最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
サプリ会員登録サイトHTML制作事件(控訴審)
知財高裁平成29.3.14平成28(ネ)10102損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官 古河謙一
裁判官 鈴木わかな
*裁判所サイト公表 2017.3.15
*キーワード:サイト制作、HTML、創作性
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■事案
連鎖販売取引に関する通販管理システムのサイトのHTML部分の創作性が争点となった事案の控訴審
控訴人 (1審原告):ソフト開発会社
被控訴人(1審被告):サプリ製造販売会社
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号
1 本件プログラムの著作物性及び著作者
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■事案の概要
『(1)本件は,控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人は,控訴人が被控訴人との契約(本件契約)に基づいて作成し,被控訴人に使用させていた通販管理システム(本件システム)を機能させるためのプログラム(本件プログラム)を,本件契約終了後に違法に複製し,本件プログラムの著作権(複製権)を侵害したとして,不法行為(民法709条)に基づき,本件契約終了日の翌日である平成25年11月1日から平成26年12月31日までの著作権法114条3項による損害の賠償等及び遅延損害金の支払を求めた事案である。
(2)原判決は,本件プログラムに含まれるHTML(本件HTML)についても本件プログラムについても,控訴人の従業員が創作的表現を作成したと認めるに足りず,したがって,仮に本件HTMLや本件プログラムの一部に創作的表現が含まれるとしても,控訴人が本件HTMLや本件プログラムの著作者であるとはいえないとして,控訴人の請求を棄却した。
控訴人は,原判決を不服として控訴した。』(2頁)
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■判決内容
<争点>
1 本件プログラムの著作物性及び著作者
プログラムの著作物性について、控訴審は、
『著作物性が認められるためには,創作性(著作権法2条1項1号)を要するところ,創作性は,表現に作者の個性が表れていることを指すものと解される。プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(同条1項10号の2)であり,コンピュータに対する指令の組合せであるから,正確かつ論理的なものでなければならないとともに,著作権法の保護が及ばないプログラム言語,規約及び解法(同法10条3項)の制約を受ける。そうすると,プログラムの作成者の個性は,コンピュータに対する指令をどのように表現するか,指令の表現をどのように組み合わせるか,どのような表現順序とするかなどといったところに表れることとなる。したがって,プログラムの著作物性が認められるためには,指令の表現自体,同表現の組合せ,同表現の順序からなるプログラムの全体に選択の幅が十分にあり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表れているものであることを要するということができる。プログラムの表現に選択の余地がないか,あるいは,選択の幅が著しく狭い場合には,作成者の個性の表れる余地がなくなり,著作物性は認められなくなる。
前記1のとおり,本件HTMLは,被控訴人が決定した内容を,被控訴人が指示した文字の大きさや配列等の形式に従って表現するものであり,そもそも,表現の選択の幅は著しく狭いものということができる。』(15頁)
と説示した上で、本件HTML及び本件プログラムの著作物性を検討しています。
(1)本件HTMLの著作物性について
控訴人においてAによる創作的表現と主張している部分について、控訴審は、いずれも作成者の個性が表れているということはできないと判断。
そして、本件HTMLにおいて、控訴人がAによる創作的表現である旨を主張している部分に著作物性が認められない以上、本件HTMLの著作物性は認められないと判断しています。
(2)本件プログラムの著作物性について
控訴人は、本件HTML以外、本件プログラムのどの部分に作成者の個性が表れているかを具体的に主張立証しておらず、本件PHPプログラムも含め本件プログラムの本件HTML以外の部分に著作物性を認めるに足りる証拠はないと判断。本件プログラムの著作物性を否定しています(25頁)。
結論として、控訴人の請求を棄却した原判決は結論において正当と判断、控訴を棄却しています。
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■コメント
控訴審でも原審の結論を維持しています。
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■過去のブログ記事
2016年10月20日 原審記事
サプリ会員登録サイトHTML制作事件(控訴審)
知財高裁平成29.3.14平成28(ネ)10102損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官 古河謙一
裁判官 鈴木わかな
*裁判所サイト公表 2017.3.15
*キーワード:サイト制作、HTML、創作性
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■事案
連鎖販売取引に関する通販管理システムのサイトのHTML部分の創作性が争点となった事案の控訴審
控訴人 (1審原告):ソフト開発会社
被控訴人(1審被告):サプリ製造販売会社
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号
1 本件プログラムの著作物性及び著作者
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■事案の概要
『(1)本件は,控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人は,控訴人が被控訴人との契約(本件契約)に基づいて作成し,被控訴人に使用させていた通販管理システム(本件システム)を機能させるためのプログラム(本件プログラム)を,本件契約終了後に違法に複製し,本件プログラムの著作権(複製権)を侵害したとして,不法行為(民法709条)に基づき,本件契約終了日の翌日である平成25年11月1日から平成26年12月31日までの著作権法114条3項による損害の賠償等及び遅延損害金の支払を求めた事案である。
(2)原判決は,本件プログラムに含まれるHTML(本件HTML)についても本件プログラムについても,控訴人の従業員が創作的表現を作成したと認めるに足りず,したがって,仮に本件HTMLや本件プログラムの一部に創作的表現が含まれるとしても,控訴人が本件HTMLや本件プログラムの著作者であるとはいえないとして,控訴人の請求を棄却した。
控訴人は,原判決を不服として控訴した。』(2頁)
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■判決内容
<争点>
1 本件プログラムの著作物性及び著作者
プログラムの著作物性について、控訴審は、
『著作物性が認められるためには,創作性(著作権法2条1項1号)を要するところ,創作性は,表現に作者の個性が表れていることを指すものと解される。プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(同条1項10号の2)であり,コンピュータに対する指令の組合せであるから,正確かつ論理的なものでなければならないとともに,著作権法の保護が及ばないプログラム言語,規約及び解法(同法10条3項)の制約を受ける。そうすると,プログラムの作成者の個性は,コンピュータに対する指令をどのように表現するか,指令の表現をどのように組み合わせるか,どのような表現順序とするかなどといったところに表れることとなる。したがって,プログラムの著作物性が認められるためには,指令の表現自体,同表現の組合せ,同表現の順序からなるプログラムの全体に選択の幅が十分にあり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表れているものであることを要するということができる。プログラムの表現に選択の余地がないか,あるいは,選択の幅が著しく狭い場合には,作成者の個性の表れる余地がなくなり,著作物性は認められなくなる。
前記1のとおり,本件HTMLは,被控訴人が決定した内容を,被控訴人が指示した文字の大きさや配列等の形式に従って表現するものであり,そもそも,表現の選択の幅は著しく狭いものということができる。』(15頁)
と説示した上で、本件HTML及び本件プログラムの著作物性を検討しています。
(1)本件HTMLの著作物性について
控訴人においてAによる創作的表現と主張している部分について、控訴審は、いずれも作成者の個性が表れているということはできないと判断。
そして、本件HTMLにおいて、控訴人がAによる創作的表現である旨を主張している部分に著作物性が認められない以上、本件HTMLの著作物性は認められないと判断しています。
(2)本件プログラムの著作物性について
控訴人は、本件HTML以外、本件プログラムのどの部分に作成者の個性が表れているかを具体的に主張立証しておらず、本件PHPプログラムも含め本件プログラムの本件HTML以外の部分に著作物性を認めるに足りる証拠はないと判断。本件プログラムの著作物性を否定しています(25頁)。
結論として、控訴人の請求を棄却した原判決は結論において正当と判断、控訴を棄却しています。
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■コメント
控訴審でも原審の結論を維持しています。
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■過去のブログ記事
2016年10月20日 原審記事