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2016年01月08日

MAY J.提供楽曲著作権譲渡契約証書真否確認事件−著作権 証書真否確認等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

MAY J.提供楽曲著作権譲渡契約証書真否確認事件

東京地裁平成27.11.26平成27(ワ)10310証書真否確認等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官      廣瀬達人
裁判官      宇野遥子

*裁判所サイト公表 2016.1.5
*キーワード:音楽、譲渡契約、証書真否確認

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■事案

楽曲の著作権譲渡契約書の真否が争点となった事案

原告:音楽マネジメント会社、同社代表者
被告:音楽制作会社ら

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■結論

請求棄却

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■争点

1 本件契約書の成立の真否

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■事案の概要

『本件は,原告らが,被告らに対し,原告会社とエイベックス・エンタテインメント株式会社(被告ADの旧商号。以下「AEI」という。)との間の2012年(平成24年)12月1日付け著作物譲渡契約書(以下「本件契約書」という。同契約書写しは別添のとおり。)は,被告らの従業員等によって偽造されたものであるなどと主張して,本件契約書の成立の不真正の確認を求めるとともに,被告らの従業員による本件契約書の偽造という不法行為に関する使用者責任を主張して,民法709条,715条1項本文,723条に基づき,原告会社に対する損害賠償金80万9000円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払並びに当該不法行為により棄損された原告らの名誉を回復するための措置としての謝罪広告を求める事案である。』(2頁)

<経緯>

H25.01 原告会社とAEIとの間で本件契約書をやりとり

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■判決内容

<争点>

1 本件契約書の成立の真否

本件契約書は、原告会社がAEIに対して原告会社がその著作権を保有している音楽著作物(著作物名:My Bass、作詞者:May.J、作曲者:Bentley Jones(以下「BJ」という。))(以下「本件楽曲」という。)に係る全ての著作権を代金10万円で期間、地域、範囲の制限無く独占的に譲渡することなどを内容するものでした。
原告らは、本件契約書に係る契約は、本件楽曲の作曲部分(メロディー部分)を10万円で売る内容の契約であったのに、作詞部分も含むかのように本件契約書が偽造された、被告らは、本件楽曲の作詞部分の著作権を取得したことにする必要が生じたために偽造した、などと主張しました。

この点について、裁判所は、仮に原告らの主張するような動機で本件契約書を偽造するのであれば、本件契約書にあるように「作詞者:May.J」と記載するのは不合理であるとして原告の主張を認めていません。
本件契約書は、原告会社に所属する著作者BJにより著作され、原告会社がその著作権を保有している本件楽曲について、原告会社の保有する全ての著作権をAEIに独占的に譲渡するとの内容の契約書であり、本件楽曲の定義部分に「作詞者:May.J」と記載するとかえって本件楽曲の作詞部分の著作権を対象としない契約であると解釈されてしまう可能性があるから、原告らが主張する本件契約書が偽造されたとする動機は不合理なものといわざるを得ないと裁判所は説示しています(6頁以下)。
そのほか、原告らが本件契約書が偽造であることの根拠として主張した諸点についても、裁判所はこれを認めていません。
結論として、本件印影は原告会社印により顕出されたものであると認められ、本件印影ひいては本件契約書の真正な成立が推定され、この推定を覆す特段の事情も認められず本件契約書の真正な成立が認められると判断されています。

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■コメント

問題となった「My Bass」楽曲(アルバム「Brave」収録 2012年12月発売 作詞MAY J. 作曲JONES BENTLEY 出版社エイベックス・ミュージック・パブリッシング 第6出版事業部/エフエムヨコハマ音楽出版株式会社)はJASRACに信託されています。

原告代表者のブログと思われる記事には、訴訟に至る経緯が述べられていて参考になります。
max松浦 vs minimum加藤の紛争記
ブログには契約書の画像が掲載されていますが、この契約書は、2012年12月1日付け全9条からなる契約書で、拝見するかぎり、MAY J.作詞部分を除いたBJ作曲の著作権についての全部譲渡契約と読める内容です。

MAY J.への提供楽曲の作曲料・印税コミコミとっぱらいで10万円というのも安価な印象ですが、ブログ記事には、所属事務所側とのやりとりが掲載されていて、「こちらからは、MayJ様にリリースするCDの帯にコメントなど使用させて頂きたく思います、使用料ですが10万位の予算でお願い出来ればと考えてました」(「ハゲマネからのメール(作曲代金の確定経緯)」(2015-04-25 14:51:03))といった文脈で、原告側からの自社のプロモーションにMAY J.のパブリシティ使用の対価として10万円の金額提示が語られており、MAY J.への楽曲提供実績もろもろ含め、これと作曲部分の著作権譲渡の対価とのバーターの意味合いだったのかな、と思われます。

アーティスト所属事務所、コンテンツ制作会社・音楽出版社、音楽制作会社のどこでお互いにボタンの掛け違いが生じたのか、よく分かりませんが、バーターが不調となれば、現状の管理状況に沿って印税が流れるように契約を再調整していただいて、アーティストさんや楽曲の利用開発を最優先に対応して欲しいところではあります。

written by ootsukahoumu at 06:32│TrackBack(0)知財判決速報2015 

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