最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

字幕制作ソフト事件(控訴審)

知財高裁平成28.3.23平成27(ネ)10102損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官    中村 恭
裁判官    中武由紀

*裁判所サイト公表 2016.3.31
*キーワード:プログラム著作物、著作物性、退職従業員、複製、翻案

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■事案

退職従業員による字幕制作用ソフトウェアの複製、翻案が争点となった事案の控訴審

控訴人(一審原告) :字幕システム開発会社
被控訴人(一審被告):字幕制作ソフト開発会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、10号の2、21条、27条

1 Template.mdbの創作性
2 被控訴人プログラムは控訴人プログラムを複製又は翻案したものであるか

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人が製造,販売する「Babel」という名称の字幕制作用ソフトウェア(被控訴人プログラム)が,控訴人が製造,販売する「SST G1」という名称の字幕制作用ソフトウェア(控訴人プログラム)の複製又は翻案であるとして,(1)著作権(複製権,翻案権又は譲渡権)に基づき,被控訴人プログラムの複製等の差止め及び被控訴人プログラムの廃棄を求めるとともに,(2)不法行為に基づき,平成25年2月1日から同年8月9日までの損害賠償金4844万1393円(著作権法114条1項適用,平成26年3月5日付けで請求拡張)及びこれに対する不法行為後である訴状送達日の翌日(平成25年7月20日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』

『原判決は,本件プログラム(平成25年4月15日にリリースされた被控訴人プログラムのバージョン2.0.0.11)の動作が控訴人プログラムの複製・翻案であるとする特徴を示すものとはいえず,そのほか被控訴人プログラムを控訴人プログラムの複製・翻案とする根拠も認められないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
 控訴人は,これを不服として控訴するとともに,当審において,被控訴人プログラムに含まれる「PlugDtm.dll」という名称のファイルが,控訴人プログラムに含まれる「Template.mdb」という名称のAccess形式のファイル(Template.mdb)を複製したものであるとして(当事者間に争いがない。),Template.mdbの使用等の差止請求を追加した。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 Template.mdbの創作性

控訴人(一審原告)は、控訴審においてAccess形式で作成された一つのファイルであるTemplate.mdbが単独でプログラム著作物又はデータベース著作物として創作性を有し、Template.mdbと控訴人プログラムのその余の部分とは不可分一体である旨主張しました(6頁以下)。
この点について、裁判所は、プログラム著作物の創作性(著作権法2条1項1号、10号の2)の意義について言及した上で、本件に関して、Template.mdbをプログラムとして見た場合、変数やテキストデータが格納されているにすぎず、コンピュータに対する指令の組合せに個性が顕れる余地はほとんどなく、プログラムの著作物としての創作性を想定し難いとして、Template.mdb自体にはプログラムの著作物又はデータベースの著作物としての創作性を認めることはできないと判断しています。

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2 被控訴人プログラムは控訴人プログラムを複製又は翻案したものであるか

控訴人が主張するプログラム上の共通の事象の発生などを踏まえても、被控訴人プログラムが控訴人プログラムにおいて創作性を有する蓋然性の高い部分のコードの全部又は大多数をコピーしたことを推認させる事情とはいえないなどとして、被控訴人プログラムが控訴人プログラムを複製又は翻案したものであるとは認められていません(8頁以下)。

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■コメント

原審同様、原告(控訴人)の主張は認められていません。

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■過去のブログ記事

2015年08月17日
原審記事

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■参考サイト

控訴人プレスリリース(平成28年3月24日)
お客様 各位

被控訴人会社プレスリリース(平成28年3月25日)
ニュースリリース