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2014年09月06日

ファッションショー映像事件(控訴審)−著作権 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ファッションショー映像事件(控訴審)

知財高裁平成26.8.28平成25(ネ)10068損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官      西 理香
裁判官      神谷厚毅

*裁判所サイト公表 2014.9.2
*キーワード:著作物性、応用美術、実演、モデル、スタイリスト、ヘア、メイク、公衆送信権、放送権、実演家人格権

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■事案

ファッションモデルに施された化粧や髪型のスタイリングなどの著作物性が争点となった事案の控訴審

控訴人 (一審原告):イベント企画制作会社、イベント運営業者
被控訴人(一審被告):NHK、服飾広告代理店

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、3号、2条2項、23条1項、19条1項、92条1項、90条の2第1項

1 公衆送信権、氏名表示権侵害の成否
2 放送権、実演家としての氏名表示権侵害の成否

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■事案の概要

『本件は,控訴人らが,被控訴人日本放送協会(以下「被控訴人NHK」という。)は,被控訴人株式会社ワグ(以下「被控訴人ワグ」という。)従業員を介して,控訴人らの開催したファッションショーの映像の提供を受け,上記映像の一部である原判決別紙映像目録記載の映像(以下「本件映像部分」という。)をそのテレビ番組において放送し,これにより,控訴人有限会社マックスアヴェール(以下「控訴人会社」という。)の著作権(公衆送信権)及び著作隣接権(放送権)並びに控訴人X(以下「控訴人X」という。)の著作者及び実演家としての人格権(氏名表示権)を侵害したと主張し,被控訴人らに対し,著作権,著作隣接権,著作者人格権及び実演家人格権侵害の共同不法行為責任(被控訴人ワグについては使用者責任)に基づく損害賠償として,控訴人会社につき943万4790円,控訴人Xにつき110万円(附帯請求として,これらに対する平成21年6月12日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の連帯支払を求める事案である。
 原判決が控訴人らの請求をいずれも棄却したため,控訴人らがそれぞれ前記裁判を求めて控訴した。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 公衆送信権、氏名表示権侵害の成否

イベント制作会社及びディレクターである控訴人(一審原告)らは、被控訴人(一審被告)NHKの本件映像部分の放送により本件ファッションショーの以下の部分の著作物の著作権(公衆送信権、控訴人Xの氏名表示権)が侵害された旨主張しました。

(1)個々のモデルに施された化粧や髪型のスタイリング
(2)着用する衣服の選択及び相互のコーディネート
(3)装着させるアクセサリーの選択及び相互のコーディネート
(4)舞台上の一定の位置で決めるポーズの振り付け
(5)舞台上の一定の位置で衣服を脱ぐ動作の振り付け
(6)化粧、衣服、アクセサリー、ポーズ及び動作のコーディネート
(7)モデルの出演順序及び背景に流される映像

裁判所は、著作権侵害性判断の前提として、著作物性(著作権法2条1項1号)の意義に言及した上で(7頁以下)、応用美術(2条2項)との区別について述べています(8頁以下)。

・本件ファッションショーで使用されたものは、主として大量生産されるファストファッションのブランドものであり、実用に供されるものである
・本件ファッションショーも実用を想定したショーである

といった、本件ファッションショーの性質から、化粧、髪型、衣服及びアクセサリーを組み合わせたものである(1)、(2)、(3)、(6)については、美的創作物に該当するとしても、応用美術との区別が必要となるとした上で、

「一品制作の美術工芸品と量産される美術工芸品との間に客観的に見た場合の差異は存しないのであるから,著作権法2条1項1号の定義規定からすれば,量産される美術工芸品であっても,全体が美的鑑賞目的のために制作されるものであれば,美術の著作物として保護されると解すべきである」として、一品制作物のみならず、量産品についても保護の対象となりうることを示し、また、

「実用目的の応用美術であっても,実用目的に必要な構成と分離して,美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できるものについては,上記2条1項1号に含まれることが明らかな「思想又は感情を創作的に表現した(純粋)美術の著作物」と客観的に同一なものとみることができるのであるから,当該部分を上記2条1項1号の美術の著作物として保護すべきであると解すべきである」ものの、

「実用目的の応用美術であっても,実用目的に必要な構成と分離して,美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握することができないものについては,上記2条1項1号に含まれる「思想又は感情を創作的に表現した(純粋)美術の著作物」と客観的に同一なものとみることはできないのであるから,これは同号における著作物として保護されないと解すべきである」(9頁以下)として、実用目的部分との分離評価の視点について説示。

そして、(1)から(7)について、以下のように検討しています。

(ア)(2)着用する衣服の選択及び相互のコーディネート、(3)装着させるアクセサリーの選択及び相互のコーディネートについて

本件映像部分の各場面におけるモデルの衣服・アクセサリー等はそのほとんどがファストファッションである「Forever21」製作のものを使用しただけであり、控訴人らのデザインに係るものではない。また、シティやリゾートのパーティ等の場面において実用されることを想定するものであって、それ全体が美的鑑賞を目的とするものではなく、また、実用目的のための構成と分離して美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えた部分を把握できるものでもない(10頁以下)

