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2015年04月03日

英会話教材広告キャッチフレーズ事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

英会話教材広告キャッチフレーズ事件

東京地裁平成27.3.20平成26(ワ)21237著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官      鈴木千帆
裁判官      西村康夫

*裁判所サイト公表 2015.3.31
*キーワード:キャッチコピー、著作物性、商品等表示性、一般不法行為論

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■事案

英会話教材の広告に利用されたキャッチコピーの著作物性が争点となった事案

原告:外国語教材企画開発販売会社
被告:Webシステム、ECサイト企画制作会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、不正競争防止法2条1項1号、民法709条

1 著作権侵害の成否
2 不正競争の成否
3 一般不法行為の成否

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告による別紙被告キャッチフレーズ目録記載1ないし4の各キャッチフレーズ(以下,番号に従って「被告キャッチフレーズ1」ないし「被告キャッチフレーズ4」といい,併せて「被告キャッチフレーズ」という。)の複製,公衆送信,複製物の頒布は,別紙原告キャッチフレーズ目録記載1ないし3の各キャッチフレーズ(以下,番号に従って「原告キャッチフレーズ1」ないし「原告キャッチフレーズ3」といい,併せて「原告キャッチフレーズ」という。)の著作権侵害(なお,原告は,侵害に係る支分権を明らかにしていない。)又は不正競争を構成すると主張して,被告に対し,被告キャッチフレーズの複製,公衆送信,複製物の頒布の差止めを求めるとともに,不法行為(著作権侵害行為,不正競争行為又は一般不法行為)に基づく損害賠償金60万円及びこれに対する平成26年9月2日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』(1頁以下)

<経緯>

H16 原告が英会話教材「スピードラーニング」広告掲載
H26 被告が英会話教材「エブリデイイングリッシュ」広告掲載

■原告キャッチフレーズ目録

1 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ
  英語がどんどん好きになる
2 ある日突然,英語が口から飛び出した!
3 ある日突然,英語が口から飛び出した

■被告キャッチフレーズ目録

1 音楽を聞くように英語を流して聞くだけ
  英語がどんどん好きになる
2 音楽を聞くように英語を流して聞くことで上達
  英語がどんどん好きになる
3 ある日突然,英語が口から飛び出した!
4 ある日,突然,口から英語が飛び出す!

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■判決内容

<争点>

1 著作権侵害の成否

原告キャッチフレーズの著作物性(著作権法2条1項1号)について、

・原告キャッチフレーズ1

17文字の第1文と12文字の第2文からなるもので、いずれもありふれた言葉の組合せであり、それぞれの文章を単独で見ても、2文の組合せとしてみても、平凡かつありふれた表現である

・原告キャッチフレーズ2、3

17文字(原告キャッチフレーズ3)あるいはそれに感嘆符を加えた18文字(原告キャッチフレーズ2)のごく短い文章であり、表現としても平凡かつありふれた表現である

として、裁判所は、原告キャッチフレーズは作成者の思想・感情を創作的に表現したものとは認められないとして、著作物性を否定。結論として、原告が主張する著作権侵害性は認められていません(10頁以下)。

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2 不正競争の成否

キャッチフレーズの商品等表示性(不正競争防止法2条1項1号)について、裁判所は、「キャッチフレーズは,通常,商品や役務の宣伝文句であって,これに接する需要者もそのようなものとして受け取り,自他識別機能ないし出所表示機能を有するものとして受け取られることはないといえ,キャッチフレーズが商品等表示としての営業表示に該当するためには,長期間にわたる使用や広告,宣伝等によって,当該文言が特定人の営業を表示するものとして需要者の間に広く認識され,自他識別機能ないし出所表示機能を獲得するに至っていることが必要であるというべきである。」と説示した上で、本件を検討しています(11頁以下)。

裁判所は、

・平成16年9月から平成26年2月にかけて原告広告で原告キャッチフレーズが使用されている
・原告商品の売上が平成24年4月期に約106億円、平成20年4月期に約21億円となっている

といった状況ではあるものの、

・原告キャッチフレーズは平凡かつありふれた表現である
・原告キャッチフレーズは原告広告の見出しの中でキャッチフレーズの一つとして使用されているにすぎない
・原告商品を指すものとして「スピードラーニング」という商品名が記載されている

といった点を踏まえ、需要者は「スピードラーニング」という商品名によって原告商品を他の同種商品と識別できるとして、原告キャッチフレーズが単なるキャッチフレーズを超えて原告の営業を表示するものとして需要者の間に広く認識され、自他識別機能ないし出所表示機能を獲得するに至っているとは認められないと判断。
商品等表示該当性が否定され、被告の不正競争行為性について認められていません。

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3 一般不法行為の成否

一般不法行為論の成否について、裁判所は、北朝鮮映画事件最高裁判決(最高裁平成23年12月8日判決)などに言及した上で、本件について検討を加えています(13頁以下)。
結論としては、被告による被告キャッチフレーズの使用に著作権法や不正競争防止法が規律の対象とする利益とは異なる法的に保護される利益を侵害するなどの特段の事情があると認めることはできないとして、一般不法行為論の成立を認めていません。

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■コメント

「スピードラーニング」については、広告を各種媒体で目にする機会が多いかと思います。その際のキャッチコピーがどのように機能しているかとなると、商品や営業の識別能力を持つとは思えません。また、著作権侵害性についても、デッドコピーとしてもこの分量ですと成立は困難なのではないか、という印象です。
なお、原告は、「聞き流すだけ」で商標登録しています(9/16/41 第4936831号)。
written by ootsukahoumu at 06:34│TrackBack(0)知財判決速報2015 

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