Tweet

2016年12月12日

スティック型加湿器形態模倣事件(控訴審)−著作権 不正競争差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

スティック型加湿器形態模倣事件(控訴審)

知財高裁平成28.11.30平成28(ネ)10018不正競争差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官    中村 恭
裁判官    森岡礼子

*裁判所サイト公表 2016.12.09
*キーワード:商品形態模倣行為性、応用美術、著作物性

   --------------------

■事案

スティック型加湿器のデザインの著作物性などが争点となった事案の控訴審

控訴人(1審原告) :プロダクトデザイナーら
被控訴人(1審被告):家電輸入卸会社、雑貨店

   --------------------

■結論

原判決変更

   --------------------

■争点

条文 著作権法2条1項1号、10条1項4号、不正競争防止法2条1項3号、19条1項5号、5条3項2号

1 不正競争行為性
2 著作物性
3 損害額

   --------------------

■事案の概要

『本件は,本判決別紙3「控訴人加湿器目録」記載1及び2の加湿器(以下,それぞれ,同目録の番号により「控訴人加湿器1」などという。)の開発者である控訴人らが,被控訴人に対し,(1)本判決別紙1「被控訴人商品目録」記載の加湿器(以下「被控訴人商品」という。)は,控訴人加湿器1又は控訴人加湿器2の形態を模倣したものであるから,その輸入,販売等は不正競争防止法2条1項3号の不正競争(形態模倣)に当たるとして,同法3条1項及び2項に基づいて,被控訴人商品の輸入,販売等の差止め及び廃棄を,(2)控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2は,いずれも,美術の著作物(著作権法10条1項4号)に当たるから控訴人らはこれらに係る著作権(譲渡権又は二次的著作物の譲渡権)を有するとして,著作権法112条1項及び2項に基づいて,被控訴人商品の輸入,販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに(上記(1)とは選択的併合),(3)不正競争防止法違反又は著作権侵害の不法行為に基づき(選択的併合,不正競争防止法5条3項2号又は著作権法114条3項の選択的適用),損害賠償金各120万円(逸失利益各95万円と弁護士費用各25万円の合計120万円の2人分で総計240万円)及びこれに対する不法行為後の日である平成27年3月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,それぞれ求める事案である。』

『原判決は,控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2につき,(1)両者は,いずれも,市場における流通の対象となる物とは認められないから,不正競争防止法2条1項3号にいう「商品」に当たらない,(2)両者は,いずれも,美的鑑賞の対象となり得るような創作性を備えていると認めることはできないから,著作物に当たらないとして,控訴人らの各請求をいずれも棄却した。』(2頁以下)

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 不正競争行為性

(1)「他人の商品」該当性

控訴審は、「他人の商品」の意義(不正競争防止法2条1項3号)について言及した上で、「他人の商品」性判断にあたり、「商品化」を完了した物品であるかどうかについて検討。
控訴人らは平成23年11月に商品展示会に控訴人加湿器1を出展しているが、商品展示会は商品を陳列して商品の宣伝、紹介を行い、商品の販売又は商品取引の相手を探す機会を提供する場であり、商品展示会に出展された商品は特段の事情のない限り、開発、商品化を完了し、販売を可能とする段階に至ったことが外見的に明らかになったものと認めるのが相当であると判断。
結論として、控訴人加湿器1及び2について、いずれも「他人の商品」該当性を肯定しています(15頁以下)。

(2)形態の模倣の有無

控訴審は、被控訴人商品と控訴人加湿器1及び2は、いずれも実質的に同一の形態を有するものであり、また、依拠性もあるとして、被控訴人商品は控訴人加湿器1又は控訴人加湿器2のいずれか又は双方を模倣(2条5項)したものであると判断しています(19頁以下)。

(3)保護期間終了の成否

控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2の形態の3年間の保護期間(19条1項5号イ)は、いずれも本件口頭弁論終結日の前の平成26年11月1日の経過により終了していると認定されています(24頁以下)。

(4)善意無重過失の有無及び被控訴人の過失の有無

被控訴人による形態を模倣した被控訴人商品の輸入について、差止請求は保護期間終了によりできないものの、控訴人らの損害賠償請求の当否の検討がされています。
この点について、被控訴人の主観的要件として、過失が認定されています。
また、譲受時に形態模倣商品が他人の商品を模倣したものであることに関する善意無重過失性の被控訴人の主張立証(19条1項5号ロ)について、被控訴人の主張は認められていません(26頁以下)。

   --------------------

2 著作物性

控訴審は、著作物性の意義(著作権法2条1項1号)及び応用美術の著作物性(10条1項4号)について言及した上で、控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2の著作物性を検討。
アイデア部分を除いた、リング状パーツ5を用いた点、吸水口6の形状、噴霧口7周辺の形状といった構成部分について、いずれも平凡な表現手法又は形状であって、個性が顕れているとまでは認められず、その余の部分も同様であると判断。控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2には著作権法における個性の発揮を認めることはできないとして、各商品の著作物性を否定しています(28頁以下)。

   --------------------

3 損害額

不正競争防止法違反に基づく損害賠償請求(保護期間終了日の平成26年11月1日よりも前の被控訴人商品の輸入。なお、当該商品がいつ販売されたかは当該商品の輸入自体が侵害行為である以上、損害額の算定を左右しない)について、

(1)逸失利益(5条3項2号)

小売価格1900円×販売数1万6739個×形態の相当使用料率5%
合計159万円

(2)弁護士費用相当額

合計30万円

結論として、控訴人らの控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2に係る権利・利益の割合で案分して、各94万5000円と損害額が認定されています(32頁以下)。

   --------------------

■コメント

原審では、加湿器1及び2は、試作品であり市場における流通の対象となる物とは認められないとして、不正競争防止法2条1項3号にいう「商品」に当たらないと判断されていましたが、控訴審では、一転、商品化を完了していると判断されて他人の商品性が肯定、損害も認定されています。
「商品」性の論点としては、(1)商品の容器や包装、(2)商品の部品や部分、(3)商品の組み合わせといったものがありますが(新注解不正競争防止法第三版上巻478頁以下参照)、試作品かどうか、商品化を完了したかどうかが争点となった事案の控訴審判断としては先例性があるかと考えられます。

   --------------------

■過去のブログ記事

2016年01月25日
原審記事
written by ootsukahoumu at 07:09│TrackBack(0)知財判決速報2016 

トラックバックURL