最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

車両運行管理ソフト営業誹謗事件

東京地裁平成29.3.16平成27(ワ)37329損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    萩原孝基
裁判官    林 雅子

*裁判所サイト公表 2017.3.27
*キーワード:営業誹謗、ライセンス契約、包括的許諾

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■事案

車両運行管理ソフトのライセンス契約を巡って営業誹謗行為があったかどうかなどが争点となった事案

原告:情報通信システム企画販売会社、代表取締役
被告:コンピュータ装置製造販売会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法22条、不正競争防止法2条1項15号

1 本件端末交換等の必要性の有無
2 本件複製行為に対する被告の許諾の有無
3 不正競争に関する被告の故意又は過失の有無
4 損害額

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■事案の概要

『本件は,原告会社が被告から継続的に購入して顧客に納入していたGPSシステム端末及びソフトウェアにつき,(1)原告会社が必要のない端末の入替え及びソフトウェアの著作権(複製権)侵害を行っている旨の虚偽の事実を被告が上記顧客に対して文書で告知した行為が不正競争防止法2条1項15号の不正競争に該当すると主張して,原告会社が,被告に対し,同法4条に基づき損害賠償金330万円及びこれに対する不法行為の日の後(訴状送達の日の翌日)である平成28年1月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,(2)原告らの本件損害賠償債務(被告のソフトウェアについての著作権(複製権)侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権)の有無について被告が争っていると主張して,原告らが,被告に対し,本件損害賠償債務の不存在確認をそれぞれ求める事案である。』(2頁)

<経緯>

H18.11 原告XがTMS−1を被告から継続的に購入
H21.07 原告会社設立
H24.06 原告会社が成田運輸から受注
H24.10 原告会社がTMS−1売買契約解除の意思表示
H25.06 被告が甲11文書を70社に送付
H25.07 被告が甲12文書を70社に送付

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■判決内容

<争点>

1 本件端末交換等の必要性の有無

被告の事業所ASP事業部名義の平成25年6月20日付け文書(甲11文書)は、地図ソフトの新バージョンへの移行に際して車載端末を入れ替える必要が全くないにもかかわらず、これがあるかのように原告会社が顧客に対して説明し、この説明に基づいて端末全数が入れ替えられた事実を摘示するものでした。この事実が虚偽であるかどうかについて、裁判所は、結論として同事実を虚偽と認定。原告会社と被告は競争関係にあり、当該文書の摘示する事実はその内容に鑑みると原告会社の営業上の信用を害するものであるとして、被告による当該文書の送付は、不正競争防止法2条1項15号の不正競争に該当すると判断しています(8頁以下)。

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2 本件複製行為に対する被告の許諾の有無

原告らは、原告会社による本件基地局ソフト2の複製を被告が包括的に許諾していたとして、原告会社がこれを違法にコピーした旨の被告の文書(「違法コピーのご報告及び今後のご連絡」と題する被告代表取締役及びASP事業部部長の連名の平成25年7月10日付け文書 甲12文書)の記載は虚偽であり、原告らは著作権侵害に基づく本件損害賠償債務を負わない旨主張しました(10頁以下)。
この点について、裁判所は、被告の包括的許諾は認められないとして、本件基地局ソフト2の複製につき包括的な許諾があったことを前提に、甲12文書の送付が不正競争に当たるとする原告会社の損害賠償請求及び著作権侵害による損害賠償債務を負わないとする原告らの債務不存在確認請求は、いずれも理由がないと判断しています。

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3 不正競争に関する被告の故意又は過失の有無

甲11文書を顧客に対して送付した行為が不正競争防止法2条1項15号の不正競争に該当するところ、裁判所は、被告には不正競争につき過失があると認定しています(14頁以下)。

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4 損害額

甲11文書に関する不正競争による原告会社の損害について、裁判所は、原告会社の営業上の信用が損なわれたことによる損害額を50万円、弁護士費用相当額損害を10万円、合計60万円を損害額として認定しています(15頁)。

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■コメント

運送会社で車両の位置や運行状態をリアルタイムに把握して車両の運行等を管理するシステムのライセンス契約を巡る争いとなります。
被告が作成して原告の取引先に送付した文書の営業誹謗行為性に関連して、原告らによる被告ソフトの無許諾インストール使用が複製権侵害にあたるかどうかが事実認定として争点の1つとなっています。