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2015年04月06日

「生命の實相」収録論文事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「生命の實相」収録論文事件

東京地裁平成27.3.12平成25(ワ)28342著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官      清野正彦
裁判官      高橋 彩

*裁判所サイト公表 2015.4.2
*キーワード:出版許諾、信頼関係破壊、権利濫用、出版権

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■事案

聖典「生命の實相」等に関連する出版許諾契約関係の解消にあたって信頼関係が破壊されているかどうかなどが争点となった事案

原告:公益財団法人、出版社
被告:宗教法人、出版社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 民法540条、1条3項

1 本件著作物1の構成素材である論文の著作権の帰属
2 被告書籍1の出版に関する許諾の終了
3 被告書籍2に関する本件覚書に係る合意の終了
4 原告光明思想社の出版権の有無
5 原告光明思想社による出版権行使についての権利の濫用等の成否
6 損害額

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■事案の概要

『本件は,原告らが,別紙著作物目録記載の言語の著作物(以下,それぞれを「本件著作物1」,「本件著作物2」といい,「本件各著作物」と総称する。)につき原告公益財団法人生長の家社会事業団(以下「原告事業団」という。)が著作権を,原告光明思想社が出版権を有し,被告教文社による被告書籍1の出版及び被告生長の家による同目録記載2の書籍(以下「被告書籍2」という。)の出版はそれぞれ本件各著作物に係る原告らの著作権(複製権,譲渡権)及び出版権を侵害すると主張して,被告らに対し,原告事業団は著作権に基づく複製,頒布の差止め等を,原告光明思想社は出版権に基づく複製の差止めを求めるとともに,原告らそれぞれに対する不法行為に基づく損害賠償金(弁護士費用相当額)及び不法行為の後の日である被告教文社につき平成25年11月23日から,被告生長の家につき同月25日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』(3頁)

<経緯>

S07 本件著作物1刊行
S11 本件著作物2出版
S21 原告事業団設立
S34 原告事業団と被告宗教法人が本件著作物2覚書締結
S41 被告出版社が被告書籍1出版
S49 原告事業団と被告出版社が出版契約締結
S63 原告事業団と被告出版社が出版契約締結
H19 原告事業団がS63年契約不更新の意思表示
H21 原告事業団がS49年契約解約の意思表示
H21 原告事業団が別件訴訟1第1事件提訴
H24 原告事業団が本件著作物2覚書終了通知
H25 被告出版社が別件訴訟2提起

本件著作物1:「生命の實相」
本件著作物2:「聖経 甘露の法雨」
被告書籍1:「生命の教育」
被告書籍2:「聖経 甘露の法雨」

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■判決内容

<争点>

1 本件著作物1の構成素材である論文の著作権の帰属

被告出版社は、本件著作物1は亡Aが自己が著作権を有する著作物である論文を素材として選択し、配列した編集著作物であるとして、原告事業団設立にあたっての本件寄附行為は本件著作物1の編集著作権のみを移転するものであって、構成素材である論文の著作権は原告事業団に移転していないと主張しました(13頁以下)。
本件著作物1の構成素材である論文の著作権の帰属について、裁判所は、原告事業団の設立当時の寄附行為には財団に帰属する財産として「『生命の實相』等の著作権」と記載され、本件著作物1の編集著作権に限定する記載はないなどとして、本件寄附行為による移転の対象である「生命の實相」の著作権には本件著作物1の構成素材である論文の著作権が含まれると判断。
原告事業団は、本件寄附行為により構成素材である論文の著作権を含む本件著作物1の著作権を取得したと認定されています。

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2 被告書籍1の出版に関する許諾の終了

被告書籍1は、「生命の實相〈頭注版〉」(全40巻)の第14巻、第25巻及び第30巻に収録された論文のうち一部の論文を抜き出して1冊にまとめたものでしたが、被告出版社は、被告書籍1は本件著作物1の構成素材である論文の著作権者である亡Aが、生命の教育の理念に基づいて論文を選択して配列した編集著作物であって、亡Aが月刊誌に発表した論文に依拠しているものであるとして、被告書籍1の出版について原告事業団の許諾は不要である旨主張しました(16頁以下)。
この点について、裁判所は、原告事業団は被告書籍1の初版の出版の頃までに被告出版社に対して被告書籍1の出版について本件著作物1に含まれる論文を使用することを少なくとも黙示的に許諾したものと認定。また、本件許諾は無償かつ期間の定めのないものであったと判断しています。
その上で、被告書籍1の出版に至る経緯等に照らせば、原告事業団が本件許諾を解約するためには両者間の信頼関係が破壊されたことなど正当な理由が必要であると解されるところ、別件訴訟1や2、未払印税の時効消滅といった点から本件訴訟の提起までの間に原告事業団と被告出版社の間の信頼関係は破壊されたものと判断。本件許諾は、原告事業団の解約により平成26年7月24日に終了したものと認定されています。

