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2014年09月22日

「巻くだけダイエット」書籍事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「巻くだけダイエット」書籍事件

東京地裁平成26.8.29平成25(ワ)28859著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官      鈴木千帆
裁判官      西村康夫

*裁判所サイト公表 2014.9.17
*キーワード:書籍、類否、複製、翻案、題号、商品等表示性

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■事案

ゴムバンドを使用したダイエット法に関する書籍の類否が争点となった事案

原告:カイロプラクター
被告:鍼灸院院長、出版社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法21条、27条、不正競争防止法2条1項1号、2号

1 著作権・著作者人格権侵害の成否
2 不正競争の成否

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告A鬚著作し,被告会社が出版する被告書籍の発行は,原告の著作した別紙原告著作物目録記載の書籍(以下「原告書籍」という。)の著作権(複製権,翻案権)及び著作者人格権(同一性保持権,氏名表示権)を侵害し,又は不正競争防止法2条1項1号若しくは2号の不正競争に当たると主張して,被告らに対し,(1)原告書籍に係る複製権,翻案権,同一性保持権又は氏名表示権(著作権法21条,27条,20条1項,19条1項,112条1項)に基づき,被告書籍の複製及び頒布の差止め,(2)不正競争防止法2条1項1号,2号,3条1項に基づき,被告書籍の製造,販売,販売のための展示の差止め,(3)著作権法112条2項又は不正競争防止法3条2項に基づき,被告書籍の廃棄,(4)民法709条,719条,著作権法114条1項,不正競争防止法4条,5条1項に基づき,損害賠償金4546万8122円及びこれに対する不法行為開始後の日である平成22年4月1日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を,それぞれ求める事案である。』(2頁)

<経緯>

H21.6 原告が書籍「バンド1本でやせる! 巻くだけダイエット」(幻冬舎)出版
H21.12被告A鬚被告会社から被告書籍1「巻くだけでやせる! 1日1分から1本のバンドですっきりスリム」出版
H22.3 原告が「スーパーChihiroバンド 巻くだけダイエット」出版
      被告A鬚被告会社から被告書籍2「腰痛・肩こり・ひざ痛 巻くだけで痛みをとる!−バンド1本でスッキリ解消」出版

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■判決内容

<争点>

1 著作権・著作者人格権侵害の成否

裁判所は、複製権、翻案権侵害性について、江差追分事件最高裁判決(平成13年6月28日)に言及した上で、原告が原告書籍と被告書籍とで同一性を有すると主張する部分(侵害を主張する部分)が表現上の創作性がある部分といえるかどうか、創作性のある部分について被告書籍から原告書籍の本質的特徴を直接感得できるどうかに関して検討を加えています(21頁以下)。

(1)表紙画像

■両書籍の類似点(被告書籍1について)

・上半身裸で下半身に白色の着衣をつけた女性モデルが写っている
・女性がピンク色のバンドを斜めに巻き付けている
・背景が白色である
・題号の主要部分を黒色の文字で二段に表示している

■両書籍の相違点(被告書籍1について)

・原告書籍では女性の首から上は写っていないのに対して被告書籍1では女性の鼻から下の部分が写っている
・原告書籍では女性は原告バンドを向かって左上から右下に向けて巻き付けさらに腰部でX字状に巻き付け、左上は画面外に消えているのに対して被告書籍1では女性は被告バンドを向かって右上から左下に向けて巻き付け、右上は右肩から前方に回され、左下は画面外に消えている
・原告書籍の題号の主要部「巻くだけ/ダイエット」(斜線は改行を示す。以下同じ)は書籍の左右寸法一杯に文字を配置しているのに対して被告書籍1の題号の主要部「巻くだけで/やせる!」は左側に寄せ、右側に余白を残している

上記のような相違点を踏まえ、仮に原告が原告書籍の表紙画像や写真について著作権を有していたとしても、原告書籍の表紙画像と被告書籍1の表紙画像が表現上の創作性ある部分で共通しているとはいえない。また、被告書籍1の表紙画像からは原告書籍の表紙画像の本質的特徴を直接感得することもできないと裁判所は判断しています(21頁以下)。
さらに、被告書籍2についても同様の判断をしています(22頁)。

(2)付録のゴムバンドの巻き方

原告書籍と被告書籍は、ゴムバンドの巻き方において共通する部分があるが、その具体的な記述文言は異なっている(23頁)。

(3)エクササイズの方法

原告書籍と被告書籍は、エクササイズ方法において共通する部分があるが、その具体的な記述文言は異なっている(23頁)。

結論として、原告書籍と被告書籍は、表現上の創作性ある部分において共通しているとはいえないとして、被告書籍を作成することは、原告書籍の複製とも翻案ともいえず、原告の同一性保持権及び氏名表示権を侵害するとはいえないと判断されています。

