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2016年12月22日

著作権判例百選編集事件(保全異議申立事件 抗告審)−著作権 保全異議申立決定に対する保全抗告事件決定(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

著作権判例百選編集事件(保全異議申立事件 抗告審)

知財高裁平成28.11.11平成28(ラ)10009保全異議申立決定に対する保全抗告事件決定PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    杉浦正樹
裁判官    寺田利彦

*裁判所サイト公表 2016.11.25
*キーワード:編集著作者、著作者の推定、覆滅

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■事案

著作権判例百選の編者が出版社との間で編集著作者性などを巡って争われた事案の抗告審

抗告人:出版社
相手方:研究者

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■結論

原決定取消し、仮処分決定取消し、仮処分命令申立て却下

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■争点

条文 著作権法14条

1 著作者性

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■事案の概要

『相手方は,「相手方は,編集著作物たる著作権判例百選[第4版](本件著作物)の共同著作者の一人であるところ,抗告人が発行しようとしている著作権判例百選[第5版](本件雑誌)は本件著作物を翻案したものであるから,本件著作物の著作権を侵害する。」などと主張して,本件著作物の翻案権並びに二次的著作物の利用に関する原著作物の著作者の権利を介して有する複製権,譲渡権及び貸与権,又は著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)に基づく差止請求権(本件差止請求権)を被保全権利として,抗告人による本件雑誌の複製・頒布等を差し止める旨の仮処分命令を求める申立て(本件仮処分申立て)をした。 これに対し,東京地方裁判所は,平成27年10月26日,この申立てを認める仮処分決定(本件仮処分決定)をした。これを不服とした抗告人が保全異議を申し立てたが,原決定は,平成28年4月7日,本件仮処分決定を認可した。
 本件は,この原決定を不服とした抗告人が,原決定及び本件仮処分決定の取消し並びに本件仮処分申立ての却下を求めた事案である。』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 著作者性

(1)著作者性の推定

抗告審は、相手方(大学教授)の編集著作者性について、本件著作物には相手方の氏名を含む本件著作物編者らの氏名が編集著作者名として通常の方法により表示されているとして、相手方については著作者の推定(法14条)が及ぶと判断しています(24頁以下)。

(2)推定の覆滅

次に、著作者性の推定の覆滅の可否について検討されています。
著作者の意義(著作権法2条1項2号)、編集著作物の意義(12条1項)について言及した上で、

『本件のように共同編集著作物の著作者の認定が問題となる場合,例えば,素材の選択,配列は一定の編集方針に従って行われるものであるから,編集方針を決定することは,素材の選択,配列を行うことと密接不可分の関係にあって素材の選択,配列の創作性に寄与するものということができる。そうである以上,編集方針を決定した者も,当該編集著作物の著作者となり得るというべきである。
 他方,編集に関するそれ以外の行為として,編集方針や素材の選択,配列について相談を受け,意見を述べることや,他人の行った編集方針の決定,素材の選択,配列を消極的に容認することは,いずれも直接創作に携わる行為とはいい難いことから,これらの行為をしたにとどまる者は当該編集著作物の著作者とはなり得ないというべきである。』(46頁)

として、当該行為の具体的内容を踏まえながら、

『さらに,当該行為者の当該著作物作成過程における地位,権限,当該行為のされた時期,状況等に鑑みて理解,把握される当該行為の当該著作物作成過程における意味ないし位置付けをも考慮して判断されるべきである。』(47頁)

と当該行為の背景事情なども斟酌する旨説示。

そして、

『少なくとも本件著作物の編集に当たり中心的役割を果たしたB教授,その編集過程で内容面につき意見を述べるにとどまらず,作業の進め方等についても編集開始当初からE及びB教授にしばしば助言等を与えることを通じて重要な役割を果たしたというべきA教授及び抗告人担当者であるEとの間では,相手方につき,本件著作物の編集方針及び内容を決定する実質的権限を与えず,又は著しく制限することを相互に了解していた上,相手方も,抗告人から「編者」への就任を求められ,これを受諾したものの,実質的には抗告人等のそのような意図を正しく理解し,少なくとも表向きはこれに異議を唱えなかったことから,この点については,相手方と,本件著作物の編集過程に関与した主要な関係者との間に共通認識が形成されていた』

『これらの事情を総合的に考慮すると,本件著作物の編集過程において,相手方は,その「編者」の一人とされてはいたものの,実質的にはむしろアイデアの提供や助言を期待されるにとどまるいわばアドバイザーの地位に置かれ,相手方自身もこれに沿った関与を行ったにとどまるものと理解するのが,本件著作物の編集過程全体の実態に適すると思われる。』

として、相手方はアドバイザーの地位にすぎないと認定。
結論として、14条による推定にもかかわらず、相手方をもって本件著作物の著作者ということはできないと判断しています。

以上から、相手方は本件著作物の著作者ではなく、著作権及び著作者人格権を有しないとして、抗告人に対する被保全権利である本件差止請求権は認められず、相手方による本件仮処分申立ては理由を欠くものとして却下され、これを認めた本件仮処分決定及びこれを認可した原決定はいずれも取り消され、本件仮処分申立ては却下されています。

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■コメント

抗告審では一転、著作者の推定の覆滅が認められ、大学教授は著作者ではないと判断されました。
著作者の推定を認めた点は原審と同様の判断でしたが、抗告審では詳細な認定を行い、異なる結果となっています。

12月中旬には発売されて手元に百選第5版が届きました。多くの方々の思いが詰まった1冊として今まで以上に丁寧に取扱いたいと思います。

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■過去のブログ記事

2016年04月25日
原審記事

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■著作者の推定に関連する判例

「高速道路パノラマ地図」事件 東京地裁昭和39年11月26日判決
「地球儀用世界地図」事件 東京地裁昭和44年5月31日判決、東京高裁昭和46年2月2日判決
「現代世界総図」事件 東京地裁昭和54年3月30日判決
ミュージカル脚本著作権存在確認等請求事件 東京地裁平成16年3月19日判決
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/446/010446_hanrei.pdf
(以上、「著作権実務提要1」参照)
written by ootsukahoumu at 06:42│TrackBack(0)知財判決速報2016 

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