Tweet

2014年11月26日

美容院店舗管理システム契約事件−著作権 貸金等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

美容院店舗管理システム契約事件

大阪地裁平成26.11.13平成25(ワ)8321等貸金等請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 谷 有恒
裁判官      田原美奈子
裁判官      松阿彌隆

*裁判所サイト公表 2014.11.21
*キーワード:システム開発契約、消費貸借、業務委託契約、相殺

平成25年(ワ)第8321号貸金等請求事件(甲事件)
平成25年(ワ)第8365号弁済金等請求事件(乙事件)

   --------------------

■事案

美容院店舗管理システム構築契約に関する未払委託代金の請求(相殺)などが争点となった事案

原告:コンピューターシステム設計開発会社、代表者
被告:コンピューターソフトウェア企画開発会社、代表者

   --------------------

■結論

甲事件(請求認容)/乙事件(請求一部認容)

   --------------------

■争点

条文 民法505条

1 被告会社の原告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求権の有無及びその額
2 被告会社と原告会社との間の本件業務委託契約に基づく未払委託料の有無及びその額
3 乙事件の請求について

   --------------------

■事案の概要

『本件は,原告P1が,被告会社に対し,消費貸借契約に基づく貸金の返還を,被告P2に対し,保証契約に基づく保証債務の履行(甲事件)を求め,原告会社が,被告会社に対し,請負代金債権を原債権とする債務弁済契約(準消費貸借契約)に基づく弁済金の支払を,被告P2に対し,保証契約に基づく保証債務の履行(乙事件)をそれぞれ求めている事案である。被告らは,(1)甲事件,乙事件双方の請求に対し,被告会社のプログラム著作権の侵害による損害賠償請求を,(2)乙事件の請求に対し,被告会社の業務委託契約に基づく委託金請求権を,それぞれ自働債権とする相殺の抗弁を主張している。』(2頁)

<経緯>

H24.01 原被告会社「デジサロ」開発契約締結。原告会社が成果物を納品。
H24.03 楽天と被告会社が委任基本契約締結
       楽天が楽天サロンの運営を中止
H24.10 原被告会社がビューティーポイント共同事業業務委託契約締結
H25.01 原告P1と被告会社が200万円金銭消費貸借契約。被告P2が連帯保証
H25.03 原被告会社間で債務弁済契約締結。被告P2が連帯保証
H25.10 被告会社が原告会社、P1に相殺の意思表示
H25.11 原告会社がビューティーポイント事業を中止

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 被告会社の原告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求権の有無及びその額

被告会社は、原告の依頼を受けて制作した美容室店舗管理システム「デジサロ」(本件システム)が被告会社の著作物であることを前提として、本件システムを複製あるいは翻案したビューティーポイント事業を、原告らが被告会社の同意なく使用しているとして不法行為が成立する旨主張し、原告らの請求に対して相殺の抗弁を主張しました(13頁以下)。
裁判所は、被告会社が本件システムの開発のために原告会社以外にも880万円以上の支払を行った事実が認められることなどから、本件システムの開発の主体は被告会社であり、特段の事情のない限りその権利は被告会社に帰属すると考えられると判断。
そして、本件システムとビューティーポイントシステムとの関係については、本件証拠上明らかではないものの、ビューティーポイントシステムの開発主体は原告会社と認められるが、その開発は本件システムに機能を追加する形で行われたこと、また、原告らがビューティーポイントシステムは被告会社と原告会社との共同著作物である旨を陳述していることからすれば、ビューティーポイントシステムに関しては、被告会社の同意なしに原告会社がこれを単独で行使することはできないと解する余地があると判断しています(著作権法65条2項)。
もっとも、原告会社との共同事業としてのビューティーポイント事業から被告会社が脱退を表明した平成25年6月以降も原告会社はその営業活動を継続していたものの、原告会社が美容院等にビューティーポイントの使用を許諾して何らかの利益を得たと認めるに足る証拠はないことから、ビューティーポイントの著作権の帰属にかかわりなく原告らの共同不法行為により被告会社が何らかの損害を被ったと認めることはできないと裁判所は判断。
結論としては、被告会社が原告らに対して複製権侵害等の共同不法行為に基づく損害賠償請求権を有するとは認められず、これを理由とする相殺の主張は失当であり、原告P1の甲事件における請求には理由があることになると裁判所は判断しています。

   --------------------

2 被告会社と原告会社との間の本件業務委託契約に基づく未払委託料の有無及びその額

原被告会社間でビューティーポイントの端末において視認可能な画面デザインを変更するなどの作業のために本件業務委託契約が締結され、前月の16日から当月の15日までの作業について毎月末日に99万4000円の定額の報酬を支払うという合意が成立したと裁判所は認定。
平成25年7月にソースコードに多少の変更が加えられているものの、同年6月に被告P2が共同事業からの脱退を決めた後であること、またその回数がわずかであることから、同年6月7日以降の作業については、本件業務委託契約による報酬を発生させるには足りないと判断。
そして、同年5月31日の99万4000円の前記支払は、同月15日までの被告会社の作業に対するものである以上、被告会社が同年5月20日から同年6月7日に行った作業については、本件業務委託契約に基づき1か月分の委託料請求権が発生するものというべきであり、原告会社と被告会社においてその支払が不要である旨の合意が成立したと認めるべき証拠は存在しないと判断。
結論として、被告会社は原告会社に対して6月末を支払期とする99万4000円の委託料請求権を有するというべきであると裁判所は認定しています(14頁以下)。

   --------------------

3 乙事件の請求について

請負代金債権を原債権とする債務弁済契約(準消費貸借契約)に基づく弁済金の支払請求に対する相殺の抗弁について、被告会社の原告会社に対する未払委託料99万4000円の請求権は平成25年6月30日を支払日とするもので、同じく同日を支払日とする原告会社の被告会社に対する債務弁済契約に基づく338万1000円の支払請求権につき同日の経過により相殺適状となると裁判所は判断。
したがって、被告会社の原告会社に対する相殺の意思表示によって原告会社の被告会社に対する支払請求権元本は、未払委託料99万4000円を差し引いた238万7000円となると判断しています(15頁)。

   --------------------

■コメント

楽天では美容室予約システムが稼働していますが(楽天サロン)、予約システムの開発、運営を担当した被告会社が関与した当初の楽天サロンは、数ヶ月で楽天が運用を中止しており、被告会社としては思うような成果が出ず、資金繰りが厳しくなり、システム開発に関わった原告会社による資金面での支援や事業化提案などがされたものの、金銭的に事業継続が困難になったという経緯があるようです。
written by ootsukahoumu at 09:33│TrackBack(0)知財判決速報2014 

トラックバックURL