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2016年02月01日

カラー版怪獣ウルトラ図鑑復刻版事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

カラー版怪獣ウルトラ図鑑復刻版事件

東京地裁平成28.1.21平成27(ワ)15005著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官      藤原典子
裁判官      萩原孝基

*裁判所サイト公表 2016.1.29
*キーワード:契約、動機の錯誤、氏名表示権

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■事案

復刻版の書籍に掲載されたイラストの許諾の有無などが争点となった事案

原告:イラストレーター
被告:出版社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法19条、民法95条

1 本件書籍発行についての原告の許諾の有無及び原告の許諾についての錯誤の有無
2 本件書籍における氏名表示権侵害の有無

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■事案の概要

『本件は,別紙イラスト目録記載のイラスト(以下「本件イラスト」と総称する。)の著作者であると主張する原告が,被告に対し,被告による本件書籍の複製等が本件イラストに係る原告の著作権(複製権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害すると主張して,著作権法112条に基づき本件書籍の複製の差止め及び廃棄等を,同法114条3項,民法709条に基づき損害賠償金737万円及びこれに対する不法行為の後(訴状送達日の翌日)である平成27年6月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める訴訟である。』(2頁)

<経緯>

S43.05 原書籍刊行
H24.01 被告編集長Bが原告に本件書籍刊行を通知
H24.02 Bが原告に電子メールで許諾を求め、原告がこれを受諾
H24.03 本件書籍刊行
H24.05 被告が原告に復刻使用料1万円を振込
H26.06 原告がBに対して説明要求

原書籍:「写真で見る世界シリーズ カラー版 怪獣ウルトラ図鑑」
本件書籍:「カラー版怪獣ウルトラ図鑑[復刻版]」
本件イラスト:「ウルトラセブンの必殺わざ総まくり」など13点

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■判決内容

<争点>

1 本件書籍発行についての原告の許諾の有無及び原告の許諾についての錯誤の有無

本件書籍発行に関する原告の許諾の有無について、裁判所は、被告会社の編集長Bがイラストの使用料の支払を原告に申し出たのに対して、原告はその振込先を伝えており、さらに、本件書籍の発行を承諾したことをその2年後にも認識していたと認定。原告は遅くとも振込先を伝えた時までに本件書籍の内容とこれに本件イラストが掲載されていることを理解した上で本件書籍の発行を承諾する意思表示をしたものと判断しています(6頁以下)。

また、原告は、仮に許諾があったと認められるとしても、錯誤がある旨主張しました。しかし、裁判所は、本件イラストの掲載に当たり原告名が表示されていないことが分かっていれば許諾をしなかった、という原告の主張は、意思表示の動機に錯誤があった旨の主張と解されるところ、本件の関係各証拠上、動機が表示されていたことは窺われないとして、錯誤に関する原告の主張を認めていません(7頁)。

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2 本件書籍における氏名表示権侵害の有無

原告は、目次の左側に原告名が記載されているものの、イラストごとに著作者名の表示がないとして、イラストの付近に原告名が表示されていないことが氏名表示における公正な慣行に従っておらず、氏名表示権を侵害する旨主張しました(7頁以下)。
しかし、裁判所は、
・本件書籍には、目次のページの「さし絵」欄に原告を含む6名の氏名が列記されているが、本件イラスト及びその他のイラストのいずれについても、イラストが掲載されたページ内又はその付近に当該イラストの作成者の氏名が記載されたものはない。
・本件書籍は、昭和43年5月30日に初版が発行された原書籍をほぼそのまま復刻したものであり、本件書籍におけるイラスト作成者の表示方法は、原書籍におけるものと同一である。

といった点から、本件イラストは、原告以外の者が作成したイラスト及び記述した文書と共に本件書籍の一部を構成するにとどまるのであって、復刻版である本件書籍の元となった原書籍の作成に当たり、その素材として、既に雑誌に発表されていた原告作成のイラストが使用されたものとみることができると認定。
この場合、本件書籍のような複数の者のイラストが掲載されている書籍においては、その作成者の氏名をイラストごとに個別に表示することを省略し、これを特定のページにおいてまとめて表示することが公正な慣行に反するということはできないとして、氏名表示権を侵害することはないと判断しています。

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■コメント

原告は、復刻版刊行後2年してから、原書籍を見た記憶がないとか、原書籍の発行元である株式会社秋田書店の担当者に対して疑問や不満を抱いている旨を伝える電子メールを被告に送信しており、あるいは、原書籍刊行当時の不満が今に至るまで尾を引いたものだったのかもしれません。
written by ootsukahoumu at 07:29│TrackBack(0)知財判決速報2016 

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