最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「甘露の法雨」録音物使用契約事件(控訴審)

知財高裁平成27.4.28平成25(ネ)10109損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 富田善範
裁判官      田中芳樹
裁判官      柵木澄子

*裁判所サイト公表 2015.5.21
*キーワード:著作権譲渡、著作権使用契約、消滅時効、不当利得

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■事案

生長の家創始者故谷口雅春氏の著作物に関する著作権の帰属や録音物使用契約を巡って争われた事案の控訴審

控訴人(一審原告) :公益財団法人
被控訴人(一審被告):財団法人

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■結論

一部変更

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■争点

条文 民法415条、147条

1 控訴人は本件原著作物の著作権を有するか
2 控訴人被控訴人間で本件著作権使用契約が成立したか
3 控訴人被控訴人間で本件カセットテープの複製・頒布に係る許諾契約が成立したか
4 不当利得返還請求権の有無
5 消滅時効の成否(時効中断の成否)
6 時効援用権の喪失又は濫用の有無
7 不法行為による損害賠償請求権の有無
8 弁護士費用相当額の損害

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■事案の概要

『1 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,(1)被控訴人による原判決別紙物件目録第1記載の各カセットテープ(以下「本件カセットテープ」という。)の複製,頒布について,機房膂姪に,著作権使用契約に基づき,昭和61年8月から平成23年10月までの未払印税として合計2098万8000円及び原判決別紙請求金額目録の番号1ないし251の「請求金額」欄記載の各金員に対する約定支払期日の翌日である「遅延損害金始期」欄記載の各年月日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,供僕夙的に,別紙2著作物目録記載の各著作物(以下「本件原著作物」という。)に係る著作権を侵害するものであるとして,著作権法112条に基づき,本件カセットテープの頒布の差止め及びその廃棄を求めるとともに,顱防塰々坩戮砲茲訛山嫁綵請求権に基づき,平成23年10月までに受けた損害として本件カセットテープの印税(定価の10%)相当額2250万円と弁護士費用相当額200万円の合計2450万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年12月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,又は,髻鉾鏐義平佑蝋義平佑忙拱ГΔ戮本件カセットテープの印税の支払をしなかったため,控訴人に平成23年10月までに支払われるべき本件カセットテープの印税(定価の10%)相当額2250万円の損害が生じ,被控訴人は法律上の原因なく同額の利得を得たとして,不当利得返還請求権に基づき,2250万円と弁護士費用相当額200万円の合計2450万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年12月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,併せて,(2)被控訴人による原判決別紙物件目録第2記載のコンパクト・ディスク(以下「本件CD」という。)の販売について,(C)表示が著作権使用契約により定められたものと異なるとして,著作権使用契約に基づき,表示(「Seicho Taniguchi,Emiko Taniguchi,2006」)の削除を求めた事案である。』
『2 原判決は,(1)に関し,本件原著作物に係る著作権はいずれも控訴人に帰属するとした上で,機房膂姪請求については,控訴人と被控訴人との間で著作権使用契約が成立したとは認められないとして,供僕夙的請求については,控訴人は,昭和61年8月頃,本件原著作物の著作者である亡A(以下「亡A」という。)の相続人であるB(以下「B」という。)らに印税に相当する額を支払うことを条件に本件カセットテープの複製・頒布を被控訴人に許諾したものと認められるから,被控訴人による本件カセットテープの複製・頒布は,控訴人の有する本件原著作物に係る著作権を侵害せず,また,被控訴人はBらに印税に相当する額を支払っているから,被控訴人が印税に相当する額を利得したということはできないとして,控訴人の請求をいずれも棄却し,(2)に関し,本件CDの表示は,著作権使用契約に違反するとして,本件CDに表記された「Seicho Taniguchi,Emiko Taniguchi,2006」との表示の削除を求める控訴人の請求をその限度で認容した。
 そこで,原判決を不服として,控訴人が控訴したものであり,当審における審理の対象は,原判決が棄却した上記(1)に関する請求の当否である。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 控訴人は本件原著作物の著作権を有するか

