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2016年08月13日

舞妓写生会写真事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

舞妓写生会写真事件

大阪地裁平成28.7.19平成26(ワ)10559著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙1

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 森崎英二
裁判官    田原美奈子
裁判官    大川潤子

*裁判所サイト公表 2016.08.08
*キーワード:写真、絵画、著作物性、二次的著作物、翻案権、展示権、公表権、同一性保持権

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■事案

写生会の際に撮影された写真を無断使用して絵画を制作したかどうかが争点となった事案

原告:日本画家
被告:日本画家

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、25条、18条1項、20条、27条、28条

1 本件写真の著作物性及び著作権の帰属主体
2 被告の本件絵画の制作行為等は本件写真の著作権及び著作者人格権を侵害する行為であるか
3 原告が被告に対して著作権及び著作者人格権を行使することを妨げる事由はあるか
4 被告は本件写真の著作権及び著作者人格権侵害について故意又は過失があるか
5 原告の受けた損害の額

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■事案の概要

『本件は,日本画家である原告が,同人の撮影した舞妓の写真を利用して日本画を制作し,その日本画を展覧会に出展した日本画家である被告に対し,著作権(翻案権,展示権)及び著作者人格権(同一性保持権,公表権)侵害を理由として侵害行為の差止等(翻案権及び同一性保持権に基づく写真の翻案の差止請求,展示権及び公表権に基づく絵画の展示,譲渡の差止請求及び廃棄請求)を求めるとともに,不法行為に基づく損害賠償として合計1980万円(著作権侵害を理由とする損害1500万円,著作者人格権侵害を理由とする損害300万円,弁護士費用相当の損害180万円)及びこれに対する不法行為の後の日である平成26年4月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁)

<経緯>

H10 舞妓の写生会開催
H21 原告が本件写生会に参加
H23 原告が本件写真を撮影、P3に提供
H24 原告が撮影した写真をP3が被告に郵送

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■判決内容

<争点>

1 本件写真の著作物性及び著作権の帰属主体

原告が撮影した舞のポーズをとった舞妓の写真(本件写真1)、黒髪の舞を踊る最中の舞妓の写真(本件写真2)、舞を踊る最中に座った姿勢となった舞妓の写真(本件写真3)について、いずれも著作物性(著作権法2条1項1号)が肯定され、原告が著作者、著作権者であることが認定されています(12頁以下)。

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2 被告の本件絵画の制作行為等は本件写真の著作権及び著作者人格権を侵害する行為であるか

(1)翻案権侵害性

被告が本件写真1ないし3に依拠して本件絵画1ないし4を制作しており、本件各絵画はいずれも本件各写真の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるとして、裁判所は本件写真を翻案したものと判断しています(14頁以下)。

(2)展示権侵害性

本件絵画はいずれも本件写真を翻案して制作された本件写真の二次的著作物に当たることから、原告は二次的著作物である本件絵画についても展示権を専有するところ、被告は本件絵画を不特定多数人が訪れる展覧会に出展して展示しており、被告の本件絵画展示行為は原告の本件絵画に係る展示権(25条)を侵害すると裁判所は判断しています。

(3)同一性保持権侵害性

本件絵画はそれぞれに対応する本件写真との相違点があることから、被告は本件写真の表現を改変したものというべきであると裁判所は判断。
そして、原告が被告に対して本件写真を利用した絵画の制作を許諾しておらず、被告による本件写真の改変は著作者である原告の意に反するものというべきであると判断。
被告の本件絵画制作行為は、原告の本件写真に係る同一性保持権を侵害すると裁判所は判断しています。

(4)公表権侵害性

本件写真はいずれも公表されていない写真であり、本件写真の著作者である原告は公表権を有するところ、本件絵画はいずれも本件写真を翻案して制作された本件写真の二次的著作物に当たり、原告はその二次的著作物である本件絵画についても公表権を有する。そして、被告は本件絵画を不特定多数人が訪れる別紙展覧会目録記載の各展覧会に出展し、公表したことから、被告の本件絵画公表行為は、原告の本件絵画に係る公表権を侵害する行為であると裁判所は判断しています。

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3 原告が被告に対して著作権及び著作者人格権を行使することを妨げる事由はあるか

被告は、原告がP3に本件写真を交付することによりその著作権を放棄したとか、利用許諾の存在、あるいは信義則を主張しましたが、いずれも裁判所は認めていません(17頁以下)。

結論として、差止請求及び廃棄請求の成否については、本件写真の翻案権及び同一性保持権に基づく本件写真の翻案の差止請求、そして、展示権及び公表権に基づく本件写真を翻案して制作される絵画の展示及び譲渡の差止請求は、いずれも認められていません(請求の趣旨第1項に係る請求)。
これに対して、被告は、本件写真の二次的著作物である本件絵画のうち、本件絵画1と4をなお販売未了状態で保管していることから、展示のおそれが認められるとして、展示権及び公表権に基づくその展示及び譲渡の差止請求並びに廃棄請求には理由があると判断しています(請求の趣旨第2項、第3項に係る請求)。

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4 被告は本件写真の著作権及び著作者人格権侵害について故意又は過失があるか

被告は、本件写真がP3の撮影に係る写真ではないことを認識しながら、漫然とこれを受領し、その著作権及び著作者人格権侵害に及ぶ利用の可否について全く調査確認しようとしなかった点に注意義務違反があるとして、本件写真の著作権及び著作者人格権侵害について過失があると裁判所は判断しています(19頁以下)。

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5 原告の受けた損害の額

(1)著作権侵害による逸失利益

本件写真1枚あたり5万円×3枚 合計15万円

(2)著作者人格権侵害による慰謝料

20万円

(3)弁護士費用相当額損害

5万円

以上合計40万円

なお、被告は過失相殺の主張をしましたが、裁判所は認めていません。

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■コメント

報道記事を読むと、原告は日本画家の黒川雅子氏。被告は、日展の元評議員で画家の坂根克介氏となります。
朝日の報道記事にあるように作品は報道各社にも公開されておらず、判決には別紙(写真目録、絵画目録、展覧会目録)がPDFで別途添付されているものの、中身は省略されています。

他人から譲り受けた素材を使って制作するのは、広告分野に限らずどの分野でも同じことで、出所(権利関係)が明らかなもの以外は軽々に使うべきではないところです。

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■参考サイト

「無断で写真から絵画制作は著作権侵害」日本画家の黒川さんが日展元評議員を提訴」
産経WEST 2014.10.31 19:04

「舞妓写真「無断利用は著作権侵害」 画家の黒川さん提訴」
朝日新聞デジタル 須藤龍也 2014年11月1日00時35分


written by ootsukahoumu at 06:56│TrackBack(0)知財判決速報2016 

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