の郵送費用6866円及びこれに対する不法行為の後の日である平成28年4月5日(同年3月22日付け請求拡張申立書送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』
『原判決は,(1)控訴人の被控訴人に対する労務の提供が雇用契約に基づくものである以上,控訴人が開発した本件システムについて被控訴人が取引先から代金を受領したとしても,控訴人の損失及び被控訴人の利得の有無には何ら影響しないと認められるから,本件システム開発に関する不当利得返還請求は,その前提を欠くものである,(2)控訴人が被控訴人を退職する前後の状況や退職後の経緯等からすると,控訴人が過重労働を原因とするうつ病を発症し,労働能力を喪失していたとは認められず,被控訴人に安全配慮義務違反があったとは認められない,(3)「会員情報管理システム」は著作権法15条2項所定の職務著作に該当するから,その著作者は被控訴人である,(4)被控訴人は,平成21年2月20日に発生した控訴人の通勤時の事故に関して保険会社から受領した保険金と同額の金員を控訴人に支払済みであるから,被控訴人に利得はない,(5)被控訴人が契約書等の書面の開示に応じなかったことが控訴人に対する不法行為を構成するということはできないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
そこで,控訴人が,これを不服として,上記(1)ないし(3)の支払等を求める限度において控訴した(原判決が上記(4)及び(5)の請求を棄却した部分は,不服の対象とされていない。)。また,控訴人は,当審において,上記(2)の予備的請求に係る損害に「会員情報管理システム」の保守費用相当額である620万円を加え,同請求を5532万0445円及び法定利息の請求に拡張した。』
(2頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 本件システム開発に関する不当利得返還請求の可否
2 被控訴人の安全配慮義務違反に基づく請求の可否
3 「会員情報管理システム」の著作者は控訴人か被控訴人か
(1)控訴人の本件システム開発に関する不当利得返還請求、(2)安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求並びに(3)「会員情報管理システム」の著作者であること等の確認請求及び著作者人格権に基づく請求を理由がないものとしていずれも棄却した原判決は相当であると控訴審も判断。控訴人が控訴審で拡張した予備的請求も理由がないとして棄却しています(9頁以下)。
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■コメント
控訴審でも原審の判断が維持されています。
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■過去のブログ記事
2016年11月19日
原審記事
会員情報管理システム開発事件(控訴審)
知財高裁平成29.5.23平成28(ネ)10113損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官 山門 優
裁判官 片瀬 亮
*裁判所サイト公表 2017.5.24
*キーワード:職務著作
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■事案
ソフトウェアの著作者性が争点となった事案の控訴審
控訴人 (1審原告):被告元従業員
被控訴人(1審被告):コンピュータ関連機器販売会社
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権15条2項
1 本件システム開発に関する不当利得返還請求の可否
2 被控訴人の安全配慮義務違反に基づく請求の可否
3 「会員情報管理システム」の著作者は控訴人か被控訴人か
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■事案の概要
『本件は,平成19年9月3日から平成22年5月31日までの間,被控訴人に雇用されていた控訴人が,被控訴人に対し,(1)控訴人が被控訴人の従業員として開発に従事したプログラムである「会員情報管理システム」及び「知らせますケン」並びにこれらに係るシステム(以下,これらのシステム及びプログラムを総称して「本件システム」という。)について,被控訴人が納入先から得た請負代金及び保守費用を控訴人に分配していないことが不当利得に当たると主張して,不当利得返還請求権に基づき,(1)主位的に,被控訴人が得た請負代金及び保守費用のうちの控訴人の寄与分相当額から控訴人が受領済みの賃金額を控除した額合計1938万6607円及びうち558万3703円に対する平成21年4月1日(被控訴人が「知らせますケン」の報酬金の支払を受けた日の翌日)から,うち1380万2904円に対する平成22年4月2日(被控訴人が「会員情報管理システム」の報酬金の支払を受けた日の翌日)から各支払済みまで民法704条前段所定の年5分の割合による利息(以下「法定利息」という。)