最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

雑誌「プレジデント」記事翻案事件(控訴審)

知財高裁平成29.1.24平成28(ネ)10091著作権侵害および名誉侵害行為に対する損害賠償控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官    片岡早苗
裁判官    古庄 研

*裁判所サイト公表 2017.1.27
*キーワード:翻案権、同一性保持権、名誉・声望権

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■事案

雑誌に掲載された記事を要約してウェブサイトに転用されたとして著作権侵害性などが争点となった事案の控訴審

控訴人 (1審原告):映画プロデューサー
被控訴人(1審被告):新聞社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、27条、113条6項

1 翻案権侵害の成否
2 同一性保持権侵害の成否
3 名誉・声望権侵害の成否
4 社会的評価の低下の有無
5 真実性の抗弁ないし公正な論評の抗弁の成否


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■事案の概要

『本件は,控訴人記事(甲2)の著作者であり,著作権者である控訴人が,被控訴人が運営するウェブサイトに掲載された被控訴人記事(甲1)により,著作権(翻案権)及び著作者人格権(同一性保持権,名誉・声望権)を侵害され,名誉を毀損されたと主張して,被控訴人に対し,(1)著作権侵害,著作者人格権侵害ないし名誉毀損の不法行為に基づき,損害合計340万円及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日)である平成28年2月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,(2)著作権法115条ないし民法723条に基づき,被控訴人のウェブサイトへの謝罪文の掲載を求めた事案である。
 原審は,(a)被控訴人各表現は,表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,控訴人各表現と同一性を有するにすぎないから,控訴人各表現を翻案したものではない,(b)被控訴人記事は,控訴人記事を改変したものではないから,同一性保持権の侵害はない,(c)控訴人指摘の被控訴人記事中の表現部分は,被控訴人記事の著者の控訴人記事に対する意見ないし論評又は控訴人記事から受けた印象を記載したものにすぎず,控訴人又は控訴人記事を誹謗中傷するものとは認められないから,名誉・声望権の侵害はない,(d)被控訴人記事が控訴人の社会的評価を低下させる理由として控訴人が主張する点は,控訴人の社会的評価を低下させることの理由とはなり得ないし,被控訴人記事の記載が控訴人の社会的評価を低下させるものとも認められないから,名誉毀損は成立しないなどとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
 控訴人が,これを不服として控訴した。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 翻案権侵害の成否
2 同一性保持権侵害の成否
3 名誉・声望権侵害の成否
4 社会的評価の低下の有無
5 真実性の抗弁ないし公正な論評の抗弁の成否


控訴審での控訴人の補充主張について、控訴審は認めていません。
結論として、原審の判断が控訴審でも維持されています。

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■コメント

原審の判断が控訴審でも維持されています。
最高裁サイトに公表された平成29年判断の著作権判例として最初の判決となります。

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■過去のブログ記事

2016年09月15日 原審記事