Tweet

2014年02月06日

ジャスCD原盤製作契約事件−著作権 著作権確認等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ジャスCD原盤製作契約事件

東京地裁平成25.11.20平成24(ワ)8691著作権確認等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀 滋
裁判官      小川雅敏
裁判官      西村康夫

*裁判所サイト公表 2014.1.31
*キーワード:レコード製作者の権利、著作隣接権、原盤製作契約、マスターCD、所有権

   --------------------

■事案

製作されたCDについてレコード製作者の権利の帰属などが争点となった事案

原告:ジャス歌手
被告:レコード製作販売会社

   --------------------

■結論

請求認容

   --------------------

■争点

条文 著作権法2条1項6号

1 レコード製作者の権利の確認請求について
2 本件マスターCDの引渡請求について
3 立替金請求について

   --------------------

■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,(1)原告の歌唱を録音したCDについてのレコード製作者の権利を有することの確認,(2)レコード製作者の権利又は所有権に基づき,マスターCDの引渡し,(3)原告が立て替えた伴奏代金20万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成24年7月14日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払,を求めた事案』(1頁以下)

<経緯>

H22.11 原被告間でレコード製作合意、原告が被告に370万円支払
H23.08 本件CD「I’m a woman,Now −MIKI−」制作
H23.10 原告がソウル社に未払演奏料20万円代位弁済
H23.11 本件CD完成
H24.03 原告が本訴提起

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 レコード製作者の権利の確認請求について

原告によるレコード製作者の権利の確認請求について、裁判所は、

「著作権法上の「レコード製作者」とは,「レコードに固定されている音を最初に固定した者」(著作権法2条1項6号)をいうが,ここでいう「固定した者」とは,物理的な録音行為の従事者ではなく,自己の計算と責任において録音する者,通常は,原盤制作時における費用の負担者がこれに該当するというべきである(東京地裁平成19年1月19日判決・判時2003号111頁)。 」

として、「THE BOOM対SME」事件判決に言及した上で、

「これを本件についてみると,平成22年11月11日に原告が被告に370万円を交付したことは争いがないところ,上記1(3)のとおり,この370万円は本件CDの製作費全額として交付し,その際,レコード製作者の権利は原告に帰属させるという合意があったというのであり,その後も本件CDの製作費の負担やレコード製作者の権利の帰属を変更するような合意はされなかったことが認められるから,本件CDのレコード製作者は原告であり,本件歌唱を録音した本件マスターCDが作成された時点で,原告が本件CDのレコード製作者の権利の全部を原始的に取得したものというべきである。」

として、レコード製作者の権利の原告への帰属について原被告間での合意を認定しています。
結論として、原告によるレコード製作者の権利の確認請求が認められています。

   --------------------

2 本件マスターCDの引渡請求について

被告が占有している原告歌唱を録音した本件マスターCDについて、裁判所は、

「マスターCDの所有権は,特段の合意がない限り,製作費を投じてマスターCDを製作させたレコード製作者に原始的に帰属するものとみるのが相当であり,本件においてこれと異なる合意をした証拠もないから,本件マスターCDの所有権は,レコード製作者である原告に原始的に帰属したものと認められる。」

として原告への所有権の帰属を認定した上で、

「原告は,複製作業に必要な限度で被告に本件マスターCDの占有権原を与えていたものと思われるが,遅くとも本件訴状の送達をもって返還を請求し,被告は占有権原の抗弁を主張していないのであるから,原告は,被告に対し,所有権に基づき,本件マスターCDの引渡しを求めることができる。」

として、原告の引渡請求を認めています。

   --------------------

3 立替金請求について

伴奏を担当した実演家が所属するソウル社に対して被告が未払演奏料債務を負担しており、原告がソウル社に対して立て替え支払いをしていました。
原告が被告に対して第三者弁済に基づく求償金として20万円の支払請求が認められています(15頁以下)。

結論として、原告の請求が認容されています。

   --------------------

■コメント

アルバム名でネット検索すると、本件CDが女性ジャズ・ヴォーカリスト歌手生活30周年を記念する9曲収録のアルバムであることが分かります。
被告会社のサイトを拝見すると、ジャス、クラッシック専用レーベルとして高い評価を受けているようです。実際、原盤は、ソニー・ミュージックスタジオでSMEのエンジニアが録音を担当して高品位録音されてCDが製作されています(SACD)。同様の製作環境で作られた別アーティストの作品の解説を読むと、DSD(ダイレクト・ストリーム・デジタル)方式で録音が行われたジャズSACDは少なく、世界的に見ても貴重な存在のようです(AMAZON/MAYUMI「I Wish You Love」作品解説参照)。

もっとも、原盤製作契約にあたり、被告が原盤権(著作隣接権)を保有して音源販売窓口を独占して営業、販促を行うというのであれば、原盤権の帰属や実演家印税といったものの有無も含めて細かく取り決めをしなければならないところですが(原盤独占譲渡契約)、契約書面が被告から原告へ交付されず、判決文を読む限りでは被告の業務は単なる音源、CDの製作に留まっています。
当初のアメリカでのレコーディングの要望が国内に変更されたり、製作費や販促費のやりとりで齟齬が生じたりと(製作費の内訳を相手に開示しないことも含め)、ありがちな経緯の話ではありました。

   --------------------

■参考判例

レコード製作者の送信可能化権の帰属などを巡り紛争となった事案として
「THE BOOM対SME」事件参照(本訴棄却、反訴認容、控訴後和解)
東京地裁平成19.1.19平成18(ワ)1769等著作権民事訴訟PDF
written by ootsukahoumu at 06:52│TrackBack(0)知財判決速報2013 

トラックバックURL