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2016年02月29日

学習教材販売ライセンス契約解除事件−著作権 商標権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

学習教材販売ライセンス契約解除事件

大阪地裁平成28.2.8平成26(ワ)6310商標権侵害差止等請求事件PDF
別紙1
別紙2

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 高松宏之
裁判官      田原美奈子
裁判官      大川潤子

*裁判所サイト公表 2016.2.26
*キーワード:解除、信頼関係破壊、権利失効の原則

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■事案

学習教材の販売ライセンス契約の解除の成否などが争点となった事案

原告:教育教材企画制作会社、会社代表者
被告:教材企画制作会社

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法114条2項、商標法38条2項

1 本件許諾契約の解除の成否
2 権利失効の原則の適用の有無
3 損害論

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■事案の概要

『本件は,算数・数学のプリント教材を開発・作成してその著作権を有する原告株式会社システムラーニングインステイテユート(以下「原告会社」という。)と別紙商標権目録記載の商標(以下「原告商標」という。)の商標権者である原告P1が,従前,被告代表者P2との間で,同人に対して学習塾向けに同教材の販売を委託する契約を締結するとともに,同教材を複製し,原告商標と同一又は類似の商標を付して一般家庭に販売することを許諾する内容の契約を締結していたが,P2による債務不履行行為又は信頼関係破壊行為を理由として,P2との間で締結した契約をいずれも解除したことから,これら契約解除後のP2及びP2の事業を承継した被告による同教材の複製販売行為は,原告らの著作権侵害及び商標権侵害に当たると主張して,被告に対し,これら侵害行為の差止め,被告の教材の廃棄等並びに著作権侵害及び商標権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として,上記の解除後である平成16年8月1日から本件訴訟提起日である平成26年7月8日までの間に原告らに生じた831万円の損害賠償金及びこれに対する上記不法行為期間後の平成26年7月31日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金について,連帯債権として支払請求した事案である。』(2頁以下)

<経緯>

S62.09 原告会社とP2が学習塾向け教材販売に関する契約締結
H03    P2が原告らから許諾を受け一般家庭向けに販売開始
H08.02 でき太の会(P2)とアルタック(被告代表者P2)が覚書締結
H11.09 原告代表者が被告に販売禁止を通知
H16.08 被告学習材作成
H25.10 原告らが被告に通知書送付
H26.07 本件訴訟提起

登録商標:1866363「でき太くん Cultivate Ability Now!」

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■判決内容

<争点>

1 本件許諾契約の解除の成否

でき太の会(P2)とアルタック(被告代表者P2)が学習教材の利用に関する覚書を締結したことが、原被告間の原告学習教材に関する許諾契約の解除原因となるかが争点となっています。
この点について、裁判所は、原告学習材の本件塾向け契約及び本件許諾契約では、その継続的契約としての性質上、P2は、原告らに対して原告学習材に化体された原告らの著作権及び商標権を保護すべき信義則上の義務を負うとともに、その保持は、契約の基礎となる信頼関係の中核をなすものと解するべきところ、上記のP2の行為は、原告商標及び原告学習材の使用・改変を無断で許諾して自己の収益を得ようとするものであり、この信義則上の義務に違反するとともに、継続的契約の基礎にある信頼関係を著しく破壊するものというべきであって、それらの契約の無催告による解除原因となると解するのが相当であると判断しています。

そして、原告会社の代表者である原告P1は、平成11年9月8日に送付された通知において、原告会社の承諾なく原告学習材のセット販売及び「自宅学習会」という形での学習材の普及販売を禁止する旨通知しており、「自宅学習会」とは、P2が一般家庭用に被告学習材を販売する際に使用する名称であることからすれば、原告らとしては、P2による信頼関係破壊行為を理由に、本件塾向け契約及び本件許諾契約を解除する意思表示をしたものと認めるのが相当であると裁判所は判断。

本件塾向け契約及び本件許諾契約は、同通知書がP2に到達した平成11年9月8日頃に解除されたと認定しています(10頁以下)。

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2 権利失効の原則の適用の有無

被告は、平成11年9月に原告らとの本件塾向け契約及び一般家庭向けの本件許諾契約が解除されたのだとしても、その後、長期間にわたって原告らが権利行使をしなかったとして、権利失効の原則の適用を主張しました(16頁以下)。

この点について、裁判所は、原告らは平成11年9月に被告に対する本件塾向け契約及び本件許諾契約解除の意思表示をした後、平成16年にP2による著作権及び商標権侵害行為があったことを前提として、本件解決についてP2との間で交渉をしていること、また、原告らは、平成16年10月に交渉が打ち切られた後、平成25年10月に至るまで、9年間にわたって、P2及び被告に対し何らの請求もしなかったものの、従前、原告らがP2の行為を問題視し、それを具体的に指摘しながら交渉を続けていた経緯や、交渉決裂時に原告らにおいてP2の言い分を認めるとか、P2に対して今後何らの請求もしないといった意向を示したような事情が認められないことに照らせば、本件においては、P2及び被告が原告らから本件請求を受けることはないと正当な信頼を有するに至る特段の事情は認められないと判断。
結論として、本件に権利失効の原則の適用を認めていません。

以上から、平成11年9月8日頃以降、P2又は被告が、原告学習材を複製した上で被告標章を付した被告学習材を販売した行為は、原告らの著作権侵害及び商標権侵害となり、また、被告学習材の販売等の差止めに加え、これら教材の廃棄及びホームページ上の被告標章目録記載の標章の削除を命じる必要性も認められると裁判所は判断しています。

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3 損害論

(1)著作権侵害による原告会社の損害について(17頁以下)

・114条2項:144万円(年額/月額12万)×(9年+342日/365日)×0.7(利益率)=1001万6482円

・弁護士費用相当額損害:75万円

(2)商標権侵害による原告P1の損害について

・商標法38条2項:適用否定

・弁護士費用相当額損害:30万円

そして、原告らの請求は、両者併せて831万円及びこれに対する遅延損害金の額の限度で支払を求めるものであることから、結論として、原告会社については808万4725円、原告P1については22万5275円の限度で請求が認容されています。

(計算式)
原告会社の損害
831万円×1076万6482円/(1076万 6482円+30万円)=808万4725円
原告P1の損害
831万円×30万円/(1076万6482円+30万円)=22万5275円

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■コメント

算数・数学の学習教材に関するライセンス契約の消長が争点となった事案となります。
written by ootsukahoumu at 07:21│TrackBack(0)知財判決速報2016 

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