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2016年05月24日

ソーシャルアプリゲーム「神獄のヴァルハラゲート」事件−著作権 収益金配分請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ソーシャルアプリゲーム「神獄のヴァルハラゲート」事件

東京地裁平成28.2.25平成25(ワ)21900収益金配分請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    矢口俊哉
裁判官    宇野遥子

*裁判所サイト公表 2016.5.17
*キーワード:ゲーム、職務著作、黙示の合意、映画の著作物、映画製作者

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■事案

ソーシャルゲームアプリ開発に関して職務著作性などが争点となった事案

原告:被告の元取締役
被告:ソーシャルアプリ企画開発会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法15条、2条3項、2条1項10号、29条1項

1 本件ゲームは被告における職務著作であるか
2 本件ゲームは「映画の著作物」に当たり、その著作権は被告に帰属するか
3 原被告間で本件ゲーム製作に関する報酬合意がされたか

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■事案の概要

『本件は,「神獄のヴァルハラゲート」との名称のソーシャルアプリケーションゲーム(以下「本件ゲーム」という。)の開発に関与した原告が,本件ゲームをインターネット上で配信する被告に対し,(1)主位的に,原告は本件ゲームの共同著作者の1人であって,同ゲームの著作権を共有するから,同ゲームから発生した収益の少なくとも6割に相当する金員の支払を受ける権利がある旨,(2)予備的に,仮に原告が本件ゲームの共同著作者の1人でないとしても,原被告間において報酬に関する合意があり,仮に同合意がないとしても,原告には商法512条に基づき報酬を受ける権利がある旨主張して,著作権に基づく収益金配分請求権(主位的請求)ないし報酬合意等による報酬請求権(予備的請求)に基づき,本件ゲームの配信開始から平成25年7月末日までに被告が本件ゲームにより得た利益の6割相当額とされる1億1294万1261円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成25年9月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合(主位的請求)又は商事法定利率年6分の割合(予備的請求)による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁)

<経緯>

H24.07 原告がGLOOPS社退社
     現被告代表者らもGLOOPS社退社
H24.09 被告設立。原告が発起人の1人
H24.10 原告が被告に貸付
H24.12 本件ゲーム完成
H25.01 原告が被告の取締役に就任
     本件ゲームをグリーで配信
H25.03 原告が役員報酬として合計63万円受領       

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■判決内容

<争点>

1 本件ゲームは被告における職務著作であるか

原告が主張する著作権に基づく収益金配分請求について、まず、本件ゲームの職務著作性(著作権法15条1項)に関して、裁判所は各要件を検討しています(20頁以下)。

(1)法人等の発意に基づくこと

現被告代表者Bは、原告がGLOOPS社に在籍中から本件ゲームを新会社等において製作予定であることを告げて原告に対して本件ゲーム開発への参加を勧誘したこと、原告もBの勧誘があったためにGLOOPS社を退社して本件ゲーム開発に関与したことを認めていること、その後も被告において本件ゲーム開発が行われ被告名義で本件ゲームが配信されたこと等から、本件において実質的にはBが代表取締役を務める被告の発意に基づいて本件ゲーム開発が行われたものと認められると裁判所は判断しています。

(2)法人等の業務に従事する者が職務上作成したこと

裁判所は、「法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに,法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり,法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを,業務態様,指揮監督の有無,対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して判断すべきである」として、RGBアドベンチャー事件(最高裁平成15年4月11日第二小法廷判決)に言及。
その上で、原告は本件ゲーム開発期間中は被告に雇用されておらず、被告の取締役の地位にもなかったものの、被告においてタイムカードで勤怠管理をされ、被告のオフィス内で被告の備品を用い、Bの指示に基本的に従って本件ゲーム開発を行い、労務を提供するという実態にあったと認定。
被告から報酬を受領していなかった期間があるものの、取締役としての報酬には本件ゲーム開発に係る報酬の後払い的な性質を含むことも考慮した上で、要件(2)を充足すると判断しています。

