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2015年03月10日

棟方志功美術額絵シリーズ事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

棟方志功美術額絵シリーズ事件

東京地裁平成27.2.26平成25(ワ)32114損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官      三井大有
裁判官      宇野遥子

*裁判所サイト公表 2015.3.6
*キーワード:相続、共有、消滅時効

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■事案

棟方志功の遺族間で作品の利用に関する許諾違反があったかどうかが争点となった事案

原告:作家の遺族
被告:作家の遺族、広告制作会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法65条2項、114条2項

1 原告が有する本件著作権の共有持分割合
2 被告らによる不法行為の成否
3 原告の損害額
4 消滅時効完成の有無
5 本件管理合意による原告の損害賠償請求権の消滅の有無

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■事案の概要

『本件は,別紙記載の亡A(以下「亡A」という。)の作品24点(以下,一括して「本件作品」という。)に係る著作権(以下「本件著作権」という。)の共有者である原告が,被告らにおいて原告に無断で本件作品の複製を他人に許諾したことにより,原告は本件著作権の2分の1の共有持分権を侵害されて損害を被ったと主張して,被告らに対し,民法719条1項に基づく損害賠償金1260万円及びこれに対する不法行為の日である平成14年8月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。』(2頁)

<経緯>

S48.12 財団法人D設立
S50.09 作家A死亡、妻Bが著作権相続
H07.11 妻B死亡、Cと乙が著作権相続
H10.05 C死亡、原告が著作権相続
H14.08 被告会社が凸版印刷と許諾契約締結
H15.01 新聞社が本件製作物を配布
H22.08 原告、原告の長男E、乙が全作品の著作権等管理合意書締結

本件製作物:読売新聞額絵シリーズ「Aの宇宙(せかい)」

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■判決内容

<争点>

1 原告が有する本件著作権の共有持分割合

作家である亡Aの全作品の著作権について、亡B(亡Aの妻)が亡Aから相続によりその全てを取得し、亡C(AB夫婦の長男)と被告乙(AB夫婦の次男)が亡Bから相続により各2分の1ずつの共有持分権を取得し、原告(Cの妻)が亡Cの取得分の全てを相続により取得したとことから、原告は、本件作品を含む全作品の著作権の2分の1の共有持分権を有することが認定されています(8頁以下)。

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2 被告らによる不法行為の成否

被告会社は、平成14年8月7日に凸版印刷との間で本件許諾契約を締結して同社に対して新聞社の販促物「美術額絵シリーズ」(本件製作物)等に本件作品を使用することを許諾する本件許諾をし、同社は本件許諾に基づいて本件複製行為をしたことが認められています。
24件の作品(本件作品)の著作権については、原告と被告乙がそれぞれ2分の1の共有持分権を有しており、その行使は原告と被告乙の合意によることが必要なところ(著作権法65条2項)、本件許諾に関してこうした合意がされたことを認めるに足りる証拠はないとして、被告会社が本件許諾を行う権原を有していたとはいえず、これに基づく本件複製行為により原告の本件著作権の共有持分権が侵害されたと裁判所は判断。
そして、他人が著作権を有する著作物について利用許諾をする場合は、誰が著作権者であるかを十分に調査すべきであるが、本件作品の著作権が原告と被告乙との共有であることは、被告乙が当時被告会社の取締役を務めていたことからしてもこれを容易に知り得たといえるのに、被告会社は財団法人Dがこの件を掌握しているなどと軽信して本件許諾をしたと認められるとして、被告会社には凸版印刷に本件複製行為をさせたことについて過失があると判断されています(9頁以下)。
また、被告乙の過失も認定されており、結論として、被告らの原告に対する共同不法行為(民法719条1項)の成立が認められています。

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3 原告の損害額

被告会社は、本件許諾の対価として凸版印刷から本件対価として2520万円の支払を受け、これには本件作品の解説及び本件製作物等の監修の代金も含まれており、過去の合意例での監修料の割合も勘案した上で、裁判所は、本件対価のうち本件作品の利用の対価(本件作品の著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額)が占める割合は80%と認めるのが相当であると判断。
原告の共有持分に応じた本件複製行為に係る損害額は、1008万円(=2520万円×0.8×0.5)と認定しています(10頁以下)。

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4 消滅時効完成の有無

被告らは、本件製作物が平成15年に配布された当時から原告は配布の事実を知っていたと主張しましたが、裁判所は、このことを認めるに足りる証拠はないとして、被告らの消滅時効完成の主張を認めていません(12頁)。

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5 本件管理合意による原告の損害賠償請求権の消滅の有無

被告乙は、原告の被告乙に対する損害賠償請求権は平成22年に締結された本件管理合意の成立により消滅したと主張しましたが、本件管理合意は、被告乙と原告がこれを作成した平成22年8月31日以後における全作品の著作権の共有持分の管理等の一切をEに委託するもの(2条1項)に過ぎず、それ以前に生じた損害賠償請求権の帰趨について何らかの取決めをしたものとは認められないとして、被告乙の主張を認めていません(12頁以下)。

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■コメント

新聞社の読者向け販促物として配布したB4版絵画集の権利処理について、処理漏れがあった事案となります。
判決文からは作家名が明らかにされていませんが、没年月日と著名な芸術家であることから、棟方志功と思われます。
どうして著作権を保有している一部遺族に対する権利処理が抜けてしまったのか、平成22年に著作権管理について窓口の一本化を内容とする合意が成立していますが、そこまでに至る背景を含めて各遺族の思いをもっと知りたいところではあります。

written by ootsukahoumu at 08:07│TrackBack(0)知財判決速報2015 

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