最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

建築CADソフト海賊版販売事件

東京地裁平成27.2.12平成26(ワ)33433損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官      藤田 壮
裁判官      宇野遥子

*裁判所サイト公表 2015.2.19
*キーワード:損害論、使用料相当額

   --------------------

■事案

ヤフオクで販売された海賊版建築CADソフトについて損害論が争点となった事案

原告:建築設計関連プログラム開発会社
被告:個人

   --------------------

■結論

請求一部認容

   --------------------

■争点

条文 著作権法114条3項

1 損害論

   --------------------

■事案の概要

<経緯>

H26.02 原告が訴外ヤフーを被告として発信者情報開示請求訴訟提起
H26.10 原告とヤフーが和解
       原告が被告に対して内容証明郵便通知

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 損害論

擬制自白により原告のプログラム著作物の複製権、送信可能化権、著作者人格権(同一性保持権)侵害に基づく損害賠償請求が認められています(1頁以下)。

損害論について、原告は、被告が本件ソフトウェアの違法複製版をダウンロードサイトに記録、蔵置してインターネットオークションサイトを経由してダウンロード販売を行ったとして、本件ソフトウェアを正規に販売する機会を56回分失ったなどとして、本件ソフトウェアに係る商品の標準小売価格である19万9500円の56回分である1117万2000円を原告が受けた損害の額であると主張しました。

この点について、裁判所は、「著作権法114条3項は,著作権の侵害行為があった場合に,著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額である使用料相当額については,権利者に,最低限の損害額として損害賠償請求を認める趣旨の規定である。そして,本件のように,被告が本件ソフトウェアの違法複製版をダウンロード販売したという事案においては,本件ソフトウェアを複製した商品を販売する者から原告が受けるべき使用料相当額を算定すべきであるところ,本件においては,著作権者の標準小売価格を前提としてこれに相当な実施料率を乗じて使用料相当額を算定するのが相当であると解される。」と説示。
そして、実施料率の認定について、「本件において原告が第三者に本件ソフトウェアの使用許諾をしているか否かが明らかでないため,実施料率の一般的水準を一応の目安として算定すべきところ,顕著な事実である社団法人発明協会研究センター編集の「実施料率【第5版】」(社団法人発明協会発行)及び経済産業省知的財産政策室編「ロイヤルティ料率データハンドブック」(財団法人経済産業調査会発行)記載のソフトウェア等の技術分野における実施料率に関する統計データ(特に,上記「実施料率【第5版】」中のソフトウェアを含む「電子計算機・その他の電子応用装置」の技術分野における外国技術導入契約の実施料率に関する統計データによれば,平成4年度から平成10年度までのイニシャル・ペイメント条件がない契約における実施料率の平均は33.2パーセントとされていること)に加えて,被告による侵害行為の態様が本件ソフトウェアのアクティベーションを無効化して実質的に同一のプログラムを販売したという悪質なものであることなど本件に現れた一切の事情を考慮すれば,実施料率を50パーセントと認めるのが相当」であると判断。

結論として、19万9500円(標準小売価格)×56回(ダウンロード販売数)×0.5(実施料率)=558万6000円を損害額として認定しています。

   --------------------

■コメント

19万円余りの正規販売価格のCADソフトをヤフオクで5000円程度の価格で海賊版販売をしていた事案となります。
海賊版販売とは事例を異にしますが、著作権保護期間を巡って争われた黒澤明監督作品やチャップリン作品などの格安DVDの販売事件では、114条3項で処理されたものとしては、被告DVD販売価格×20〜30%×譲渡数量の計算式で損害額が算定されています。