最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「トムとジェリー」格安DVD事件(控訴審)

知財高裁平成28.2.17平成27(ネ)10115著作権侵害差止等請求控訴事件、同附帯控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官      田中芳樹
裁判官      鈴木わかな

*裁判所サイト公表 2016.2.23
*キーワード:共同事業契約、合意、損害論

   --------------------

■事案

保護期間が満了したアニメ映画「トムとジェリー」に日本語吹き替え音声を付したDVDの制作を巡って共同事業契約の成否が争われた事案の控訴審

控訴人兼附帯被控訴人、附帯被控訴人(1審被告ら):記録媒体企画製造販売会社、同社代表取締役
被控訴人兼附帯控訴人(1審原告)        :映像ソフト企画制作会社

   --------------------

■結論

控訴棄却、附帯控訴却下、棄却

   --------------------

■争点

条文 著作権法114条2項

1 共同事業の合意の成否
2 附帯被控訴人に対する請求の可否
3 被控訴人の損害額

   --------------------

■事案の概要

『(1)本件は,被控訴人が,控訴人及び附帯被控訴人は,原判決別紙被告商品目録記載の各DVD商品(以下「控訴人商品」という。)を輸入,複製及び頒布し,被控訴人の著作権(複製権及び譲渡権)を侵害していると主張して,控訴人及び附帯被控訴人に対し,著作権法112条1項に基づき,控訴人商品の輸入,複製及び頒布の差止めを求めるとともに,民法709条に基づき,連帯して,前記著作権侵害に係る著作権法114条2項による損害賠償金405万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成26年3月14日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
(2)原判決は,控訴人による控訴人商品の輸入,複製,頒布行為は,被控訴人の著作権の侵害行為に該当するとして,被控訴人の控訴人に対する請求のうち,控訴人商品の輸入,複製及び頒布の差止めを認めるとともに,15万3000円及びこれに対する遅延損害金の限度で損害賠償金の支払を認め,その余の請求をいずれも棄却した。
 また,原判決は,附帯被控訴人自身が控訴人商品を輸入,複製,頒布した事実はこれを認めるに足りず,控訴人の法人格を否認すべき事情も見当たらないとして,被控訴人の附帯被控訴人に対する請求を,全て棄却した。
(3)控訴人は,原判決を不服として,控訴を提起した。
 被控訴人は,控訴人及び附帯被控訴人に対し,附帯控訴を提起した。』(2頁以下)

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 共同事業の合意の成否

1審原告(被控訴人兼附帯控訴人)は、著作権の保護期間を満了した外国の映画作品である「トムとジェリー」30作品について、日本語音声を収録し直してDVD商品を製作販売していました。1審被告会社(控訴人兼附帯被控訴人)は、1審原告商品と同一の日本語音声が収録されているDVD商品を販売していました。

控訴人は、共同事業合意書に記載された共同事業のうち、本件各作品に係る共同事業の合意が成立しており、控訴人商品の製造、販売は、同合意に基づくものであるとして、控訴人による控訴人商品の輸入、複製、頒布行為は被控訴人の著作権の侵害行為には当たらない旨主張しました。

結論としては、控訴審も原審と同様、被控訴人と控訴人との間において、本件各作品に係る共同事業の合意の成立を認めることはできないと判断しています(14頁以下)。

   --------------------

2 附帯被控訴人に対する請求の可否

本件においては控訴人(1審被告会社)のみが控訴を提起しており、共同訴訟人独立の原則(民訴法39条)によって上記控訴によって被控訴人(1審原告)の控訴人(1審被告会社)に対する請求のみが移審して控訴審の審判対象となっている。
そして、附帯被控訴人(1審被告会社代表)に対する請求が全て棄却された被控訴人(1審原告)は、原判決の送達を受けた平成27年8月28日から2週間の控訴期間が満了するまでの間に控訴を提起しなかったことから、被控訴人(1審原告)の附帯被控訴人(1審被告会社代表)に対する請求は移審せず、前記控訴期間の満了をもって確定したとして、被控訴人(1審原告)の附帯被控訴人(1審被告会社代表)に対する請求は、そもそも控訴審における審判の対象となり得ないものであるとして被控訴人の附帯控訴のうち、附帯被控訴人(1審被告会社代表)に対する部分は不適法であると判断しています(28頁以下)。

   --------------------

3 被控訴人の損害額

本件著作権侵害に係る著作権法114条2項による損害の算定に当たっては、被控訴人において本件著作権侵害によって得た利益の額及び販売数量を立証すべきであるところ、控訴人において自認する控訴人商品1枚当たりの利益額17円及び販売数量合計9000枚という以上の立証はないとして、原審同様、その利益の総額は15万3000円(17円×9000枚)と認定されています(29頁)。

   --------------------

■コメント

控訴審でも原審と同様の結論となっています。

   --------------------

■過去のブログ記事

原審記事(2015年09月15日)
「トムとジェリー」格安DVD事件