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2014年02月21日

簿記検定試験受験誌切り離し式暗記カード模倣事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

簿記検定試験受験誌切り離し式暗記カード模倣事件

東京地裁平成25.11.29平成24(ワ)18701損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀 滋
裁判官      小川雅敏
裁判官      西村康夫

*裁判所サイト公表 2014.1.31
*キーワード:引き抜き行為、編集著作物、商品等表示性

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■事案

従業員の引き抜き行為の違法性や簿記検定試験受験誌に添付された切り離し式暗記カードなどの模倣性が争点となった事案

原告:資格取得教育事業社
被告:資格取得教育事業社、被告会社出版事業部事業部長

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法12条1項、不正競争防止法2条1項1号

1 不法行為請求(1)の成否及び損害額
2 営業権に基づく差止請求の成否
3 不法行為請求(2)の成否及び損害額
4 不正競争防止法3条1項に基づく差止請求の成否
5 著作権法112条1項に基づく差止請求の成否

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■事案の概要

『本件は,原告が,(1)被告らの背信的な引き抜き行為があったなどと主張して,〈ア〉被告らに対し,不法行為に基づく損害賠償請求(以下「不法行為請求(1)」という。)として,7137万4238円(附帯請求として訴状送達の日の翌日である平成24年7月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払(請求1項のうちの一部),〈イ〉営業権に基づく差止請求として,原告従業員及び原告と業務委託契約をしている第三者との接触等の禁止(請求2項)を求めるとともに,(2)被告会社の簿記検定試験受験誌において,原告発行の簿記検定試験受験誌が切り離し式暗記カードを付けていることなどを模倣しているから,原告の商品等表示と被告の商品等表示が同一又は類似であり,原告の編集著作物の侵害であるなどと主張して,〈ア〉被告らに対し,不法行為に基づく損害賠償請求(以下「不法行為請求(2)」という。)として,458万9500円(附帯請求として上記(1)〈ア〉と同様の遅延損害金)の支払(請求1項のうちの一部)を求めるとともに,〈イ〉被告会社に対し,不正競争防止法3条1項又は著作権法112条1項に基づく差止請求として,被告会社発行の簿記検定試験受験誌に切り離し式の暗記カードを添付する等して出版,発売等を行うことの禁止を求めた事案である。』(2頁)

<経緯>

H19 被告Xが原告に入社
H23 被告Xが原告を退社
    被告Xが被告会社入社、原告元従業員4名が被告会社入社

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■判決内容

<争点>

1 不法行為請求(1)の成否及び損害額

1.従業員の引き抜きについて

被告Xが原告従業員らに対して退職して被告会社に就職することを勧誘した行為について、裁判所は、実際に被告会社に入社した4名に関してはそれぞれの退職の理由によるもので被告らの引き抜き行為が推認されるものではないと判断。また、その他の従業員に対する勧誘行為についても1回限りのものである等から社会的相当性を逸脱した態様ではないとして不法行為性を否定しています(21頁以下)。

2.業務委託契約の解消の求めについて

被告会社が業者との間で書店向け販売促進業務を委託していた契約に関連して、被告XがJ及びKに対して原告と業者との間の同種の契約の解消を求めた点について、裁判所は、原告と被告会社が簿記検定試験受験誌等の分野において競合することを考えれば、業者は被告会社に対する善管注意義務を全うできないおそれがあったというべきであり、被告らが業者に対して原告との業務委託契約の解消を求めたことが社会的相当性を欠くとはいい難いとして、違法とは認められないと判断しています
(25頁以下)。

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2 営業権に基づく差止請求の成否

被告らが違法な引き抜き等を行ったとは認められないことから、営業権に基づく差止請求は理由がないと判断されています(26頁)。

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3 不法行為請求(2)の成否及び損害額

1.不正競争防止法2条1項1号該当性

原告は暗記カードをつけてきた点など原告受験誌の商品形態の独自性から商品形態が不正競争防止法2条1項1号の商品等表示として保護される旨主張しました(26頁以下)。
しかし、裁判所は、商品形態が同号で保護される場合について、「ある商品の形態が他の商品に比べて顕著な特徴を有し,かつ,それが長期間にわたり特定の者の商品に排他的に使用され,又は短期間であっても強力な宣伝広告等により大量に販売されることにより,その形態が特定の者の商品であることを示す表示であると需要者の間で広く認識されるようになった場合には,商品の形態が同号により保護されることがあるものと解される」と示した上で、本件については切り離し式という機能に着目するものであって具体的な暗記カードの形態について主張するものではなく、このような暗記カードを受験誌である原告商品の形態と認めることは困難であるなどとして、商品等表示性を否定。2条1項1号該当性を否定しています。

2.編集著作物の侵害について

原告は、1切り離し式の暗記カード、2予想イベントとの連動、3本扉頁を省略する編集形態、4表紙の裏面部位にダイレクトに印字する編集形態を選択したとして、これらの4点において編集著作物である旨主張しました(29頁以下)。
この点について裁判所は、編集著作物(著作権法12条1項)の意義について、「素材の選択・配列という知的創作活動の成果である具体的表現を保護するものであり,素材及びこれを選択・配列した結果である実在の編集物を離れて,抽象的な選択・配列方法を保護するものではないと解するのが相当である」と示した上で、2、3については抽象的な選択あるいはアイデアを主張するにすぎず、1についても被告第130回受験誌には暗記カードが存在しておらず、原告が編集著作権の侵害を主張する被告第131回受験誌の問題の選択、配列の内容は原告第130回受験誌及び原告第131回受験誌の内容とは全く異なっており、原告の主張する切り離し式の暗記カードの編集著作物性の有無にかかわらず侵害が成立しない。さらに4についても表紙の裏面部位にダイレクトに印字する編集形態については素材の選択、配列を主張しているものとは解されないとして編集著作物の主張として主張自体失当であるなどと判断。被告受験誌の編集著作物侵害性を否定しています。

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4 不正競争防止法3条1項に基づく差止請求の成否

被告受験誌が不正競争防止法2条1項1号に該当するとは認められず、不正競争防止法3条1項に基づく差止請求は理由がないと判断されています(30頁)。

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5 著作権法112条1項に基づく差止請求の成否

被告受験誌が原告の編集著作物を侵害するとは認められず、著作権法112条1項に基づく差止請求は理由がないと判断されています(30頁以下)。

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■コメント

幹部社員が退職時に他の従業員への転職引き抜き行為をした点に端を発した紛争となります。
受験誌に付された切離し式暗記カードの編集著作物性が争点となりましたが、正面から判断されることなく侵害性が否定される結果となっています。

written by ootsukahoumu at 10:49│TrackBack(0)知財判決速報2013 

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