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2 不正競争の成否

(1)「巻くだけダイエット」の著名表示冒用行為(2条1項2号)

書籍の題号の商品等表示性について、裁判所は、『書籍の題号は,普通は,出所の識別表示として用いられるものではなく,その書籍の内容を表示するものとして用いられるものである。そして,需要者も,普通の場合は,書籍の題号を,その書籍の内容を表示するものとして認識するが,出所の識別表示としては認識しないものと解される。
 もっとも,書籍の題号として用いられている表示であっても,使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品又は営業であることを認識することができるような自他識別力又は出所識別機能を備えるに至ったと認められるような特段の事情がある場合については,商品等表示性を認めることができることもあり得ると解される(大阪高裁平成20年(ネ)第1700号・同年10月8日判決[「時効の管理」事件]参照)。』と言及。
その上で、原告による「巻くだけダイエット」の使用については、原告書籍の題号に接した需要者において、「巻くだけダイエット」という表示は、バンドを「巻くだけ」の「ダイエット」であるという原告書籍の内容を表現したものと認識するにすぎず、本件において、それ以上に同表示を原告を示す商品等表示と認識するものと認めるべき特段の事情があるということはできないと判断。結論として、被告書籍が原告の著名な商品等表示を冒用したものとは認められていません(24頁以下)。

(2)「巻くだけダイエット」の混同惹起行為(2条1項1号)

裁判所は、「巻くだけダイエット」という表示が、自他識別力又は出所識別機能を有する原告の商品等表示であるとは認められないこと、また、原告が主張するところの「巻くだけダイエット」との表示と「巻くだけでやせる」との表示の類似性を認める余地がないことも明らかであるとして、その余の点につき判断するまでもなく、被告書籍が原告の著名な商品等表示を冒用したものとは認められないと判断しています(27頁)。

(3)折り畳んだバンドを添付する形態の商品等表示性(2条1項1号、2号)

折り畳んだバンドを添付する形態の商品等表示性について、裁判所は、特別顕著性と周知性を備えた例外的場面の判断基準(知財高裁平成24年12月26日判決・平成24(ネ)10069[眼鏡型ルーペ事件(ペアルーペ事件)])について言及した上で、本件のダイエットに使用するバンドを折り畳んだ状態でダイエット本の付録として添付するという書籍の形態について検討。
結論として、原告書籍刊行以前にも見られる形態であり特別顕著性がなく、形態が出所を表示するものとして周知になっているともいえないとして、この形態の商品等表示性を否定しています(27頁以下)。

(4)表紙画像の商品等表示性(2条1項1号、2号)

原告書籍は、被告書籍1の発行日頃で約45万部、被告書籍2の発行日頃で約107万部の売上があったものの、原告書籍の表紙画像が、原告を示す商品等表示として著名であったとは到底認められない。また、被告書籍の表紙画像が原告の周知の商品等表示と同一又は類似の商品等表示を使用したものともいえない、と裁判所は判断しています(28頁以下)。

結論として、著作権、不正競争防止法いずれの争点についても原告の主張は認められていません。

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■コメント

アマゾンで原告書籍を検索すると、2010年3月にこの書籍を購入している履歴が出てきました。すっかり忘れていました(笑)。わたくしも健康関連商品の流行に乗せられる部分もあるかと思いますが、先行商品の成功に続けとばかり、似たコンセプトの商品がすぐに市場に出てくるのは仕方がないところではあります。

類否判断については、ゴムバンドを使用したストレッチ法の解説本という性質からすると、ゴムバンドの巻き方やエクササイズ方法という事項については、表現の幅がそれほど広くないと考えられます。

内科医師が執筆した書籍「お腹が凹む!巻くだけダイエット」(宝島社刊行)についても別訴が提起されています(後掲判例参照)。こちらは不競法の争点だけですが、結論は棄却となっています。

本件訴訟では、表紙のイメージが似通っている印象ですが、宝島社版は、表紙もずいぶんと違うイメージで、その点で本件訴訟のように著作権については類否は争点にされなかったようです。

原告書籍
原告書籍表紙
被告書籍1
被告書籍1表紙
被告書籍2
被告書籍2表紙
宝島社
別訴被告書籍(宝島社)

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■関連判例

「巻くだけダイエット」書籍題号不正競争事件(対宝島社事件)
東京地裁平成26.8.29平成25(ワ)28860不正競争行為差止等請求事件

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■参考判例

江差追分事件(「北の波濤に唄う」事件)

時効の管理事件

ペアルーペ事件

written by ootsukahoumu at 08:43│TrackBack(0)知財判決速報2014 

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