(3)法人等が自己の著作名義の下に公表すること

本件ゲームは被告名義でインターネット上で配信されたものであり、要件(3)を充足すると裁判所は判断しています。

(4)作成時における契約、勤務規則その他に別段の定めがないこと

原被告間で本件ゲームの著作権の帰属に関して特段の合意があったとは認められないと裁判所は判断しています。

結論として、本件ゲームの被告における職務著作の成立が認められています。

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2 本件ゲームは「映画の著作物」に当たり、その著作権は被告に帰属するか

次に、原告の主位的請求に関して、「念のため,仮に職務著作の点を措いて」として、本件ゲームの「映画の著作物」該当性等についても検討が加えられています。
被告は本件ゲームは「映画の著作物」としての取扱いから、著作権は原告に帰属しないと主張しました。

この点について、裁判所は、本件ゲームは「映画の著作物」に該当すること、被告が映画製作者に該当し、また、原告は本件ゲームの製作に参加することを約束していると判断(2条3項、2条1項10号、29条1項)。仮に原告が映画の著作物である本件ゲームの著作者であるとしても、その著作権は被告に帰属すると判断しています(22頁以下)。

結論として、本件ゲームは職務著作あるいは「映画の著作物」に該当するため、原告は本件ゲームの著作権を有していないことから、原告の主位的請求は理由がないと判断されています。

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3 原被告間で本件ゲーム製作に関する報酬合意がされたか

(1)合意の有無

予備的請求に関して、裁判所は、原被告間において原告が本件ゲーム開発に従事することの対価に関する黙示の合意があったものと認めるのが合理的であると判断しています(28頁以下)。

(2)合意の内容

本件ゲームの開発について、ボーナス300万円及び開発が行われた期間につき月額30万円の報酬を支払う旨の黙示の合意が成立したものと認めるのが相当であると裁判所は判断しています。

結論として、ボーナス300万及び4カ月分の報酬120万円の合計420万円が支払額として認定されています。

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■コメント

ソーシャルアプリゲームを開発する同志が退社後、新たに会社を立ち上げてゲームを開発、販売したものの、仲違いがあって紛争に至ったという事案です。
問題となったゲーム「神獄のヴァルハラゲート」は、「GREE Platform Award 〜The first half of 2013〜」で総合大賞を受賞するなど、評価の高いゲームであったようです(被告会社沿革参照)。
原告が被告設立時に出資した額(8株8万円)との株価の差額8256万2101円ものキャピタルゲインが原告に生じているということで(12頁参照)、本件ゲームがヒット作品であったことが伺えます。

なお、原被告らが退職した会社が、被告らに対して営業秘密漏洩(不正競争防止法事件)等で民事提訴していました。
訴訟の提起に関するお知らせ(2013年6月12日 株式会社gloops プレスリリース)
この件については、和解が成立しています。
訴訟の和解に関するお知らせ(2014年5月27日 株式会社グラニ プレスリリース)

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■参考判例

最高裁平成15年4月11日平成13(受)216著作権使用差止請求事件
RGBアドベンチャー事件

【裁判要旨】
「いわゆる観光ビザにより我が国に滞在した外国人であるデザイナー甲が,アニメーション等の企画,撮影等を業とする株式会社乙の従業員宅に居住し,その事務所で作業を行い,乙から毎月基本給名目で一定額の金銭の支払を受けて給料支払明細書も受領し,乙の企画したアニメーション等に使用するものとして図画を作成したなど判示の事実関係の下においては,甲がした作業について乙が指揮監督をしていたかどうかを確定することなく,甲の在留資格の種別,雇用契約書の存否等の形式的な事由を主たる根拠として,甲と乙との間の雇用関係の存在を否定し,甲が著作権法15条1項にいう「法人等の業務に従事する者」に当たらないとした原審の判断には,違法がある。」

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■追記(2016.09.13)

「神獄のヴァルハラゲート」文書提出命令申立事件
知財高裁平成28.8.8平成28(ウ)10038文書提出命令申立事件
決定PDF
2016年9月13日公開
written by ootsukahoumu at 06:42│TrackBack(0)知財判決速報2016 

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