最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ストレッチポール健康器具ドメイン事件

大阪地裁平成29.3.21平成28(ワ)7393損害賠償請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 森崎英二
裁判官    田原美奈子
裁判官    大川潤子

*裁判所サイト公表 2017.3.27
*キーワード:不正目的ドメイン使用、名誉毀損

   --------------------

■事案

他社商品名を含むURLを取得して当該商品の信用を毀損するようなサイトを運営していた者の著作権侵害性などが争点となった事案

原告:工業用ゴム製品製造販売会社
被告:ウェブサイト運営者

   --------------------

■結論

請求一部認容

   --------------------

■争点

条文 著作権法32条、不正競争防止法2条1項13号

1 本件ウェブページによる名誉棄損の成否
2 名誉棄損の免責事由の有無
3 被告の行為が著作権(複製権、公衆送信権)侵害に該当するか
4 本件日本語ドメイン名を使用する行為が不正競争防止法2条1項13号の不正競争に該当するか
5 損害論

   --------------------

■事案の概要

『本件は,「アクシスフォーマー」との名称の健康器具を販売している原告が,その開設するウェブサイトで原告の上記製品についてのコメント等を掲載している被告に対し,下記請求をした事案である。(以下、略)』(1頁以下)

<経緯>

H28.01 発信者情報開示請求訴訟判決(前件訴訟)

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 本件ウェブページによる名誉棄損の成否

被告が運営しているウェブサイト下のウェブページ(本件ウェブページ)に掲載されている本件記載は、原告製品が他社製品の模倣品であり、同等規格製品と比較すると芯材部分が抜けやすく、芯材中央が凹んでいるなどの欠陥を有する粗悪品であることなどを指摘する内容でした。
本件ウェブページによる名誉棄損の成否について、裁判所は、本件ウェブサイトにアクセスして本件記載に接した一般の需要者は、原告製品は粗悪品であって信用できず、ひいてはその製造者である原告も信用できない企業であると認識するものであると判断。
本件ウェブページの記載が原告の社会的評価を低下させ信用を棄損することは明らかであるとして、本件ウェブページに本件記載を掲載した被告の行為は原告の名誉を毀損する行為であると認定しています(12頁以下)。

   --------------------

2 名誉棄損の免責事由の有無

名誉棄損の免責事由の有無について、裁判所は、結論として、専ら公益を図る目的を欠くなどとして違法性阻却による不法行為責任の免責を認めていません(13頁以下)。

   --------------------

3 被告の行為が著作権(複製権、公衆送信権)侵害に該当するか

別紙対比表1、2の「被告侵害部分」で特定された原告コンテンツの各記載について、裁判所は、その内容や記載の順序、文体等に照らして原告の個性が表出されているものと認められるとして、これらはいずれも原告の思想又は感情を創作的に表現したものとして著作権法上の著作物(著作権法2条1項1号)であると判断。原告はその作成者としてその著作権(複製権、公衆送信権)を有すると認定しています。
その上で、被告は原告コンテンツをそのまま自らの本件ウェブページに転載しており、不特定多数の者が本件ウェブサイトにアクセスして本件ウェブページを自由に閲覧することができるものであることから、被告は原告の複製権及び公衆送信権を侵害したと判断しています(14頁以下)。
なお、被告は引用(32条1項)に該当する旨反論しましたが、裁判所は、被告の行為は原告製品ひいては原告の信用を毀損する目的でされた違法な行為であり、その引用が「公正な慣行に合致するもの」とも「引用の目的上正当な範囲内で行なわれる」ものともいうことはできないとして、被告の主張を認めていません。

   --------------------

4 本件日本語ドメイン名を使用する行為が不正競争防止法2条1項13号の不正競争に該当するか

被告が運営していた「アクシスフォーマー.com」(本件日本語ドメイン名)は、原告の特定商品等表示と類似のドメイン名でした。裁判所は、本件ウェブサイト自体が原告に損害を加える目的で開設されたサイトであると認定。本件ウェブサイトの開設者である被告は、原告に損害を加える目的で原告の特定商品等表示である原告製品名と類似の本件日本語ドメイン名を使用したものというべきであり、これは不正競争防止法2条1項13号の不正競争に該当すると判断しています(15頁以下)。

   --------------------

5 損害論

(1)本件記載を本件ウェブページに掲載したことによる損害額について

名誉棄損による無形損害の損害額 50万円

(2)本件日本語ドメイン名の使用料相当額について

  3万円

(3)原告コンテンツの著作権侵害による利用許諾相当額について

  3万円

(4)前件訴訟の弁護士費用相当の損害額について

  4万円

(5)本件訴訟の弁護士費用相当の損害額について

  5万円

上記合計65万円を損害額として認定しています(16頁以下)。

   --------------------

■コメント

裁判所サイトでは別紙1乃至3がPDFで個別に添付されていますが、対比表の内容が省略されていて白紙のため、リンクが貼られていても意味がないものとなっています。そのため、楽天市場のサイト内の記載ということで原告の著作物の概要は分かりますが、対象となる著作物の正確な内容は分かりません。
原告商品のアクシスフォーマーは、1M程度の長さの円柱形の健康器具で、ストレッチをする時に用いられるものです(いわゆるストレッチポール、ヨガポール)。芯材がポリプロピレン(発泡材)で外皮が合成皮革となっており、発砲材だけのものより高級感がありそうです。

   --------------------

■参考サイト

【楽天市場】アクシスフォーマー
共和ゴムwebshop