控訴人(一審原告)は、本件原著作物1(「聖経 甘露の法雨」)に係る著作権は、著作権法27条及び28条に規定する権利を含めて亡Aの寄附行為により控訴人に帰属し、本件原著作物2及び3に係る著作権は、同法27条及び28条に規定する権利を含めて、それぞれその初版発行日に亡Aから控訴人への寄附により控訴人に帰属した旨主張しました。
この点について、裁判所は、本件原著作物1に係る著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む。)は、昭和21年1月8日、亡Aから控訴人への譲渡により控訴人に帰属したと認定。
また、本件原著作物2及び3については、亡Aは、寄附行為により「生命の實相」の著作権を控訴人に移転した以外にも、控訴人の社会厚生事業の運営を援助するため、長年にわたり、多数の書籍について、著作権を移転するなどしていたこと、本件原著作物2(「聖経 天使の言葉」)及び3(「聖経 続々甘露の法雨」)は、いずれも本件原著作物1(「聖経 甘露の法雨」)の続編であることなどから、本件原著作物2に係る著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む。)は、本件原著作物2が最初に公表された昭和23年12月10日に、本件原著作物3に係る著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む。)は、本件原著作物3が最初に公表された昭和25年12月20日に、亡Aから控訴人への譲渡によりそれぞれ控訴人に帰属したと認定しています(49頁以下)。

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2 控訴人被控訴人間で本件著作権使用契約が成立したか

控訴人は、被控訴人との間で本件契約書記載の内容の著作権使用契約(本件著作権使用契約)が成立した旨主張しました。
この点について、裁判所は、本件契約書についてはその原本が証拠として提出されていないものの、被控訴人は、控訴人との間で、本件契約書を作成したものと認定。
そして、処分証書である本件契約書については、その成立が認められれば、特段の事情がない限り、これに記載されたとおりの内容の契約が成立したものと認めるべきであるとした上で、本件契約書作成後の控訴人や被控訴人の言動は、いずれも本件著作権使用契約が成立していないことを推認させるものであるとして、本件契約書に記載されたとおりの内容の契約が成立したものとは認められない特段の事情があるというべきであると判断。
結論として、控訴人と被控訴人との間の本件著作権使用契約の成立を否定しています(54頁以下)。

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3 控訴人被控訴人間で本件カセットテープの複製・頒布に係る許諾契約が成立したか

被控訴人は、控訴人と被控訴人との間で、控訴人が被控訴人に対し、本件カセットテープを複製・頒布することを許諾し、その印税については、被控訴人から亡Aないしその相続人らに対して支払うことを内容とする本件許諾契約を明示又は黙示に締結したから、被控訴人による本件カセットテープの複製・頒布行為は、本件原著作物に係る著作権を侵害する行為には該当しない旨主張しました。
この点について、裁判所は、本件許諾契約が明示又は黙示に成立したとの事実を認めることはできず、被控訴人による本件カセットテープの複製・頒布行為は、本件原著作物に係る著作権を有する控訴人の許諾を得ることなく行われたものであり、上記著作権を侵害する行為であると認定。
結論として、控訴人は、被控訴人に対して112条1項に基づいて本件カセットテープの頒布の差止めを求めるとともに、同条2項に基づき、本件カセットテープの廃棄を求めることができると判断しています(59頁以下)。

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4 不当利得返還請求権の有無

控訴人は、被控訴人による本件カセットテープの複製・頒布により、控訴人が、印税相当額(定価の10%)の損失を被る一方、被控訴人は、法律上の原因なく、著作権者に対して支払うべき印税相当額(定価の10%)と同額の利得を得たところ、被控訴人は悪意の受益者に該当する旨主張しました。
この点について、裁判所は、被控訴人は、著作権者から許諾を得ることなく、昭和59年8月頃以降、本件カセットテープを複製・頒布し、これにより、法律上の原因なく、少なくとも、著作権者である控訴人に支払うべき印税に相当する額の利得を得たものと認定。一方、控訴人は、被控訴人が著作権者である控訴人から許諾を得ることなく本件カセットテープを複製・頒布したことにより、印税に相当する額の損失を被ったものと認められると判断。本件カセットテープの複製・頒布につき、著作権者である控訴人に支払われるべき印税額は、その定価の10%に相当する額であると認めるのが相当であると判断しています(62頁以下)。

