最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

勝沼ワイナリー案内看板事件(控訴審)

知財高裁平成25.12.17平成25(ネ)10057著作物頒布広告掲載契約に基づく著作物頒布広告掲載料未払請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官      中村 恭
裁判官      新谷貴昭

*裁判所サイト公表 2013.12.26
*キーワード:著作物性、創作性、応用美術、純粋美術、一般不法行為

   --------------------

■事案

ワイナリーへの案内看板の図柄の著作物性が争点となった事案の控訴審

控訴人(一審原告) :広告看板制作会社
被控訴人(一審被告):ワイン製造販売会社

   --------------------

■結論

控訴棄却

   --------------------

■争点

条文 著作権法2条1項1号、10条1項4号、民法709条

1 本件図柄の著作物性
2 控訴審における主張

   --------------------

■事案の概要

『本件は,原判決別紙目録記載の図柄1〜12(以下,それぞれ「図柄1」などという。)につき著作権を有すると主張する控訴人が,被控訴人は,上記図柄を案内用看板に表示して使用し,上記図柄に係る原告の著作権を侵害等していると主張し,被控訴人に対し,著作権侵害等の不法行為責任に基づく損害賠償として,200万円及びこれに対する不法行為日よりも後の日である平成24年3月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。原審が控訴人の請求を棄却したところ,控訴人が控訴した。』(2頁)

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 本件図柄の著作物性

本件図柄の著作物性(著作権法2条1項1号)について、控訴審においても、「文字部分を含めた本件図柄の構図,デザイン,配色,全体のバランスを総合的に見ても,特別な美的感興を呼び起こすような美的創作性を認めることはできないことに変わりない。」(5頁以下)
として原審同様、その著作物性を否定しています。

   --------------------

2 控訴審における主張

(1)本件図柄の著作物性について

控訴人(一審原告)は、絵柄の美術性を控訴審で追加主張しましたが、控訴審は、広告看板用の図柄については、実用に供され、あるいは産業上利用される応用美術の範ちゅうに属するというべきものであり、著作権法上の保護を受けるためには純粋美術と同視し得る程度の創作性がなければならないとした上で、本件図柄は、純粋美術と同視できる程度に客観的外形的に観察して見る者の審美的要素に働きかける創作性を肯定することは困難であるとして、控訴人の主張を認めていません(6頁以下)。

(2)一般不法行為論

保護を受ける著作物については著作権法6条にその範囲が定められており、同条所定の著作物に該当しない著作物の利用行為については、「同法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではないと解するのが相当である」(最高裁平成23年12月8日判決平成21(受)602著作権侵害差止等請求事件)との北朝鮮映画事件判決に控訴審は触れた上で、本件では特段の事情を見出すことは困難であり、被控訴人の不法行為責任を認めることはできないと判断しています(7頁以下)。

   --------------------

■コメント

勝沼ワイナリー案内看板事件の控訴審となります。結論としては、原審同様、看板図柄の著作物性は否定され、また、一般不法行為論の成立も否定されています。

   --------------------

■過去のブログ記事

原審記事

関連事件
勝沼ワイナリー案内看板事件(第2事件)