(イ)(1)個々のモデルに施された化粧や髪型のスタイリングについて

化粧及び髪型について、その美的要素(外観や見栄えの良さ)は、他の者から見られることが想定されるものではあるが、シティやリゾートのパーティ等の場面において実用される衣服やアクセサリーとのコーディネートを想定する実用的なものであって、それ全体が美的鑑賞を目的とするものではなく、また、実用目的のための構成と分離して美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えた部分を把握できるものでもないから、美術の著作物に当たるともいえない(11頁以下)

(ウ)(4)舞台上の一定の位置で決めるポーズの振り付け、(5)舞台上の一定の位置で衣服を脱ぐ動作の振り付けについて

各モデルの上記ポーズ又は動作は、そもそも応用美術の問題ではなくて、ファッションショーにおけるポーズ又は動作が著作物として保護されるかどうかとの問題である。しかし、これらのポーズ又は動作は、ファッションショーにおけるモデルのポーズ又は動作として特段目新しいものではないというべきである。上記ポーズ又は動作において、作成者の個性が表現として表れているものとは認められない。したがって、これらのポーズ又は動作の振り付けに著作物性は認められない。また、同様の理由で、これを舞踊の著作物と解することもできない(12頁以下)

(エ)(6)化粧、衣服、アクセサリー、ポーズ及び動作のコーディネートについて

(1)から(5)の点について、控訴人Xが著作者であると認められないか又は著作物性が認められないところであり、これらの各要素が組み合わされることによって、作成者の個性の表出というべきような新たな印象が生み出されているものとは認められない。前記(1)から(5)の点の組み合わせに著作物性を認めることはできない(14頁)

(オ)(7)モデルの出演順序及び背景に流される映像について

出演順序に思想又は感情が創作的に表現されているものとは認められない。また、背景映像として使用された写真について、控訴人らに各写真の著作権が帰属する根拠も判然としないし、写真の選択に何らかの創作性があるものとも認められない(14頁以下)

結論として、(1)から(7)について、控訴人らが著作権者であるとは認められないか、又は著作物性が認められないとして、控訴人会社の公衆送信権、控訴人Xの氏名表示権侵害性が否定されています。

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2 放送権、実演家としての氏名表示権侵害の成否

裁判所は、実演の意義(2条1項3号)について言及した上で、モデルのポーズと動作の振り付けの演出は、動作等が著作物にあたらないとした認定を踏まえ、著作物を演ずることに当たらず、「実演」に該当しないと判断。また、モデルがヘアメイクや衣類を着用等しながらポーズや動作を取ることを演出した控訴人Xについても実演家の権利は認められないと判断しています(17頁以下)。
さらに、ファッションショー全体についても、「演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること」に「類する行為」にはあたらず、2条1項3号の実演には該当しないと判断しています(17頁以下)。

結論として、本件ファッションショーの一部である本件映像部分を放送することが、「その実演」を公衆に提供し又は放送する場合に当たるものとは認められず、本件映像部分の放送が、控訴人会社の放送権又は控訴人Xの実演家としての氏名表示権を侵害するものとは認められないと判断されています。

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■コメント

結論として、原審同様、ファッションショーにおけるヘアやメイクの著作物性やモデルのポーズの著作物性が否定されています。
原審と比較すると、知財高裁ではファッションショーでの利用であるという点を踏まえ、実用の視点が強く示された印象です。
意匠法と著作権法の棲み分け論にかかわる応用美術論について、裁判例では様々な説示がされていますが、「実用性や機能性を離れて」といった分離評価の点については、過去、ファービー人形事件一審判決(山形地裁平成13.9.26)やニーチェアー事件判決(大阪高裁平成2.2.14)での説示がありますが、多数の裁判例の分析における統一的に理解する視点として、「実用品としての目的・機能による制約を受けているか否か」で判断すべきとする見解があります(小倉秀夫、金井重彦編著「著作権法コンメンタール」(2013)高橋淳190頁、高部後掲書参照)。もっとも、実用性と審美性の分離評価の具体的なあり方を考える場合も様々な課題が出てくるところです(作花文雄「詳解著作権法第4版」(2010)140頁以下参照。また、米国における分離テストについて、奥邨弘司「米国における応用美術の著作権保護」『知財年報2009』(2009)241頁以下参照)。

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■過去のブログ記事

原審記事

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■参考判例

タイプフェイス事件 最高裁平成12.9.7平成10(受)332著作権侵害差止等請求本訴、同反訴事件判決判決文

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■参考文献

高部真規子『実務詳説著作権訴訟』(2012)112頁以下

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■追記(2015.3.23)

TKCローライブラリー 新・判例解説 Watch
知的財産法 No.96(2015.3.20掲載)
本山雅弘「ファッションショーの表現要素に関して応用美術の著作物該当性と実演該当性が争われた事例」
https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-110961193_tkc.pdf
written by ootsukahoumu at 07:57│TrackBack(0)知財判決速報2014 

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