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2016年06月14日

「バシッとキメたいそう」楽曲類否事件−著作権 楽曲演奏禁止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「バシッとキメたいそう」楽曲類否事件

東京地裁平成28.5.19平成27(ワ)21850楽曲演奏禁止等請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    萩原孝基
裁判官    中嶋邦人

*裁判所サイト公表 2016.6.9
*キーワード:複製、翻案、依拠性

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■事案

コンペ作品である楽曲の類否が争点となった事案

原告:作曲家
被告:作曲家、音楽制作会社ら

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法21条、27条

1 原告楽曲と被告楽曲の同一性ないし類似性及び依拠性

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■事案の概要

『本件は,別紙楽譜目録記載2の楽曲(以下「原告楽曲」という。)の著作者である原告が,被告Y,被告Z及び被告SMEが原告楽曲に依拠してこれに類似した被告楽曲を創作し,被告TSCがこれを番組内で放送し,被告SMDがこれを収録したDVDその他の物を販売したことが原告の著作権(複製権又は編曲権)及び著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)を侵害していると主張して,被告らに対し,(1)著作権法112条に基づき被告楽曲の演奏,複製等及びこれを録音又は録画したCD,DVDその他の物の複製等の禁止を求めるとともに,(2)民法709条,著作権法114条2項に基づき,損害賠償金(被告Y,被告Z及び被告SMEに対し9000万円,被告TSCに対し7000万円,被告SMDに対し6000万円)及びこれに対する不法行為の後である訴状送達日の翌日(被告Yにつき平成27年9月3日,その余の被告につき同月2日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 原告楽曲と被告楽曲の同一性ないし類似性及び依拠性

【応募条件】
テレビ番組「しまじろうのわお」内で放送予定のダンスコーナーで使用される楽曲として、
(1)子供向け番組であるが、「子供が真似したがる繰り返し感」と「大人が引っかかる耳に残るメロとアレンジ」を両立したダンス曲とすること
(2)沖縄民謡、レゲエ及びハワイアンの要素をミックスし、指定された部分(第4フレーズの後)に4拍程度の間を置くこと
(3)曲全体の長さが89秒であること
(4)指定された歌詞に合わせること
(5)従前の曲より低年齢の子供でもダンスができる感じとすること
(6)ボーカルは男性であるが、歌詞の一部(第4フレーズ)は沖縄のお囃子風の女性の歌唱を想定していること

原告楽曲及び被告楽曲は、いずれもこの募集条件に合致するように作曲されました。
そして、裁判所は、原告の別紙楽譜目録記載の原告楽曲及び被告楽曲の各楽譜について検討を加えています
(7頁以下)。

(ア)いずれも同一の歌詞に曲を付したものであること
(イ)歌詞の各音(53音)の相違点
(ウ)旋律の相違点
(エ)1分当たりの拍子数は原告楽曲が約142.77、被告楽曲が約142.93であり、両楽曲のテンポはほぼ同一
(オ)いずれも募集条件に合致するように作曲された

といった諸点を前提に、

・原告楽曲と被告楽曲の旋律(ウ)は、旋律の上昇及び下降など多くの部分が相違しており、一部に共通する箇所があるものの相違部分に比べればわずかなものであって、被告楽曲において原告楽曲の表現上の特徴を直接感得することができるとは認め難い。
・両楽曲は、全体の構成(ア)、歌詞の各音に対応する音符の長さ(イ)及びテンポ(エ)がほぼ同一であり、沖縄民謡風のフレーズを含む点で共通するが、これらは募集条件により歌詞、曲調、長さ、使用目的等が指定されており(オ)、作曲に当たってこれに従ったことによるものと認められる。

以上の点から、こうした部分の同一性ないし類似性から被告楽曲が原告楽曲の複製又は翻案に当たると評価することはできないと判断しています。

なお、依拠性についても、念のため、検討が加えられていますが(11頁)、否定されています。

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■コメント

被告楽曲は、沖縄民謡風の「しまじろうのわお!」ダンスコーナー曲「バシッとキメたいそう」(作詞:平林 勇 作曲:MINE−CHANG 出版者:ソニー・ミュージックパブリッシング ジャスラック信託管理)かと思われます。

