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2016年03月03日

キッチン製品カタログ事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

キッチン製品カタログ事件

東京地裁平成28.2.16平成26(ワ)22603損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官      藤原典子
裁判官      萩原孝基

*裁判所サイト公表 2016.2.29
*キーワード:製品カタログ、著作物性、編集著作物性、損害論

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■事案

バス、キッチン製品のカタログの無断流用が問題となった事案

原告:米国コーラー社製品日本正規代理店
被告:鉄鋼製造加工関連設備販売会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、12条1項、19条、20条、21条、114条の5

1 原告表現の著作物性
2 損害論

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■事案の概要

『本件は,別紙カタログ目録記載1のカタログ(以下「原告カタログ」という。)の著作権者である原告が,同目録記載3のカタログ(以下「被告カタログ」という。)を被告が作成,配布した行為が原告の著作権(編集著作物である原告カタログ全体並びにこれに掲載された文章及び図表に係る複製権又は翻案権及び譲渡権)並びに著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)の侵害に当たると主張して,被告に対し,民法709条及び著作権法114条2項,3項に基づき,損害賠償金の一部である1000万円及びこれに対する不法行為の後である平成25年11月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』(2頁)

<経緯>

H23.04 原告旧カタログ制作
H25.01 原告カタログ制作
H25.10 被告カタログ制作、発行

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■判決内容

<争点>

1 原告表現の著作物性

被告は、被告カタログの作成に当たり原告カタログを参考にしたことを認めており、また、原告の著作権・著作者人格権侵害の主張に対して原告表現1〜18の著作物性以外の点は具体的に争っていません。

(1)編集物(原告表現1〜3)について

原告カタログは、USカタログの各題号を大分類とした上で日本の住宅事情、生活習慣、原告担当者の経験に基づく米国コーラー社らしさに関する認識その他の事情を考慮してUSカタログにおける中分類の一部を選択した上でこれと異なる順に配列し、各中分類に含まれる製品及び小分類の一部を選択して配列したものであり、ページごとの構成は製品を2列及び5行に配列する構成その他の基本的な構成を決めた上で適宜写真を挿入するなどしてこれを変化させた構成を設けたものと裁判所は認定。
原告カタログに掲載する製品の分類、選択及び配列に作成者の個性が表現されているということができるとして、これら選択及び配列は思想又は感情を創作的に表現したものと認めるのが相当であると裁判所は判断しています(9頁以下)。

その上で、原告表現1〜3と被告表現1〜3を対比すると、被告表現1及び2は小分類名、品番及び製品名の選択配列のうち一部を除き、原告表現1及び2と同一であると認められる。また、被告表現3は、赤枠で囲まれた部分以外は写真や文字のフォント等に一部異なる点があるが、概ね原告表現3に一致している。
そして、被告カタログの作成に当たり被告が原告カタログを参考にしたことを認めていることに照らすと、被告表現1〜3は、原告カタログに依拠して作成されたものであって、上記原告表現1〜3の複製に当たると判断しています。

(2)文章(原告表現4〜12)について

原告表現4:米国コーラー社の歴史の概要とアメリカや日本における顧客、製品の種類等の説明
原告表現5:原告カタログに掲載された製品の素材についての説明
原告表現6〜12:原告カタログに掲載された製品のうち特定のシリーズの特徴を紹介

これらについて、裁判所は、いずれもその言葉の選択及び表現方法に工夫がみられるとして、これらの各表現は作成者の思想又は感情を創作的に表現したものと判断。
原告表現4〜12と被告表現4〜12を対比すると、被告表現4は原告表現4と大きく異なるが、被告表現5〜12はわずかに別紙言語表現対比目録の下線部が異なるほかは、いずれも原告表現5〜12と同一であるとして、被告表現5〜12は原告表現5〜12の複製に当たると判断しています。

(3)図表(原告表現13〜18)について

品番の読み方などを説明する頁等について、結論として、被告表現13、17及び18は、原告表現13、17及び18の複製に当たると判断しています。

以上から、被告表現1〜3、5〜13、17及び18を含む被告カタログを作成した行為は、原告表現1〜3(一部を除く)、5〜13、17及び18に係る原告の複製権の侵害に当たり、被告カタログを配布した行為は譲渡権の侵害に当たると裁判所は判断。
また、その一部を改変した点において原告の同一性保持権を、さらに、被告カタログに原告の名称を表示しなかった点において氏名表示権を侵害すると裁判所は判断しています。

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2 損害論

(1)著作権侵害に基づく損害

原告カタログ及び被告カタログはいずれも顧客に無償で配布されるもので、そのような製品カタログの使用料等を算定する基準が明らかでないことから、損害額を立証するために必要な事実を立証することはその性質上極めて困難であるとして、裁判所は著作権法114条の5に基づき相当な損害額を検討しています(12頁以下)。

原告は無償配布する原告カタログの作成費用を2年間の営業活動により回収することを企図していたが、被告カタログの配布期間中これを妨げられたこと、被告カタログの作成部数及び原価(1冊当たり約927円)などを勘案して、原告の損害額は120万円と認定されています。

(2)著作者人格権侵害に基づく損害

氏名表示権及び同一性保持権の侵害によって生じた損害の額は、それぞれ15万円(合計30万円)と認定されています。

(3)弁護士費用相当損害

弁護士費用のうち30万円が損害として認定されています。

以上の合計として180万円が認定されています。

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■コメント

米国コーラー社の浴室、トイレ、キッチン回りの製品の日本正規販売代理店が制作したカタログをほかの国内販売代理店が無断流用した事案です。

原告カタログ THE BOLD LOOK OF KOHLER 2013−2014

2013年1月発行の電子カタログを見ますと、総108頁のカタログでビジュアルが中心のものです。
米国版カタログや侵害部分対照表の具体的な内容が添付されていないため、正確な対比部分が分かりませんが、製品カタログの構成や説明文章、図表などについて編集著作物性や著作物性が検討されている点で参考になる事案です。
たとえば、電子カタログ6頁が、原告表現13(図表1)に当たる部分と思われますが、こうしたレイアウトはありふれているともいえ、著作物性の判断としては微妙なところです。

written by ootsukahoumu at 07:09│TrackBack(0)知財判決速報2016 

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