の支払を,(2)予備的に,上記合計額から「会員情報管理システム」の保守費用相当額を控除した合計1318万6607円及びこれに対する法定利息の支払を求め,(2)控訴人が,被控訴人の安全配慮義務違反のために過重労働を原因とするうつ病を発症して後遺障害を生じたことから,退職及び退職後2年間の休業を余儀なくされたと主張して,債務不履行に基づく損害賠償金として,休業損害,後遺障害逸失利益及び慰謝料相当額(主位的に合計6286万2435円,予備的に合計4912万0445円)並びにこれに対する催告の後の日である平成27年8月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(3)被控訴人の業務として控訴人が制作したプログラムである「会員情報管理システム」について,その制作時,被控訴人が安全配慮義務を怠っていたために控訴人に重大な労働災害(過労死)が発生する蓋然性が高い状況にあったこと等に照らすと,著作権法15条2項の適用は権利濫用ないし公序良俗違反に当たるから,職務著作とは認められないと主張して,(1)控訴人が著作者であり,被控訴人が著作者ではないことの確認を求めるとともに,(2)著作者人格権に基づき,原判決別紙技術目録記載の文言の使用禁止を求め,(4)控訴人が受領すべき保険金(平成21年2月20日発生の通勤時の事故に関するもの)を被控訴人が取得していると主張して,不当利得返還請求権に基づき,被控訴人が得た保険金のうち少なくとも8万1000円及びこれに対する平成21年5月28日(被控訴人が保険金を受領した日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息の支払を求め,(5)控訴人の訴え提起前の照会に対して被控訴人が契約書等の書面の開示を拒否したことが不法行為に当たると主張して,不法行為に基づく損害賠償金として,被控訴人及び第三者らに対する照会書等の郵送費用6866円及びこれに対する不法行為の後の日である平成28年4月5日(同年3月22日付け請求拡張申立書送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』
『原判決は,(1)控訴人の被控訴人に対する労務の提供が雇用契約に基づくものである以上,控訴人が開発した本件システムについて被控訴人が取引先から代金を受領したとしても,控訴人の損失及び被控訴人の利得の有無には何ら影響しないと認められるから,本件システム開発に関する不当利得返還請求は,その前提を欠くものである,(2)控訴人が被控訴人を退職する前後の状況や退職後の経緯等からすると,控訴人が過重労働を原因とするうつ病を発症し,労働能力を喪失していたとは認められず,被控訴人に安全配慮義務違反があったとは認められない,(3)「会員情報管理システム」は著作権法15条2項所定の職務著作に該当するから,その著作者は被控訴人である,(4)被控訴人は,平成21年2月20日に発生した控訴人の通勤時の事故に関して保険会社から受領した保険金と同額の金員を控訴人に支払済みであるから,被控訴人に利得はない,(5)被控訴人が契約書等の書面の開示に応じなかったことが控訴人に対する不法行為を構成するということはできないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
そこで,控訴人が,これを不服として,上記(1)ないし(3)の支払等を求める限度において控訴した(原判決が上記(4)及び(5)の請求を棄却した部分は,不服の対象とされていない。)。また,控訴人は,当審において,上記(2)の予備的請求に係る損害に「会員情報管理システム」の保守費用相当額である620万円を加え,同請求を5532万0445円及び法定利息の請求に拡張した。』
(2頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 本件システム開発に関する不当利得返還請求の可否
2 被控訴人の安全配慮義務違反に基づく請求の可否
3 「会員情報管理システム」の著作者は控訴人か被控訴人か
(1)控訴人の本件システム開発に関する不当利得返還請求、(2)安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求並びに(3)「会員情報管理システム」の著作者であること等の確認請求及び著作者人格権に基づく請求を理由がないものとしていずれも棄却した原判決は相当であると控訴審も判断。控訴人が控訴審で拡張した予備的請求も理由がないとして棄却しています(9頁以下)。
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■コメント
控訴審でも原審の判断が維持されています。
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■過去のブログ記事
2016年11月19日
原審記事