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5 消滅時効の成否(時効中断の成否)

被控訴人は、平成26年10月29日の本件弁論準備手続期日において、控訴人に対し、不当利得返還請求権のうち、控訴人が本訴を提起した平成23年11月17日の10年前までに発生した請求権(平成13年11月16日以前に発生した請求権)について、消滅時効を援用する旨の意思表示をしました。これに対し、控訴人は、被控訴人の債務承認により消滅時効が中断した旨主張しましたが、裁判所は、控訴人の時効の中断に係る主張はいずれも理由がないと判断しています(64頁以下)。

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6 時効援用権の喪失又は濫用の有無

控訴人は、被控訴人が消滅時効期間の経過後に債務承認をしたことにより時効援用権を喪失した旨主張しましたが、被控訴人が、控訴人の主張する債務承認をしたとの事実を認めることはできないとして、裁判所は、控訴人の主張を認めていません。
また、控訴人は、被控訴人には、控訴人に対して、被控訴人が本件カセットテープに係る印税債務の存在を認めているものと確信させる行為があったから、被控訴人による消滅時効の援用は権利濫用にわたるものとして許されない旨主張しました。
しかし、この点についても裁判所は、被控訴人が、「本件カセットテープに係る印税債務の存在を認めていることを控訴人に確信させる行為」を行ったなどとはいえず、他に、被控訴人による消滅時効の援用が権利濫用にわたるものであるとすべき事情があるともいえないと判断。控訴人のこの点の主張を認めていません(67頁以下)。

結論として、控訴人の不当利得返還請求権のうち、平成13年11月16日以前に発生した請求権は、時効により消滅したものと認められ、控訴人は、被控訴人に対し、平成13年11月17日以降の本件カセットテープの複製・頒布について、その定価の10%に相当する額(1810円×1万9600本×10% 合計354万7600円)の不当利得返還請求権を有すると判断されています。

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7 不法行為による損害賠償請求権の有無

(1)著作権侵害につき被控訴人の故意又は過失の有無

被控訴人は、本件カセットテープの複製・頒布について悪意の受益者に該当するとして、被控訴人には本件原著作物に係る著作権を侵害したことについて過失があると認められています(68頁以下)。

(2)消滅時効の成否について

被控訴人は、不法行為に基づく損害賠償請求権のうち、控訴人が本訴を提起した平成23年11月17日の3年前までに発生した請求権について、消滅時効期間である3年が経過したとして消滅時効を援用する旨の意思表示をしており、結論として消滅時効の成立が認められています(68頁以下)。

(3)損害の発生及びその額

控訴人の不法行為による損害賠償請求権のうち、平成20年11月16日以前に発生した請求権は、時効により消滅したものと認められるとして、控訴人は、被控訴人に対して同月17日以降の本件カセットテープの複製・頒布について、その定価の10%に相当する額(7万2400円)の損害賠償請求権を有すると判断されています(なお、これについては不当利得返還請求権と競合)(69頁)。

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8 弁護士費用相当額の損害

著作権侵害を理由とする本件カセットテープの頒布の差止め及び廃棄請求が理由のあるものであること、不法行為による損害賠償請求のうち理由のある額、その他本件に顕れた一切の事情を総合すると、被控訴人の著作権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額は、20万円と認めるのが相当であると認定されています(69頁)。

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■コメント

原審では、控訴人は、印税に相当する額を支払うことを条件に本件カセットテープの複製、頒布を被控訴人に許諾したと認定され、被控訴人による本件カセットテープの複製、頒布は、控訴人の本件原著作物の著作権を侵害しないと判断、不当利得の成立も否定されていました。
これに対して、控訴審では、黙示の許諾契約の成否について詳細に検討し、黙示的にも許諾契約は成立せず、無許諾の複製・頒布行為であるとして著作権侵害性を認め、不当利得及び不法行為に基づく損害賠償請求を肯定しています。

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■過去のブログ記事

2013年12月09日記事
「甘露の法雨」録音物使用契約事件(原審)