以上から、被告書籍1の出版は原告事業団の著作権(複製権、譲渡権)を侵害するものであるとして、原告事業団の被告出版社に対する差止め及び廃棄請求が認められています。

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3 被告書籍2に関する本件覚書に係る合意の終了

被告出版社は、本件覚書に係る合意は、肌守り用等として被告書籍2を頒布するという宗教上の意義を有する行為について、原告事業団が本件著作物2の著作権を行使しないことを期間を限ることなく約束するという永久的な権利不行使の合意であって、解約することは許されないと主張しました(20頁以下)。
この点について、裁判所は、本件覚書には著作権者である原告事業団が被告宗教法人による本件著作物2の複製及び交付に同意する旨が記載され、期間及び対価の定めはないことから、本件覚書に係る合意は、原告事業団が被告宗教法人に対して本件著作物2を一定の条件の下で複製し、頒布することを期間の定めなく無償で許諾したものであると判断。
その上で、本件覚書は、財団法人である原告事業団と被告宗教法人の間の伝道のための宗教的な協力関係の下に被告宗教法人が肌守り用等として本件著作物2の複製物を信徒に頒布するため作成されたものであることから、本件覚書に係る合意を解約するには当事者間の信頼関係が破壊されたことなど正当な理由が必要であると説示。
そして、被告宗教法人が別件訴訟1第2事件を提起したこと等を踏まえ、原告事業団と被告宗教法人の間の信頼関係は破壊されたものというべきであり、原告事業団の解約には正当な理由があるものと認められると判断しています。

以上から、本件覚書に係る合意は本件解約通知によって終了したと判断。被告書籍2の出版は原告事業団の著作権(複製権、譲渡権)を侵害するものであるとして、原告事業団の被告宗教法人に対する差止請求が認められています。

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4 原告光明思想社の出版権の有無

裁判所は、被告書籍1は本件著作物1とは別個の編集著作物であって原告事業団は被告書籍1の編集著作権を取得していないとして、原告事業団は被告書籍1についての出版権を設定する権原がないと判断。原告出版社が出版権を取得したとは認められない以上、原告出版社の被告出版社に対する各請求は認められないと判断しています(24頁)。
これに対して、被告出版社による被告書籍2の出版は、本件著作物2に係る原告出版社の書籍「御守護 甘露の法雨」と被告書籍2がほぼ同一内容であり、原告出版社の出版権を侵害するものと認められています。

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5 原告光明思想社による出版権行使についての権利の濫用等の成否

被告出版社は、原告出版社は背信的悪意者であって原告出版社の各出版権は被告らに対抗できるものではないとして原告出版社が被告らに対して出版権を行使することは権利の濫用に当たり、また、信義誠実の原則にも反し許されないと主張しました(24頁以下)。
この点について、裁判所は、原告出版社は本件覚書に係る合意の解約後の第三者であり、原告出版社代表者の認識を問わず原告光明思想社が背信的悪意者には当たらないことは明らかであること、また、代表者が被告宗教法人に対する害意をもって出版権の設定を受けたことなど原告出版社の出版権の行使が、権利の濫用や信義則違反に当たると解すべき事情は認められないと判断。

以上から、原告出版社の被告宗教法人に対する差止請求が認められています。

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6 損害額

弁護士費用相当額の損害として原告それぞれに20万円が認定されています(25頁以下)。

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■コメント

宗教法人の聖典である「生命の實相」と聖経「甘露の法雨」を巡る紛争で、大きく分けると3つめの裁判となります。
「生命の實相」については、収録されている単体の論文の取り扱いが争点となっています。また、永年に亘る出版許諾契約関係の解消にあたって信頼関係が破壊されているとの判断がされています。

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■過去のブログ記事

・知財高裁平成26.10.15平成26(ネ)10026著作物利用権確認請求控訴事件
2014年11月04日記事 「生命の實相」著作物利用権確認請求事件(控訴審)

・知財高裁平成24.1.31平成23(ネ)10028損害賠償等、著作権侵害差止等、出版権確認等請求控訴事件
2012年02月17日記事 「生命の實相」書籍著作権事件(控訴審)
(平成25年5月27日に上告棄却兼不受理決定、確定)
written by ootsukahoumu at 08:04│TrackBack(0)知財判決速報2015 

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