最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

市議会広報誌「いわで議会だより」事件

大阪高裁平成28.5.20平成28(ネ)25損害賠償請求控訴事件PDF

大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 山田知司
裁判官    寺本佳子
裁判官    中尾 彰

*裁判所サイト公表 2016.7.14
*キーワード:広報誌、複製、翻案、同意

原審:和歌山地方裁判所平成26年(ワ)第569号 裁判所サイト未掲載

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■事案

議会だより用に提出した原稿が無断改変されたかどうかが争点となった事案

控訴人(一審原告) :岩出市議会議員
被控訴人(一審被告):岩出市

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法21条、27条、国家賠償法1条1項

1 改変に対する控訴人の同意の有無について
2 本件各編集について

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■事案の概要

『原審における本件は,岩出市議会議員である控訴人が,被控訴人に対し,岩出市議会は,控訴人が市議会広報誌「いわで議会だより」用に提出した原稿を,控訴人に無断で編集して上記広報誌に掲載し,控訴人の著作権を侵害したと主張して,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として,10万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成26年9月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 原審は,控訴人の請求を棄却したところ,同人が,10万円の支払請求を棄却した部分を不服として控訴を申し立てた。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 改変に対する控訴人の同意の有無について

控訴人は、市議会広報誌「いわで議会だより」用の本件原稿の提出に当たって、控訴人の了解なしに編集が加えられることに同意していない旨主張しました(5頁以下)。
この点について、裁判所は、広報委員会の控訴人に対する本件通知文において、文字数等を具体的に指定した上で、「文字数の超過や写真・タイトル等のスペースが確保されていない場合は,委員会で校正をします。(句読点,段落等の構成も含む。)ので,あらかじめご了承ください。」との記載があることを前提に、控訴人は上記記載のある本件通知文を受け取り、それに対して何らの留保も付することなく広報委員会に原稿を提出しているとして、本件通知文において指定された文字数等の範囲に収めるのに必要で、かつ、原稿の記載の趣旨を変更しない範囲においては、広報委員会が提出原稿の校正を行うことにあらかじめ同意したと認めるのが相当であると判断しています。

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2 本件各編集について

控訴人は、本件各編集は本件原稿を違法に改変するものである旨主張しました(6頁以下)。
この点について、裁判所は、本件各編集はいずれも控訴人の同意の範囲内の編集であると認めるのが相当であると判断。本件各編集は本件原稿を違法に改変するものではないと判断しています。

結論として、控訴人(一審原告)の主張は認められていません。

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■コメント

和歌山県岩出市の市議会が発行する議会だよりの原稿編集を巡って、市議会議員と市側とで紛争になっています。
原審同様、原告の主張は認められず、著作権侵害性が否定されています。
市議会での質疑を内容とする簡易な議事録のような発行物の性質上、文字数も制限されており、元原稿はかなり編集が加えられる場面があるかと想像されます。

原告市議は、ブログを書かれておいでで、その記載からしますと、平成26年3月号(第31号)の13頁部分になるかと思います。内容としては、上下水道料金について質問し、上下水道局長と市長が質問に対して答弁をしています。

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■参考サイト

いわで議会だより改ざん・・・・・・著作権侵害|ひろちゃん(尾和弘一)のブログ
議会だより 岩出市
議会だより 岩出市 平成26年3月号(第31号)PDF