作曲のコンペがあって、指定条件(仮の題目、曲調、アレンジ方法、曲の長さ、歌詞その他の条件が付されていたものの、本質的な旋律及びハーモニーの進行についての具体的な指示は無し)の下で歌詞に曲を付けるということで作曲し提供したら、落選したが、当選作品が自分の作品に似ているのではないか、と疑義が生じた事案です。
選定後、他の落選作品をどの程度参考にして製品としての作品へと作り込まれたか、そのあたりの経緯は不明ですが、応募条件の指定が細かい場合、似通った作品が集まる可能性はありそうです。

さて、楽譜が別紙1に掲載されていますが、わたしは、楽譜が読めないため、楽譜が読めるかたに意見を伺ってみました。
ピアノが趣味なかたは、弾いてみて、最後の一節の処理などを踏まえ、クロとのご意見。

また、顧問先事務所所属のアーティスト秦万里子さん(シンガーソングライター)にも伺ってみました。秦さんは、即興も得意なアーティストさんです。
秦万里子オフィシャルサイト

以下、秦さんから許諾を得て、秦さんのご意見の一部を転載させて頂きました。

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おもしろいですね。
これはとても興味がわきました。

まず結論から云いますと、似てない、、という判断をすると思います。
何故か?

1)この条件を出されたら、音楽家としては、、、

きめたいきめたい きめたいそう というリズム、自然に頭に浮かぶリズムです。


き、き、きめたい、きめたいそう
きめきめ、きめきめ きめたいそう
きめたいそ、そ、きめたいそう
きめたいそうそう、きめたいそう

なども浮かびますが、この案件の「きめたい、きめたい きめたいそう」というリズムは、お子様ランチの様な、だれもがおもいつくパターンであるということで、全く予想できる「類似」です。

お子様ランチに スパゲティとハンバーグとオムライスとプリンがのっていても、だれも盗作だと云わない、、って感じでしょうか。。。

2)メロディは、パッと見ると上記にご説明したリズムパターンが使用されている為に、似ていますが、音楽的作りが全く違います。私は原告の方が数段優れていると思います。だからこそ、この原告は怒ったと思います。なんじゃこりゃ、、、というのが被告の作品。このコード進行も沖縄風も、まあ、言ってみれば「アバンギャルド」といいますか、音楽的ではない。

ですが、この世の中、音楽的である事が採用される条件ではないのでね。その辺は原告側の方が、シンプルではありますが、音楽的には高い。

原告の沖縄風は、それがとても生かされている。被告の物は、とってつけた、、にわか勉強したな、こいつ、、、という感じですね。

(途中、略)

訴えた方の方が音楽的に上なのに、コンペで落ちた。。。皮肉ですね。
明日は我が身、おそろしい。

(途中、略)

(過去、条件を付された委嘱楽曲の制作について、「なんの曲にも似てないんだよ、だからダメなんだ」とダメ出しをもらった経験を踏まえ)
はあ???でありますが、これが一般人、しかも一回しか耳にしないであろう曲の場合、そうして欲しいという気持ちも(音楽脳はそういうものです)わからないではない。

要は、何かににていると覚え易いのですね。オリジナリティに富んでいると覚え難い。

(途中、略)

そして周りに迎合しなかったスティーブジョブズを、尊敬するのであります。

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「良い作品」と「売れる作品」は、かならずしも一致しないという現実。
考えさせられました。

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■参考判例

どこまでも行こう/記念樹事件
東京高裁平成14年9月6日平成12(ネ)1516各損害賠償請求本訴、著作権確認請求反訴控訴事件
控訴審判決文PDF
別紙1
written by ootsukahoumu at 06:16│TrackBack(0)知財判決速報2016 

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